Weekly北朝鮮『労働新聞』
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ロシアのショイグ安保会議書記が訪朝し金正恩と機微な会談、韓国大統領選は短信のみ(2025年6月1日~6月7日)

執筆者:礒﨑敦仁 2025年6月9日
エリア: アジア
ロシア側4名に対し、北朝鮮側は金正恩国務委員長と通訳1名のみだった[朝鮮中央通信(KCNA)が発表した金・ショイグ会談の写真=2025年6月4日](C)EPA=時事
朝露間で高官の相互訪問が続いている。日米韓豪ほか11の同志国による多国間制裁監視チーム「MSMT」が出した朝露の不法軍事協力に関する報告書に、北朝鮮外務省の対外政策室長が強く反発する談話を出した。6月3日に当選した韓国の李在明大統領について論評はなく、事実のみ伝える短信記事が掲載された。【『労働新聞』注目記事を毎週解読】

 ロシアのセルゲイ・ショイグ国家安全保障会議書記がまた平壌(ピョンヤン)を訪問した。ショイグの訪朝は3月下旬以来、2カ月半ぶりである。

 6月5日付第1面には、金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長とショイグの大きなツーショット写真が掲載された。朝鮮労働党中央委員会の本部庁舎にある金正恩の執務室で行われた会談では、ロシア側は4人が丸テーブルに着席しているものの、金正恩は自らの後ろに通訳を同席させたのみで、相当に機微な問題を扱ったと考えるべきである。前回3月の会談時には朴正天(パク・ジョンチョン)党書記が同席していた。

 ショイグは、ウラジーミル・プーチン大統領からの挨拶を伝達した。クルスク地域の「解放作戦」に参戦した北朝鮮兵の英雄主義と犠牲的精神に対するロシア指導部の感謝が伝えられ、会談では包括的戦略パートナーシップのさらなる発展、多分野における相互協力、ウクライナ情勢や国際情勢、地域情勢について幅広く意見交換し、「完全一致の立場を確認した」という。金正恩は、北朝鮮政府はロシアの立場と対外政策を今後も「無条件に支持する」と確言した。

 5月26日から30日にかけては、李昌大(リ・チャンデ)国家保衛相がモスクワを訪問して国際会議に参加していた。『労働新聞』ではその事実が伝えられたのみであったが、ロシアの報道ではショイグと会談を行ったという。

カテゴリ: 政治
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執筆者プロフィール
礒﨑敦仁(いそざきあつひと) 慶應義塾大学教授。専門は北朝鮮政治。1975年生まれ。慶應義塾大学商学部中退。韓国・ソウル大学大学院博士課程に留学。在中国日本国大使館専門調査員、外務省第三国際情報官室専門分析員、警察大学校専門講師、米国・ジョージワシントン大学客員研究員、ウッドロー・ウィルソンセンター客員研究員など歴任。著書に『北朝鮮と観光』(毎日新聞出版)、共著に『最新版北朝鮮入門』(東洋経済新報社)など。
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