池内恵の中東通信
池内恵(いけうちさとし 東京大学教授)が、中東情勢とイスラーム教やその思想について日々少しずつ解説します。
8月23日にイスラエル・ネタニヤフ首相はソチでプーチン大統領と会談した。これと重なる時期に、イスラエルの諜報機関モサドのヨッシ・コーエン長官が率いる代表団が米国を訪問しているようだ。これらの訪問で行われる協議において主要な課題になるのは、シリア南部へのイラン…
「アラブの春」によるムバーラク政権崩壊後、2012年6月までの相次ぐ選挙に勝利したムスリム同胞団の政権掌握、2013年7月の軍主導のクーデタと揺れるエジプトは中東国際政治における存在感を低下させてきたが、最近、シリア内戦の停戦実施などで地道な関与を行うことで、じわ…
シリア内戦と比較して、あるいはシリアとイラクの「イスラーム国」と比較して、報じられることが少ないのだが、同程度あるいはそれ以上の人道的悲劇が深刻化しているのはイエメンである。フーシー派がハーディー政権を放逐し全土を掌握しかけた2015年3月に、サウジ・UAE主導で…
8月23日、カタールが召喚していた駐イラン大使をテヘランに復帰させる方針を発表し、外交関係の回復に踏み切ることが明らかになった。"Qatar says its ambassador to return to Iran: foreign ministry," Reuters, August 24, 2017.2016年1月初頭に勃発したサウジとイランの外…
北朝鮮と中東との関係というと、エジプトのように冷戦期の民族主義・反米主義つながりというのがかつての常態だったが、近年は湾岸産油国とのつながりもあり、米・北朝鮮間の緊迫化に伴い、政治問題化することが増えている。さらにそこに、湾岸産油国内部でのカタールと、サウ…
エジプトと北朝鮮の関係は、特にムバーラク政権期に深まった。1963年に両国は国交を結んだものの、1973年の第4次中東戦争で、北朝鮮がミグ戦闘機のパイロットを送って支援したことが関係を深めたようだ。空軍士官上がりのムバーラク元大統領にとって、北朝鮮との「血の絆」の…
米の対エジプト援助差し止め・延期の背後にエジプトと北朝鮮の深い関係がある、との報道を紹介した。北朝鮮の対中東・アフリカへの軍事援助・軍事輸出については、宮本悟聖学院大学教授(政治学・北朝鮮政軍関係)が広範に調査をしており、私もエジプトの参謀総長の回顧録に記…
先ほどメモを記した米トランプ政権の対エジプト軍事・経済援助の差し止め・延期について、ニューヨーク・タイムズは、エジプトの北朝鮮との深い繋がりを問題視してのものだという見立てで報じている。"U.S. Slaps Egypt on Human Rights Record and Ties to North Korea," The…
トランプ政権の行方が不透明だが、対中東政策では少し気になる動きがある。"Exclusive: U.S. to withhold up to $290 million in Egypt aid," Reuters, August 23, 2017.米国がエジプトの人権問題・民主化の滞りへの懸念を理由に、9570万ドルの援助要請を却下し、さらに1億950…
先ほどサウジの紅海岸リゾート開発計画についてのメモをこの「中東通信」欄に上げたが、ジェッダ、ラービグ、ヤンブー、ワジュフ・・・といった地名に馴染みがない読者も多いかもしれない。これらの地名を頭に入れるには、現在のヨルダン王家である、メッカの太守だったハーシ…
8月1日、サウジアラビア国営通信(SPA)は、ムハンマド・ビン・サルマーン皇太子の肝入りプロジェクトとして、紅海岸リゾート開発計画を発表した。ブルームバーグの記事がより詳細である。"Saudi Arabia Plans a Huge Red Sea Beach Tourism Project," Bloomberg, August 1, 2…
7月27日に、トランプ政権の国家安全保障会議(NSC)で中東担当上級部長・大統領特別顧問を務めていたデレク・ハーヴェイ退役陸軍大佐が更迭されたと報じられた。"Derek Harvey Out at NSC: One of the smartest minds on Iraq gets the boot," Weekly Standard, July 27, 201…
UAEはエジプトやサウジアラビアと共に、カタールとその支援に部分的に頼るムスリム同胞団系諸勢力への攻勢を強めているが、パレスチナのガザを支配するハマースに対しては、かなり周到な工作を仕掛けているようだ。カタールに対して突きつけた13項目の要求では、ムスリム同胞…
エルドアン大統領が7月23・24日にアラビア半島・ペルシア湾岸のGCC主要国を歴訪している。サウジ→クウェート→カタールという歴訪日程からは、サウジ・UAE主導の対カタール制裁の解除を目指す仲介外交と言っていいが、トルコ・エルドアン政権のムスリム同胞団との深い関係や…
中国がジブチで鉄道と港湾施設の建設、そして初の海外軍事拠点の開設の準備を進めていることについては、「中東通信」欄では様々に注目してきたが、近く海軍艦船の「保障基地」が開かれる模様である。7月11日に、広東省湛江の軍港で駐留部隊の出発式が行われたと広く報じられ…
シリア南西部での停戦に関して、7月7日に米・露・ヨルダンの合意が発表され、9日に発効したが、この次の展開として注目されるのが、合意の実質的な当事者と目されているイスラエルの動きである。合意はシリアの南西部の3県を対象とするが、ここにはデラア県とスワイダー県に…
「6月30日」はエジプトのスィースィー政権が正統性の根拠を置く出来事が生じた日である。2013年の6月30日にタハリール広場で行われた大規模デモは、エジプト軍が「アラブの春」を覆すために、その発生を黙認し支援し、しまいには扇動した、政治的な大衆動員だったと現時点から…
6月21日の新皇太子任命にまつわる一連の施策では、皇太子と同年代で、初代国王からの世代としては一世代格下の第4世代の王子たちを、内務省と王宮府(4月にここにもテロ対策機関が設置され内務省から権限の一部を移した)に集めたこと、また将来の皇太子任命では国王と同一…
6月21日に発表された、サウジの前皇太子(ムハンマド・ビン・ナーイフ)更迭と、息子のムハンマド新皇太子の任命に伴って行われた人事は、ムハンマド新皇太子と同年代の王子を、テロ対策を担当する内務省や総合情報局と、ムハンマド皇太子が父サルマーン国王と共に統治の任に…
サウジの新皇太子擁立は、6月21日早朝にサウジ国営通信社(Saudi Press Agency; Wakala al-Anba' al-Saudiyya)から矢継ぎ早に配信された、16本の勅令によって明らかになった。第255号−第270号の16本の勅令は、全体としてみれば、前皇太子の解任と新皇太子の任命に始まり、初…
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