池内恵の中東通信
池内恵(いけうちさとし 東京大学教授)が、中東情勢とイスラーム教やその思想について日々少しずつ解説します。
前のエントリでは1914年のイエメンの地図を紹介したが、その後のイエメンの南北のそれぞれの発展(および1990年代の統一と現在の分裂)について、地図で解説したウェブサイトがある。Yemen: From the Independence Day to the Houthi Insurgency, edmaps.comこのサイトでは5…
イエメンへの軍事介入におけるサウジとUAEの足並みの乱れが、南部アデンに仮の政府を置いてきたハーディー政権と南部分離派との間の衝突に至ったことを記しておいたが、サウジとUAEは今でこそGCCの中でも主要な同盟国として一体化を進めているように見えるが、歴史的にはかな…
1月28日、イエメンの南部分離派勢力が、南部の中心都市アデンの、ハーディー政権が暫定的に拠点としている政府庁舎を、軍事衝突の末、占領した。政府庁舎を奪われた側のハーディー政権のビン・ダグル首相は、これをクーデタと非難した。これはイエメン内戦の新たな展開である…
中東の部屋に掲載した論考「対中東政策が日本外交の『6本目』の柱に」へのさらなる補足。余談として、日本では「リベラル派」から「ヒトラー」とまで罵られることのある安倍晋三首相が、リベラル国際秩序を理論化した著名な国際政治学者でプリンストン大学教授のジョン・アイ…
先ほどは今国会の冒頭の外交演説を取り上げたが、こういった首相や外相の演説は、1つ1つを取れば総花的に多くの課題に触れなければならないので、個々の部分はそれほど深く掘り下げたものではなく、正直に言って興味が湧くものは少ないが、長期間にわたって趨勢を見ていくと、…
さきほど「中東の部屋」に掲載した論考で、河野外相の外交演説を取り上げた(「対中東政策が日本外交の6本目の柱に」『フォーサイト』2018年1月22日)が、演説の該当箇所をここに転載しておこう。【外務省ウェブサイトより】 5つ目として、私は、対中東政策を抜本的に強化し…
中東諸国のニュースやオピニオンを英語で解説してくれる便利なウェブサイトとしてすっかり定着したAl-Monitorが、2018年の中東の課題を展望している。中東各地で現地に密着した多くの書き手を抱えているためもあるのだろうが、列挙される課題は52もある。 "Al-Monitor's 2018…
トルコのエルドアン大統領が12月24日からアフリカ諸国(4日間でスーダン、チャド、チュニジアを廻る予定)を訪問しているが、最初の訪問地スーダンで、興味深い動きを見せた。スーダンの紅海岸の歴史的な港湾都市スワーキン(サワーキン)島の再建を、トルコが行う合意を結ん…
トランプは12月6日に署名した宣言文および演説でエルサレムを首都と認め、大使館のエルサレム移転の決意を表明したが、その直後に、1995年に議会が可決した「エルサレム大使館法」の適用を6カ月免除する大統領令にも署名している。これは「エルサレム大使館法」の規定により…
12月6日の米トランプ大統領の演説の内容は、事前に公開しておいた「中東―危機の震源を読む(94) トランプがエルサレムを首都承認した後に何が起こるか」で書いておいた通りであったため、それほど付け加えることはないが、「中東通信」欄で、あらためて演説の本文内容・構成…
米トランプ大統領は12月6日の演説でエルサレムをイスラエルの首都と認めたが、これに対しては予想された、あるいは危惧されていた反発が、随所から表明されている(例えばパレスチナ・ガザを支配するハマースによる反応)。それらが形式や表向きの意見表明なのか、具体的な対…
トランプの演説を待たずにエルサレム首都承認問題について、連載「中東 危機の震源を読む」に論考「トランプがエルサレムを首都承認した後に何が起こるか」を掲載しておいた。補足しておくと、米国東部時間6日午後1時から(日本時間7日午前3時から)行われると見られるトラン…
ワシントンDCとロンドンを駆け足で回る、世界一周の出張から戻ったところである。訪問先・調査の内容はそのまま表に出してはならないものが多いので、ここにはまだ書けないのだが、一つだけ気になったことを記しておこう。それはワシントンDCで覗いてみた北米中東学会(MESA:…
サウジがレバノン在住の国民に、即座に退去するよう指令を出した。サウジの対イラン・対ヒズブッラーの政策は緊迫の度を急速に高めている。11月4日、サウジが多数の要人を拘束した政変と同日に、レバノン問題でも大きな動きがあった。この日、サウジのリヤードを訪問中のサア…
11月4日夜のサウジの王族・閣僚経験者・企業家の大量拘束で、アラブ世界全体に影響力を持つ汎アラブ・メディア産業の所有者たちが軒並み逮捕されたことは気になる。汎アラブ・メディアというとカタールが出資したアル=ジャジーラが有名だが、サウジの企業家・財閥も汎アラブ…
サウジのムハンマド皇太子が「汚職摘発」を掲げて断行した王族・企業家・財閥総帥の大量逮捕の目的や効果ははっきりしない。それが「軍・治安機構の統一」への一歩となりうることは先ほど記した。しかし企業家・財閥総帥の主要な人物を軒並み拘束していることは、ムハンマド皇…
深夜早朝に大胆な(あるいは衝動的にも見える)政策を実施して世界を驚かせるのが、サウジのムハンマド皇太子のトレードマークのようになってきた。11月4日の夜に「汚職摘発」を掲げて行った、有力王族・企業家・財閥総帥らの大量拘束にはどのような背景や目的があるのか、は…
10月5日のサウジのサルマーン国王のロシア・モスクワ訪問とプーチン大統領との会談で、もっとも耳目を集めたのはロシア製対空ミサイル・システムのS-400の購入に関する覚書が結ばれたことだろう。この案件はすでに今年4月に表面化していたが、首脳会談で改めて合意したことに…
キルクークをめぐるKRGとイラク中央政府の紛争について、ここのところの激変を注視しているが、「中東の部屋」ではKRGの油田開発へのロシア国営石油会社の進出について記してあった。その後、キルクークがイラク中央政府の支配下に入ったことで、ロシアのKRGとの契約はどうな…
米国に支援されクルド人民兵組織YPGを主体としたSDFがシリア東部のラッカを制圧したが、ここでSDFの実態がトルコの主張するようにトルコの反体制武装勢力PKKなのではないか、という疑いをいっそう深める事件があった。19日にラッカの街の中央広場で開かれたパレードで、YPGの…
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