池内恵の中東通信
池内恵(いけうちさとし 東京大学教授)が、中東情勢とイスラーム教やその思想について日々少しずつ解説します。
6月7日のテヘランのテロとの関連は今のところまったく報道に出てきていないが、取り締まりの過程で紛争が激化する可能性があるので注意が必要なのは、イラン西部のフーゼスターン州・アフワーズ(Ahvaz; Ahwaz)である。この地域はイランの石油・天然ガスの多くを産出する地帯…
6月7日のテヘラン国会・ホメイニ廟へのテロは、実行主体も背後関係も分からない。「イスラーム国」の犯行声明も関係がはっきりしない。「イスラーム国」が今年に入ってから、ペルシア語でのプロパガンダを増やし、対イランの宣伝を行っていたことは確かだろう。Golnaz Esfandi…
6月7日朝、イランの首都テヘランで重要な象徴的意味を持つ標的少なくとも2カ所に対して同時に攻撃が行われた。国会とホメイニ廟にそれぞれ複数の犯人が侵入し、銃撃の上、自爆(一部に薬物による自殺も含まれるという情報がある)した。午後に銃撃戦が終結した段階で、12名が…
サウジ・UAEとカタールの間の泥仕合は、発端のタミーム首長発言にしてもハッキング説が対置され、UAEやバハレーンの高官のメールやSNSアカウントも次々にハッキングされるなど、基礎的な情報が事実か否かすらも、判定することが困難である。不可解なことが多すぎる。トランプ…
6月5日にサウジとUAEがバハレーンやエジプトと共に行った対カタール断交に関して、発端となる、5月23日にカタールのタミーム首長が軍事教練過程の卒業生へに向けて行った発言とされ、カタール国営通信(QNA)から発信されたテキストが、ロシアのハッキングによる偽ニュースだ…
サウジとカタールの紛議で、真っ先にサウジ側に追随を表明した国として、イエメンとモルディブについて記しておいたが、次にどのような国が同様の措置を表明するだろうか。おそらくソマリアやスーダン、コモロ諸島だろうか。これは2016年1月にサウジとイランの関係が悪化した…
サウジアラビア・バハレーン・UAEにエジプトが加わって、対カタールの断交(国交断絶・外交関係の切断)を行ったが、イエメンとモルディブが今のところこれに追随している。いずれもさほどの影響はないが、近年のサウジ主導の「連合」の実態を示すものとして興味深い。イエメ…
6月5日、とうとうサウジがカタールとの断交に踏み切った。アラビア半島のサウジの領土からペルシア湾に突き出した半島であるカタールは、サウジが国境を封鎖すれば陸路の交通・輸送が不可能となり、実質は孤島となってしまう。バハレーンはサウジに追随して断交措置を取って空…
ここのところ、ペルシア湾岸のアラブ産油国が集まるGCC諸国の間での不和と非難合戦が、前例のない域に達している。渦中におり槍玉に上がっているのがカタールである。5月23日にタミーム首長が軍事教練過程の卒業生に向けた発言で、イランに大幅に歩み寄り、GCCによるイラン敵…
5月22日夜のマンチェスターのコンサート会場付近でのテロで自爆した犯人の身元が、マンチェスター市警本部長によって発表されている。テレグラフ紙ウェブサイトがかなり細かく報じている。"Salman Abedi named as the Manchester suicide bomber - what we know about him," T…
5月22日夜10時30分ごろに、英マンチェスターで行われていたアリアナ・グランデのコンサート終了直後に、会場となっていた「マンチェスター・アリーナ(Manchester Arena)」の出入り口付近で起こった爆破事件では、22名の死亡、59名の負傷が今のところ確認されている。SNS上で…
トランプ政権の中東政策は、イランとの対決に傾斜しかけている、という。ブルッキングス研究所のイラン専門家で、イラン分析や対イラン政策でしばしば米政権のアドバイザーとなってきたスーザン・マロニーの論考がウェブサイトに公開されていた。Suzanne Malony, "Under Trump…
先ほどは「イスラーム国」やアル=カーイダの掲げる黒旗とその中央にあしらわれた印章について記したが、中東諸国で盛り上がるラマダーン月の連続ドラマの一つには、この黒旗と印章が乱舞しそうだ。ラマダーン月の夜明けから日没まで、ムスリムは断食を行う。日中は断食に耐え…
「イスラーム国」やアル=カーイダなどイスラーム主義諸組織が戦いに出たり統治を行う時に掲げる黒旗の中央に、丸い印章があしらってある。この印章の由来や意味については、以前に個人のブログで解説したことがある。預言者ムハンマドが、アラビア半島のメディナを拠点にメッ…
米トランプ政権はシリアのクルド勢力PYD(クルド民主統一党)とその軍事部門YPG(人民防衛部隊)との連携を深めている。YPGを主体としたSDF(シリア民主軍)を支援して、「イスラーム国」勢力が支配するシリア東部ラッカの制圧を進めようとしている。これに対してトルコが強く…
5月10日の会談で、トランプ大統領がラブロフ外相に、「イスラーム国」関連の機密情報を漏らしたとされる問題で、漏洩された情報の出どころはイスラエルだった、とニューヨーク・タイムズ紙が報じている。娘婿ジャレド・クシュナーのイスラエルとの関係の深さに依拠して、官僚…
連日お騒がせのトランプ大統領、紛糾する疑惑の報道が多すぎて、どの問題が重要で何が争点なのかが必ずしも定かでないが、FBIの捜査妨害の問題はかなり深刻かもしれない。5月9日にトランプ大統領がコーミーFBI長官を突如解任したことで、トランプ大統領とその側近のロシアとの…
ここのところ断続的に、ジブチに行ってその周辺を見渡して考えたことについてつらつらと記している(この10日間ほど、パソコンの設定の関係で休んでいましたが)。ジブチはアラブ連盟の一部という意味では中東の辺境とも言えるが、住民の多くはソマリ人(それ以外の多くは、エ…
トランプ大統領が、5月10日に、訪米したロシアのラブロフ外相との会談の際に、最高機密の情報を伝えたとワシントン・ポストが報じて、またも大騒ぎになっている。報道によると、伝えた最高機密情報は、「イスラーム国」勢力によるラップトップ爆弾に関するものだったという。…
以前から、この「たびレジ」は登録しておくと忘れていた頃に意外に役に立つ、ということをこの欄で書こうと思って忘れていたのだが、気づいたら「ゴルゴ」に先を越されていた。外務省が、お役所なりの渾身のPR作戦、なのだろうか、ゴルゴ13(さいとうたかを作)を起用して「海…

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