刑務所での惨劇から見えるもの

執筆者:遅野井茂雄2012年2月24日

 ホンジュラスとメキシコで相次いで起きた刑務所での事件は、メキシコ・中米において急増する組織犯罪と収容者で膨れる刑務所のおぞましい実態、また政府の治安への対応能力の欠如を改めて露呈するものとなった。

 報道によると、2月14日深夜起きたホンジュラス(コマヤグア)の刑務所での火災では、852人の収容者の内、焼死者の数は370人に上った。ホンジュラスでは2004年にも同様の火災が起き107人の犠牲者が出ているが、今回は最悪の惨劇となった。

 2000年代に入り、中米では不法移民で米国から送還された若者を中心に米国仕込みのギャング集団が急速に勢力を伸ばし、治安悪化に拍車をかけてきた。エルサルバドル、グアテマラはじめ、犯罪グループは「マラス」と呼ばれ、麻薬組織と結びつき、中米は人口比でみた殺人件数で世界的に高比率の地域となった。刑務所は収容人員を大幅に超えて倍近くを収容しているのが実態である。

 ホンジュラスでは3年前のクーデターを機に治安悪化が一気に進み、2月15日付スペインのエルパイス紙電子版(「暴力に沈む国」)によれば、人口800万人の国で2011年には殺人件数が6000件を超え(4年前の倍増)、10万人当たり86人と高比率となり、「殺人は伝染病」と伝えている。

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