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池内恵の中東通信

池内恵(いけうちさとし 東京大学教授)が、中東情勢とイスラーム教やその思想について日々少しずつ解説します。

執筆者プロフィール
池内恵
池内恵 東京大学先端科学技術研究センター グローバルセキュリティ・宗教分野教授。1973年生まれ。東京大学大学院総合文化研究科地域文化研究専攻博士課程単位取得退学。日本貿易振興機構アジア経済研究所研究員、国際日本文化研究センター准教授を経て、2008年10月より東京大学先端科学技術研究センター准教授、2018年10月より現職。著書に『現代アラブの社会思想』(講談社現代新書、2002年大佛次郎論壇賞)、『イスラーム世界の論じ方』(中央公論新社、2009年サントリー学芸賞)、『イスラーム国の衝撃』(文春新書)、『【中東大混迷を解く】 サイクス=ピコ協定 百年の呪縛』 (新潮選書)、 本誌連載をまとめた『中東 危機の震源を読む』(同)などがある。個人ブログ「中東・イスラーム学の風姿花伝」(http://ikeuchisatoshi.com/)。

「10月7日」以後の中東(5)ネタニヤフ首相の「バイデン落選運動」と米・イスラエル関係

10月7日以降のガザ紛争の展開によって、パレスチナ問題が「イスラエル問題」に転化した、と昨日掲載のこの欄に記した。 それと同時に、イスラエルの内政・外交があまりにも米国の内政・外交と直結しているため、ガザ紛争の帰趨に影響を及ぼす要因が、結局のところ「米・イス…
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「10月7日」以後の中東(4)パレスチナ問題の「イスラエル問題」への転換

「10月7日」から8カ月が経った中東をめぐる国際政治において、それ以前と異なるのは、かつて「パレスチナ問題」とされていたものが影を潜め、代わりに「イスラエル問題」として、国際政治の課題の一つとして急浮上してしまっているということである。 なぜそのようなことが起…
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「10月7日」以後の中東(3)絶え間ない情報戦とフェイクニュースそして「フェイク政策」

2023年10月7日を皮切りとしたガザ紛争の顕著な側面は、情報戦が、多大なフェイクニュースの流布を伴って行われ、しかもそれが、普段なら世界の中で相対的に高い信頼度を保っているはずの米主要メディアによって行われることだ。 昨日6月12日の朝7時に「「10月7日」以後の中東…
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「10月7日」以後の中東(2)ハマースの攻撃は何を狙ってのものだったのか?

ハマースによる10月7日のイスラエル領内への越境攻撃は、何を目的として行ったのだろうか。ハマースの側の証言も記録も得られない以上、確定的なことは言えない。しかし事件直後から、次の二つの説が西側のメディアでは事実であるかのように語られた。 第一は、「ハマースは…
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「10月7日」以後の中東(1)「帰って来た」パレスチナ問題

「10月7日」がもたらした最大のものは、中東政治とグローバルな国際政治に、パレスチナ問題が「帰って来た」ことだろう。 パレスチナ問題はかつて、中東問題の中心であり、最大の問題とされていた。しかし2023年10月7日に至るまで、かなり長期間にわたってパレスチナ問題の中…
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「10月7日」の中東地域への影響について寄稿

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ガザ紛争についての分析を、私よりも若い世代の、中堅の中東研究者が中心になって編んだ論集が近く刊行される。◎鈴木啓之編『ガザ紛争』(東京大学出版会、U.P. Plus、2024年6月25日)  U.P. Plusは、大学出版会の通常の刊行物とは異なり、廉価なペーパーバックで、最新の…
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「10月7日」から8カ月(これまでの発信のまとめ)

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2023年10月7日に発生したパレスチナのガザ地区を支配するハマースによるイスラエル領内への越境攻撃から、8カ月が経った。「10月7日」は、中東政治の新展開の起点として、国際政治をめぐる議論の基本単語のようになっている。かつて「9月11日」がそうだったように。「9月11日…
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イスタンブールからイスラエル・ガザの「戦争」を見る

トルコのイスタンブールに滞在している。 9月半ばに1週間ほどイスラエル・テルアビブに滞在し、客員研究員の資格も与えられている国家安全保障研究所(INSS)で今後の共同研究の打ち合わせ、INSSに日本から高名な先生を迎えて中国問題のディスカッションを設定するなどしたが…
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「脱エスカレーション(de-escalation)」が現在の中東政治のトレンド・キーワード

現在の中東政治・外交の共通の課題を表す概念を一つだけ挙げるならば、"de-escalation"だろう。これをどう訳すか。「緊張緩和」とでも訳すのが無難だろうが、あえて『フォーサイト』では国際政治に慣れた読者も多いと思われるので、「脱エスカレーション」としておきたい。「…
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非国家主体から国家主体へ

中東で生じている大きな変化を、これから折に触れ、抽象化して記していきたい。 見るべき重要なポイントは、中東地域の政治・国際関係の基調が「非国家主体から国家主体へ」と転じたという点だろう。 2001年の9・11事件以後、イラク戦争後の混乱を経て、「アラブの春」の動…
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世界の中でその地位を転じ続ける中東の姿を見続ける

またも「中東通信」欄の更新が滞ってしまった。しかも今度は長期に留守をした。待っていただいていた読者の方々には深くお詫びしたい。それでもなお待ってくださるという編集部の皆様には感謝の言葉もない。 勤め先の東大先端研に設立した、「大学発・外交安全保障シンクタン…
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2022年の回顧:グローバルサウスと「価値を共有」した中東主要国

 2022年も大晦日となった。フォーサイト編集部からは、各種の寄稿の打診や企画のお誘いをいただくが、学内シンクタンクROLESの組織運営や海外拠点形成にかかりきりで、反応できないことが多くて心苦しいところである。   昨年はこの「中東通信」欄に、12月に一気に10本の…
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ネタニヤフは分裂するイスラエル政界で「余人をもって代え難し」

 イスラエル国会(クネセト)が、12月29日、ネタニヤフ元首相が率いる議会第一党リクード党(議席総数120のうち32議席)が極右政党や宗教政党と組んだ連立政権を承認し、ネタニヤフが政権に返り咲いた。イスラエル政治史上、最も右寄りの政権が誕生した。11月1日に行われた3…
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トルコ・エルドアン大統領の差し伸べる手を握り返すアラブ諸国

 先日この欄に記したトルコのイスラエルとの「和解」は、イスラエルが陰に日向に音頭をとって形成してきた「トルコ包囲網」を構成する主要国に、エルドアン大統領がいわば「詫びを入れる」行脚の延長線上にある。トルコの台頭と孤立   トルコのイスラエルとの関係は、トル…
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ムハンマド皇太子の変わらぬ資質と代わる環境

 8月31日である。終わっていない「夏休みの宿題」の一つが、7月末に英Economistの付録雑誌1843 Magazineに、この「夏の読み物 (summer reading)」の一つとして掲載されていた、サウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマーン皇太子に関する長文の記事である。Economistの…
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イスラエルのガンツ国防相が米国訪問の帰路に来日

 イスラエルのベニー・ガンツ国防相が8月25日から27日に米国を訪問し、フロリダ州タンパの米中央軍司令部でマイケル・クリラ司令官と会談し、ワシントンDCでジェイク・サリバン国家安全保障担当大統領補佐官等と会談する模様だ。   イスラエルの国防相は頻繁に訪米するた…
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東地中海ガス田をめぐる虚実皮膜・再論

 先ほどこの「中東通信」欄に「トルコとイスラエルは不承不承に関係を修復」を寄稿して、ここ半年余りのトルコ・イスラエル外交関係の進展について記事をまとめておいた。   このまとめを行ったのは、トルコ・イスラエル関係、特に2020年ごろから焦点となっている「東地中…
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トルコとイスラエルは不承不承に関係を修復

 8月17日にトルコのエルドアン大統領とイスラエルのラピド首相が電話会談を行い、4年前の2018年に相互に退去させて以来不在となっていた大使・総領事を双方が任命することにより、両国が十全な外交関係を回復することを確認した。8月19日にはトルコ・エルドアン大統領とイス…
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エルサレム・テルアビブの間で「毎日が巡礼」の生活

 3月以来、イスラエルと東京の往復生活を続けている。現在は3回目の渡航に向かうところである。   3月の渡航で、2020年以来、新型コロナ禍による渡航制限で伸び伸びになっていた、テルアビブ大モシェダヤン中東アフリカ研究センター(Moshe Dayan Center for Middle Easte…
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イスラエルとトルコを軸とした中東政治のグローバルな存在感

この欄を「留守」にしていた間に注力していた研究事業についてなど、いくつか雑観を記すことを許していただきたい。 最近は「書き手」「演者」として最前線に立って発言するよりも、大学という場を、時代の変化にふさわしい形で再構成していくための「裏方」の作業が多くなっ…
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