Weekly北朝鮮『労働新聞』
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対南部署が党統一戦線部から「第10局」に:金与正談話は掲載せず(2026年4月5日~4月11日)

執筆者:礒﨑敦仁 2026年4月13日
タグ: 北朝鮮 中国 韓国
エリア: アジア
中国の王毅外相(左)との会談は、率直で込み入った会談であったものと思料される[朝鮮労働党本部で王毅氏と握手を交わす金正恩国務委員長=2026年4月10日、北朝鮮・平壌](C)AFP=時事
金与正総務部長が発表した対韓談話は『労働新聞』には掲載されなかった。一連の談話で、韓国を担当する部署が党統一戦線部から第10局になったことが確認された。統一戦線部長だった張錦哲が外務第1次官に就任しているのは、没交渉状態であっても敵国としての韓国を無視できない現実を反映している。【『労働新聞』注目記事を毎週解読】

 4月6日、金与正(キム・ヨジョン)朝鮮労働党中央委員会総務部長が対韓談話を発表した。同日、韓国から北朝鮮領内へと無人機が飛来した問題について李在明(イ・ジェミョン)大統領が遺憾の意を表明したことに対し、「非常に幸いで、自らのための賢明な行為であると評価する」としたばかりか、「われわれの国家首班は、これを率直で度量の大きい人の姿勢を見せたものだと評した」と述べたのである。

 金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長の発言を含むこの金与正談話を韓国側は、「平和共存に向かっていく意味ある進展」(統一部)などとすこぶる好意的に受け止めたが、北朝鮮側は即時に反論した。翌7日、張錦哲(チャン・グムチョル)外務省第1次官兼第10局局長が「最も敵対的な敵国である韓国の正体は変わり得ない」と題する談話を発表し、韓国側が「くだらない夢のようなことを言うなら、これもやはり世人を驚かす愚かな馬鹿の『希望交じりの夢合わせ』として記録されるであろう」と韓国側の反応を一蹴したのであった。

 先の金与正談話は、「非常に短くて上品な文章と表現をもって韓国に向けて巧みな警告を飛ばした」のだという。金与正が別件で、韓国を「近所の犬が吠えるとむやみに真似して吠えるみすぼらしい犬ども」と評したことも紹介した。

 韓国側の自意識過剰と北朝鮮側の口汚さは相変わらずであるが、今回の談話で興味深いのは、表向きの対南部署が党統一戦線部から「第10局」になったことが確認されたことである。韓国と没交渉状態にありながらも党統一戦線部長だった張錦哲が外務第1次官に就任しているのは、敵国としての韓国を無視できない現実を反映している。なお、いずれの談話も『労働新聞』には掲載されなかった。

金正恩と王毅・中国外相が会談、双方とも「見解の一致」を表明せず

 8日付1面トップには、ベトナム共産党中央委員会のトー・ラム書記長が国家主席に選出されたことに際しての金正恩の祝電が掲載された。ベトナムでは、党書記長をトップとして、国家主席、首相、国会議長の「四柱」による集団指導体制がとられてきたが、ここにきてトー・ラムへの権力集中が目立っている。

カテゴリ: 政治
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執筆者プロフィール
礒﨑敦仁(いそざきあつひと) 慶應義塾大学教授。専門は北朝鮮政治外交。1975年生まれ。慶應義塾大学商学部中退。韓国・ソウル大学大学院博士課程に留学。在中国日本国大使館専門調査員、外務省第三国際情報官室専門分析員、警察大学校専門講師、米国・ジョージワシントン大学客員研究員、ウッドロー・ウィルソンセンター客員研究員など歴任。著書に『北朝鮮と観光』(毎日新聞出版)、『北朝鮮を読み解く』(時事通信社)、共著・編著に『最新版北朝鮮入門』(東洋経済新報社)、『北朝鮮を解剖する』(慶應義塾大学出版会)など。
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