池内恵の中東通信
池内恵(いけうちさとし 東京大学教授)が、中東情勢とイスラーム教やその思想について日々少しずつ解説します。
トランプ政権の中東政策は、イランとの対決に傾斜しかけている、という。ブルッキングス研究所のイラン専門家で、イラン分析や対イラン政策でしばしば米政権のアドバイザーとなってきたスーザン・マロニーの論考がウェブサイトに公開されていた。Suzanne Malony, "Under Trump…
先ほどは「イスラーム国」やアル=カーイダの掲げる黒旗とその中央にあしらわれた印章について記したが、中東諸国で盛り上がるラマダーン月の連続ドラマの一つには、この黒旗と印章が乱舞しそうだ。ラマダーン月の夜明けから日没まで、ムスリムは断食を行う。日中は断食に耐え…
「イスラーム国」やアル=カーイダなどイスラーム主義諸組織が戦いに出たり統治を行う時に掲げる黒旗の中央に、丸い印章があしらってある。この印章の由来や意味については、以前に個人のブログで解説したことがある。預言者ムハンマドが、アラビア半島のメディナを拠点にメッ…
米トランプ政権はシリアのクルド勢力PYD(クルド民主統一党)とその軍事部門YPG(人民防衛部隊)との連携を深めている。YPGを主体としたSDF(シリア民主軍)を支援して、「イスラーム国」勢力が支配するシリア東部ラッカの制圧を進めようとしている。これに対してトルコが強く…
5月10日の会談で、トランプ大統領がラブロフ外相に、「イスラーム国」関連の機密情報を漏らしたとされる問題で、漏洩された情報の出どころはイスラエルだった、とニューヨーク・タイムズ紙が報じている。娘婿ジャレド・クシュナーのイスラエルとの関係の深さに依拠して、官僚…
連日お騒がせのトランプ大統領、紛糾する疑惑の報道が多すぎて、どの問題が重要で何が争点なのかが必ずしも定かでないが、FBIの捜査妨害の問題はかなり深刻かもしれない。5月9日にトランプ大統領がコーミーFBI長官を突如解任したことで、トランプ大統領とその側近のロシアとの…
ここのところ断続的に、ジブチに行ってその周辺を見渡して考えたことについてつらつらと記している(この10日間ほど、パソコンの設定の関係で休んでいましたが)。ジブチはアラブ連盟の一部という意味では中東の辺境とも言えるが、住民の多くはソマリ人(それ以外の多くは、エ…
トランプ大統領が、5月10日に、訪米したロシアのラブロフ外相との会談の際に、最高機密の情報を伝えたとワシントン・ポストが報じて、またも大騒ぎになっている。報道によると、伝えた最高機密情報は、「イスラーム国」勢力によるラップトップ爆弾に関するものだったという。…
以前から、この「たびレジ」は登録しておくと忘れていた頃に意外に役に立つ、ということをこの欄で書こうと思って忘れていたのだが、気づいたら「ゴルゴ」に先を越されていた。外務省が、お役所なりの渾身のPR作戦、なのだろうか、ゴルゴ13(さいとうたかを作)を起用して「海…
「パリでテロ」「ニースでテロ」「ベルリンでテロ」「イスタンブルでテロ」といった事件が起こった時、情報・報道が錯綜する。「いつ、どこで、何が起こったか」についての最低限必要な情報を知りたいが、これがかなりの労力と知識を要する。こんな時に、該当国・地域について…
【ジブチ紀行】遠回りしているが、やっと今回の渡航の一つの主要目的、アフリカ大陸初の電化鉄道とされるジブチ−アジスアベバ鉄道の話である。ジブチ市とエチオピア・アジスアベバを12時間(諸説あるが)でつなぐというこの鉄道は、中国の借款と中国企業の進出で大々的に建設…
中国のジブチ進出、特にアジスアベバとの間をつなぐ、アフリカ大陸初の電化鉄道を「開通させた」ことを、途中まで記してきたが、100年前にフランスがジブチ−アジスアベバ間に鉄道(Ethio-Djibouti Railways)を引いたという話をきっかけに、少し脱線してみたくなった。フラン…
昨日に続いて、中国のジブチと東アフリカへの進出について。中国のジブチの開発への進出として目立つのは、港湾施設と並び、鉄道である。ジブチの港湾施設が、まず第一にエチオピアの需要を満たすものであるのと同様に、鉄道もまたアジスアベバにつながるものが、真っ先に建設…
ここのところ、先月ジブチに行ってきて、いろいろ考えたことを、この欄で「つぶやく」ようにメモする試みを行っている。一昨日までに、ジブチとの往復の航空路線を題材にして、トルコが「アフリカの角」から東アフリカ地域に関与する広域の地域大国として、現地の大国エチオピ…
先ほどのトルコとシリアの壁の話の流れで、もう一つ、建築雑誌のウェブサイトをなんとなく逍遙していたところ、目に留まった記事がある。"Humanitarian experts propose turning refugee camps into enterprise zones called "refugee cities,"" Dezeen, 9 December 2016. 難…
ここのところ続けてジブチを視座にして、トルコのこの地域への関与の動向も視野に入れながら、紅海の南部から「アフリカの角」や東アフリカについて記してきたが、ここで一休みして、ちょっと目先を変え、イギリスの建築雑誌に載っていた、トルコとシリアの国境の壁についての…
昨日はジブチの往復便でエチオピアやトルコを経由したが、非常事態宣言下であっても恐れることはない、といった話を記した。そう記した翌日にさっそく正反対のことを書くのも如何なものかと思うが、安心と不安が内心に交錯して去来するのが中東・アフリカ生活である。実は、帰…
さて、連休である。筆者はこの連休でいくつも本を仕上げねばならず、外界との連絡をなるべく絶って仕事をするべく算段を重ねてきたのだが、フォーサイトの読者の皆さんには、連休中も毎日、少しずつ文章が届くように、「中東通信」で予約設定してある。それ以外にも、合間を見…
不定期連載つぶやき、ジブチで考えたこと。まだ始まったばかりである。前回までに、ジブチに行くならトルコ航空が便利で、東アフリカの隅々まで、かなり危ないソマリアにまで路線がある、という話をしたが、今回の私の旅程表はというと、スターアライアンスのマイレージを利用…
トルコのロシア製対空ミサイル・システムのS-400をトルコが導入決定寸前との報が流れるが、サウジのS-400導入も噂されている。ロシア側の宣伝と、米国の態度に不安を持つ米同盟国側の、対米牽制という両面があって、盛んに情報が流れるのかもしれないが、現実化すれば中東の国…
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