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池内恵の中東通信

池内恵(いけうちさとし 東京大学教授)が、中東情勢とイスラーム教やその思想について日々少しずつ解説します。

執筆者プロフィール
池内恵
池内恵 東京大学先端科学技術研究センター グローバルセキュリティ・宗教分野教授。1973年生まれ。東京大学大学院総合文化研究科地域文化研究専攻博士課程単位取得退学。日本貿易振興機構アジア経済研究所研究員、国際日本文化研究センター准教授を経て、2008年10月より東京大学先端科学技術研究センター准教授、2018年10月より現職。著書に『現代アラブの社会思想』(講談社現代新書、2002年大佛次郎論壇賞)、『イスラーム世界の論じ方』(中央公論新社、2009年サントリー学芸賞)、『イスラーム国の衝撃』(文春新書)、『【中東大混迷を解く】 サイクス=ピコ協定 百年の呪縛』 (新潮選書)、 本誌連載をまとめた『中東 危機の震源を読む』(同)などがある。個人ブログ「中東・イスラーム学の風姿花伝」(http://ikeuchisatoshi.com/)。

レバノン情勢の緊迫:サウジは対イラン・ヒズブッラー強硬姿勢を強める

サウジがレバノン在住の国民に、即座に退去するよう指令を出した。サウジの対イラン・対ヒズブッラーの政策は緊迫の度を急速に高めている。11月4日、サウジが多数の要人を拘束した政変と同日に、レバノン問題でも大きな動きがあった。この日、サウジのリヤードを訪問中のサア…
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サウジの「汚職追及」で大メディア所有者が軒並み対象に

11月4日夜のサウジの王族・閣僚経験者・企業家の大量拘束で、アラブ世界全体に影響力を持つ汎アラブ・メディア産業の所有者たちが軒並み逮捕されたことは気になる。汎アラブ・メディアというとカタールが出資したアル=ジャジーラが有名だが、サウジの企業家・財閥も汎アラブ…
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サウジの企業家拘束はヴィジョン2030の経済変革への本気度を疑わせる

サウジのムハンマド皇太子が「汚職摘発」を掲げて断行した王族・企業家・財閥総帥の大量逮捕の目的や効果ははっきりしない。それが「軍・治安機構の統一」への一歩となりうることは先ほど記した。しかし企業家・財閥総帥の主要な人物を軒並み拘束していることは、ムハンマド皇…
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サウジのムハンマド皇太子はムトイブ国家防衛隊相の更迭・拘束で軍・治安機構の一元化を進める

深夜早朝に大胆な(あるいは衝動的にも見える)政策を実施して世界を驚かせるのが、サウジのムハンマド皇太子のトレードマークのようになってきた。11月4日の夜に「汚職摘発」を掲げて行った、有力王族・企業家・財閥総帥らの大量拘束にはどのような背景や目的があるのか、は…
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サウジ・トルコ・エジプトへのロシア製対空ミサイルS-400配備を米国は警戒

10月5日のサウジのサルマーン国王のロシア・モスクワ訪問とプーチン大統領との会談で、もっとも耳目を集めたのはロシア製対空ミサイル・システムのS-400の購入に関する覚書が結ばれたことだろう。この案件はすでに今年4月に表面化していたが、首脳会談で改めて合意したことに…
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KRGのキルクーク喪失でロシアの懐は痛まない

キルクークをめぐるKRGとイラク中央政府の紛争について、ここのところの激変を注視しているが、「中東の部屋」ではKRGの油田開発へのロシア国営石油会社の進出について記してあった。その後、キルクークがイラク中央政府の支配下に入ったことで、ロシアのKRGとの契約はどうな…
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ラッカ制圧の祝祭で「シリア民主軍」がPKKの「本性」を現す

米国に支援されクルド人民兵組織YPGを主体としたSDFがシリア東部のラッカを制圧したが、ここでSDFの実態がトルコの主張するようにトルコの反体制武装勢力PKKなのではないか、という疑いをいっそう深める事件があった。19日にラッカの街の中央広場で開かれたパレードで、YPGの…
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イラク政府軍がエルビールの南に迫る

10月20日、イラク政府軍部隊が、キルクーク県の北部でクルド人の自治区(クルディスターン地域政府=KRG)との境界にある町アルトゥン・キョプリュに迫り、反撃に出たクルド民兵組織ペシュメルガと戦闘を行ったという。"Iraq army seizes town near Erbil after fierce clashe…
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ソマリアの最大規模のテロで際立つトルコの進出

10月14日にソマリアの首都モガディシュの中心部で発生したトラック爆弾による自爆テロの死者は300人を超え、さらに増えそうだ。"Death toll from Somalia bomb attacks tops 300," Reuters, October 16, 2017.ソマリアでは1980年代後半以来内戦が続き、イスラーム主義の過激派…
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シリアではクルド系組織が主導するSDFが「イスラーム国」の拠点ラッカを制圧

イラクではクルド人勢力が2014年以来拡張した領域を一両日で失うという大打撃を被ったが、同時期にシリアでは、クルド人勢力が「イスラーム国」の主要拠点のラッカを制圧し、戦果を誇っていた。10月15日には、シリアのクルド人民兵組織の民衆防衛隊(YPG)が主導し米国に支援…
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クルド危機が示す米国の仲介能力の低下

キルクークをめぐってクルディスターン地域政府(KRG)とイラク中央政府の衝突の寸前まできているが、ここに至った直接の契機は9月25日のクルド独立住民投票が、イラクの憲法上の正当な地位を持つクルド地域の外にある(ただしKRGの実効支配下に2014年以来ある)キルクークな…
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キルクークに向けてイラク政府軍の侵攻が開始

イラク政府軍部隊が、クルドKRGが実効支配するキルクーク周辺部の軍事空港(K-1基地)に向けて進軍を始めたと報じられている。クルド人が歴史的に帰属を主張するキルクークは大規模な油田を擁し、ここをイラク政府軍とKRGのどちらが掌握するかが、クルド独立の経済的な成否を…
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サウジアラムコのIPOは迷走の末ついに棚上げか

サウジの壮大な経済改革(国家改造)プラン「ヴィジョン2030」の目玉、そして改革を成立させる前提条件とも言える国営石油会社サウジアラムコ(Saudi Aramco)の新規株式公開(IPO)だが、迷走を極めている。「ヴィジョン2030」の実現可能性は大いに懐疑的に見られており、そ…
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トルコ・エルドアン大統領はイランへ、サウジ・サルマーン国王はロシアへ

トルコのエルドアン大統領が、10月4日、イランの首都テヘランを訪問しており、ロウハーニー大統領だけでなく、最高指導者ハメネイ師とも面会する模様だ。主要な議題はクルド問題と見られている。エルドアン大統領のイラン訪問に先立つ10月1日、トルコのフルシ・アカル参謀総長…
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バグダーディーの音声声明はローン・ウルフ型テロを刺激したのか

カナダ・エドモントンやフランス・マルセイユで9月の末にローン・ウルフ型のテロが続発した背景に、9月28日に公開されたとみられるアブー・バクル・バグダーディーの音声声明は何らかの影響を及ぼしているのだろうか。"'New Baghdadi tape' posted by Islamic State group," B…
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ローン・ウルフ型テロの続発

過去半月の間に、世界各地で、「ローン・ウルフ型」のテロが続発している。ラスベガスの事件がどのように他のものと関連するか分からないが、とりあえず一覧で基礎事実をまとめておこう。9月15日 英国・ロンドンの地下鉄ディストリクト・ライン(District Line)の列車内に置…
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ラスベガスの銃乱射テロにも「イスラーム国」関連メディアが犯行を主張

米国ラスベガスで10月1日夜に起きた銃乱射事件は少なくとも59名の死者、400名を超える負傷者を出し、米国でも前例の少ない規模の銃犯罪事件となった。ここでも「イスラーム国」に近いメディア組織アゥマーク通信(Amaq)が犯行を主張する声明を出した。1つ目の声明では、犯人…
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パレスチナの「政界再編」は、小池都知事の「希望の党」騒動と似通う

先ほどは、ハマース支配下で封鎖され孤立したガザを巡って、ファタハとハマースの歩み寄りが、UAEやサウジやエジプトの後押しによって進められていることを記した。これはサウジとUAEが、カタールとイランを敵と見立てて行う、地域内の覇権ブロック構築の試みの一環と言える。…
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10年ぶりにガザでハマースとファタハが統一政府を目指す

パレスチナのガザを支配してきたイスラーム主義のハマースが、ヨルダン川西岸のラーマッラーを拠点としたパレスチナ自治政府を掌握するPLO主流派ファタハへの接近を進めている。10月2日、ファタハとハマースの統一政府の首相としてファタハのラーミー・ハムダッラーがガザ地区…
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中東の変動を逐一伝える情報の奔流の中で

半月ほど、この欄でのつぶやきが途絶えてしまった。この欄の更新が止まる時は、中東で何か深いところで変化が起こっていると考えていただきたい。重要な、しかし精査を要する情報が中東から奔流のように流れてくると、処理能力を超えてしまう。「面白いニュース」は無数にある…
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