刑務所での惨劇から見えるもの

執筆者:遅野井茂雄 2012年2月24日
タグ: スペイン 日本
エリア: 中南米

 ホンジュラスとメキシコで相次いで起きた刑務所での事件は、メキシコ・中米において急増する組織犯罪と収容者で膨れる刑務所のおぞましい実態、また政府の治安への対応能力の欠如を改めて露呈するものとなった。

 報道によると、2月14日深夜起きたホンジュラス(コマヤグア)の刑務所での火災では、852人の収容者の内、焼死者の数は370人に上った。ホンジュラスでは2004年にも同様の火災が起き107人の犠牲者が出ているが、今回は最悪の惨劇となった。

 2000年代に入り、中米では不法移民で米国から送還された若者を中心に米国仕込みのギャング集団が急速に勢力を伸ばし、治安悪化に拍車をかけてきた。エルサルバドル、グアテマラはじめ、犯罪グループは「マラス」と呼ばれ、麻薬組織と結びつき、中米は人口比でみた殺人件数で世界的に高比率の地域となった。刑務所は収容人員を大幅に超えて倍近くを収容しているのが実態である。

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執筆者プロフィール
遅野井茂雄(おそのいしげお) 筑波大学名誉教授。1952年松本市生れ。東京外国語大学卒。筑波大学大学院修士課程修了後、アジア経済研究所入所。ペルー問題研究所客員研究員、在ペルー日本国大使館1等書記官、アジア経済研究所主任調査研究員、南山大学教授を経て、2003年より筑波大学大学院教授、人文社会系長、2018年4月より現職。専門はラテンアメリカ政治・国際関係。主著に『試練のフジモリ大統領―現代ペルー危機をどう捉えるか』(日本放送出版協会、共著)、『現代ペルーとフジモリ政権 (アジアを見る眼)』(アジア経済研究所)、『ラテンアメリカ世界を生きる』(新評論、共著)、『21世紀ラテンアメリカの左派政権:虚像と実像』(アジア経済研究所、編著)、『現代アンデス諸国の政治変動』(明石書店、共著)など。
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