パナソニック「赤字7800億円」の元凶は誰だ

執筆者:杜耕次2012年2月22日
2006年に社長の座を大坪氏(右)に譲り会長になった中村氏 (C)時事
2006年に社長の座を大坪氏(右)に譲り会長になった中村氏 (C)時事

 パナソニックが今期(2012年3月期)歴史的な大赤字を計上する。テレビ、半導体事業の縮小に伴うリストラ費用を理由に連結最終損益が4200億円の赤字に転落(前期は740億円の黒字)すると発表したのは昨年10月31日。それからわずか3カ月余りの2月3日、今度は09年12月に買収した三洋電機ののれん代の減損処理などを加えて最終赤字が7800億円に膨らむ見通しであることを明らかにした。「責任を痛感している」と苦渋の表情で記者会見を行なったのは大坪文雄社長(66)だが、同社の最高実力者が中村邦夫会長(72)であることは社内外で周知の事実。社長就任2年目だった02年3月期に4310億円の最終赤字を計上した後「中村改革」で業績をV字回復させた立役者は、10年後の今、その華々しい名声を一気に失う崖っぷちに追い込まれている。

飛び交う“新聞辞令”

 パナソニックが予想している最終赤字額7800億円は、3年前に日立製作所の庄山悦彦会長、古川一夫社長(いずれも当時)が同時辞任に追い込まれた09年3月期の最終赤字額7873億円(日本の製造業のワースト記録)に肩を並べる。パナソニックの大坪は社長就任から今年6月で丸6年となる。同社には創業者の松下幸之助(1894-1989年)が66歳で社長を退いたことから、歴代社長はその年齢を越えて再任しない、という不文律がある。
 任期といい、年齢といい、ただでさえ交代時期を迎えている大坪に対し、2月3日の記者会見では当然、巨額赤字に伴う経営責任の取り方を問う質問が出たが、大坪は「12年度(13年3月期)以降の収益回復を目指し、全社員が一丸となって進むことに尽きる」と辞任を否定した。
 すでに、昨年12月30日に読賣新聞朝刊が「パナソニック 大坪社長続投 中村会長も」と報じ、赤字拡大発表後の2月7日には毎日新聞が夕刊で「パナソニック:会長・社長が続投へ」と追随するなど、「留任」がニュースになる異例の“新聞辞令”が飛び交っている。ただ、社内では「中村会長の“茶坊主”と呼ばれている副社長が盛んに現体制続投を吹聴しているだけ」「この局面でトップの結果責任が問われなければ、この会社は本当に終わってしまう」といった強い危機感と怒りをあらわにする声が渦巻いている。

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