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池内恵の中東通信

池内恵(いけうちさとし 東京大学教授)が、中東情勢とイスラーム教やその思想について日々少しずつ解説します。

執筆者プロフィール
池内恵
池内恵 東京大学先端科学技術研究センター グローバルセキュリティ・宗教分野教授。1973年生まれ。東京大学大学院総合文化研究科地域文化研究専攻博士課程単位取得退学。日本貿易振興機構アジア経済研究所研究員、国際日本文化研究センター准教授を経て、2008年10月より東京大学先端科学技術研究センター准教授、2018年10月より現職。著書に『現代アラブの社会思想』(講談社現代新書、2002年大佛次郎論壇賞)、『イスラーム世界の論じ方』(中央公論新社、2009年サントリー学芸賞)、『イスラーム国の衝撃』(文春新書)、『【中東大混迷を解く】 サイクス=ピコ協定 百年の呪縛』 (新潮選書)、 本誌連載をまとめた『中東 危機の震源を読む』(同)などがある。個人ブログ「中東・イスラーム学の風姿花伝」(http://ikeuchisatoshi.com/)。

4年前のエジプトのクーデタ(2013年6月30日ー7月3日)を回顧する

「6月30日」はエジプトのスィースィー政権が正統性の根拠を置く出来事が生じた日である。2013年の6月30日にタハリール広場で行われた大規模デモは、エジプト軍が「アラブの春」を覆すために、その発生を黙認し支援し、しまいには扇動した、政治的な大衆動員だったと現時点から…
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サウジ新皇太子任命に際しては公務員の給料カットを遡って全面撤回

6月21日の新皇太子任命にまつわる一連の施策では、皇太子と同年代で、初代国王からの世代としては一世代格下の第4世代の王子たちを、内務省と王宮府(4月にここにもテロ対策機関が設置され内務省から権限の一部を移した)に集めたこと、また将来の皇太子任命では国王と同一…
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サウジの新内相はムハンマド皇太子に影のように付き従ってきた

6月21日に発表された、サウジの前皇太子(ムハンマド・ビン・ナーイフ)更迭と、息子のムハンマド新皇太子の任命に伴って行われた人事は、ムハンマド新皇太子と同年代の王子を、テロ対策を担当する内務省や総合情報局と、ムハンマド皇太子が父サルマーン国王と共に統治の任に…
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サウジの国王–皇太子の親子での権力継承は「今回限り」とする基本法改正で反発を避ける

サウジの新皇太子擁立は、6月21日早朝にサウジ国営通信社(Saudi Press Agency; Wakala al-Anba' al-Saudiyya)から矢継ぎ早に配信された、16本の勅令によって明らかになった。第255号−第270号の16本の勅令は、全体としてみれば、前皇太子の解任と新皇太子の任命に始まり、初…
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サウジのメディア・SNSは「忠誠の誓い(バイア)」の嵐

サウジ情勢を各種メディアを通じて観察していると、政治・国際関係の分析とは別に、私の本業でもあるイスラーム政治思想に関わる概念が飛び交うので、興味深い。国王の実子を皇太子に擁立し、次期国王を確定させたというこの場面では、次期国王の即位の際に行われる、伝統的な…
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サウジ新皇太子の権力掌握は確かだが政策の結果には不安が

6月21日のサウジのムハンマド・ビン・ナーイフ皇太子更迭と、サルマーン国王の実子のムハンマド・ビン・サルマーン副皇太子の皇太子への昇格は、長幼の序を重んじ、各世代で兄弟間で順に権力を継承してきた慣例を破り、米政府との関係も良かった前皇太子を排除して、若い新皇…
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「イスラーム国」が今なぜ、イランを標的にするようになったのか?

6月7日のテヘランでのテロ(死者は17名に増えた)に関して「イスラーム国」が相次いで犯行声明を出しており、イランの捜査当局もこれを裏づける発表をしている。これまで「イスラーム国」はイランでテロを行ったことはなかった。そもそもシーア派かつイラン人が主体のイランで…
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イラン国会・ホメイニ廟へのテロ犯人は「イスラーム国」でイラン人

6月7日のテヘランでのテロを行ったのは「イスラーム国」であり、実行犯はイラン人である、とイランの諜報当局が8日に明らかにした。"Iran attackers fought for Islamic State in Syria, Iraq: ministry," Reuters, June 8, 2017.該当部分は以下の部分で、要約すると、諜報当…
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テヘランのテロでサウジへの疑念が高まる

テヘランの国会・ホメイニ廟同時テロで、「イスラーム国」のアゥマーク通信が声明を出しているが、やはり疑いはサウジに向けられている。イランの革命防衛隊は声明でサウジを名指しして容疑を向け、トランプ大統領との会合直後に「イスラーム国」が犯行を主張するテロが起きて…
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イラン西部アフワーズ(フーゼスターン)の分離主義運動への波及に注意

6月7日のテヘランのテロとの関連は今のところまったく報道に出てきていないが、取り締まりの過程で紛争が激化する可能性があるので注意が必要なのは、イラン西部のフーゼスターン州・アフワーズ(Ahvaz; Ahwaz)である。この地域はイランの石油・天然ガスの多くを産出する地帯…
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「イスラーム国」は対イラン攻撃の扇動を強めていたが

6月7日のテヘラン国会・ホメイニ廟へのテロは、実行主体も背後関係も分からない。「イスラーム国」の犯行声明も関係がはっきりしない。「イスラーム国」が今年に入ってから、ペルシア語でのプロパガンダを増やし、対イランの宣伝を行っていたことは確かだろう。Golnaz Esfandi…
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イランで国会とホメイニ廟への襲撃と自爆:イスラーム革命期以来のテロ

6月7日朝、イランの首都テヘランで重要な象徴的意味を持つ標的少なくとも2カ所に対して同時に攻撃が行われた。国会とホメイニ廟にそれぞれ複数の犯人が侵入し、銃撃の上、自爆(一部に薬物による自殺も含まれるという情報がある)した。午後に銃撃戦が終結した段階で、12名が…
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「火のないところに煙は立たず」と「嘘から出た実」

サウジ・UAEとカタールの間の泥仕合は、発端のタミーム首長発言にしてもハッキング説が対置され、UAEやバハレーンの高官のメールやSNSアカウントも次々にハッキングされるなど、基礎的な情報が事実か否かすらも、判定することが困難である。不可解なことが多すぎる。トランプ…
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カタール首長の問題発言はロシアのハッキングによる偽ニュース?

6月5日にサウジとUAEがバハレーンやエジプトと共に行った対カタール断交に関して、発端となる、5月23日にカタールのタミーム首長が軍事教練過程の卒業生へに向けて行った発言とされ、カタール国営通信(QNA)から発信されたテキストが、ロシアのハッキングによる偽ニュースだ…
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対カタール断交を行う次の国は?

サウジとカタールの紛議で、真っ先にサウジ側に追随を表明した国として、イエメンとモルディブについて記しておいたが、次にどのような国が同様の措置を表明するだろうか。おそらくソマリアやスーダン、コモロ諸島だろうか。これは2016年1月にサウジとイランの関係が悪化した…
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対カタール断交にイエメン・モルディブも追随

サウジアラビア・バハレーン・UAEにエジプトが加わって、対カタールの断交(国交断絶・外交関係の切断)を行ったが、イエメンとモルディブが今のところこれに追随している。いずれもさほどの影響はないが、近年のサウジ主導の「連合」の実態を示すものとして興味深い。イエメ…
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GCCの分裂はサウジとカタールの断交へ

6月5日、とうとうサウジがカタールとの断交に踏み切った。アラビア半島のサウジの領土からペルシア湾に突き出した半島であるカタールは、サウジが国境を封鎖すれば陸路の交通・輸送が不可能となり、実質は孤島となってしまう。バハレーンはサウジに追随して断交措置を取って空…
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GCC内部で異様なまでの泥仕合

ここのところ、ペルシア湾岸のアラブ産油国が集まるGCC諸国の間での不和と非難合戦が、前例のない域に達している。渦中におり槍玉に上がっているのがカタールである。5月23日にタミーム首長が軍事教練過程の卒業生に向けた発言で、イランに大幅に歩み寄り、GCCによるイラン敵…
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マンチェスターの自爆犯はリビア難民2世

5月22日夜のマンチェスターのコンサート会場付近でのテロで自爆した犯人の身元が、マンチェスター市警本部長によって発表されている。テレグラフ紙ウェブサイトがかなり細かく報じている。"Salman Abedi named as the Manchester suicide bomber - what we know about him," T…
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「イスラーム国」がマンチェスターのコンサートへの爆破テロで犯行を主張

5月22日夜10時30分ごろに、英マンチェスターで行われていたアリアナ・グランデのコンサート終了直後に、会場となっていた「マンチェスター・アリーナ(Manchester Arena)」の出入り口付近で起こった爆破事件では、22名の死亡、59名の負傷が今のところ確認されている。SNS上で…
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