イランの非対称戦が炙り出した「米国式航空戦」の脆弱性
Foresight World Watcher's 4 Tips
21時間に及んだという米国とイランの戦闘終結に向けた協議は合意に至らず。米国のJ・D・バンス副大統領は「最終的かつ最善」の合意案をイランに残したとされますが、交渉の再開は見通せません。4月8日(米東部時間7日)から2週間とされた停戦期間が切れる22日までに合意がなければ、停戦は破棄されると見られます。
ホルムズ海峡や核の問題について、双方の主張は平行線をたどっています。米側の要求が無条件降伏に近いものであり、一方でイランが原油価格高騰への対処を迫られながら中間選挙に向かうトランプ政権の足元を見ている限り、戦闘終結が訪れるとは考えにくい状況です。
米・イスラエルの圧倒的に高性能な戦力に対し、イランはドローンなど低コストで大量生産可能な兵器を中心にした「非対称戦」で抵抗しています。その戦略によってホルムズ海峡の封鎖という最大のカードを手に入れている格好ですが、同時に見逃せないのが湾岸諸国にある米軍基地への攻撃です。
イランによる米軍基地への攻撃は、ここまでどのような戦果を上げているのか。米「ウォー・オン・ザ・ロックス(WOTR)」に掲載された論考(詳細、後出)では、イランの攻撃が商用衛星からも見える固定位置のレーダー、野外に駐機されている空中給油機、数機しかないため代替が困難なで空中警戒管制システムなどに集中していることが示されます。その狙うところは、無防備な「航空戦力を支えるシステム」の破壊。米国はこの新たな航空戦に立ち遅れているだけでなく、「イランが弾道ミサイルや安価なドローンで実行してきたことを、中国ははるかに大規模かつ高度な形で実行しうる」とこの論考は指摘します。
他には、イランと米国の仲介に動くパキスタンの複雑な立ち位置、原油高の先に想定される米国の金利上昇が債務国と債権国に与えうる打撃(現在、低・中所得国が抱えるドル建て対外債務のうち、中国の融資分は約31%を占めるとのこと)、議会の空転が続く台湾の政治危機に関する記事もあわせ、フォーサイト編集部が熟読したい海外メディア記事4本。皆様もぜひご一緒に。
Pakistan Walks a Tightrope on Iran【Salman Masood/Foreign Policy/4月10日付】
「中東における根本的な対立構造を回避することは、かねてよりパキスタンの外交政策の柱となってきた。パキスタンはイランと長く不安定な国境を接している一方で、数百万人のパキスタン人労働者が湾岸諸国で生活し、その送金は脆弱な経済を支える一助となっている。パキスタンは特に、歴史的にイランと実務的な関係を維持しつつ、サウジアラビアとは非公式な経済・安全保障上の結びつきを深めてきた」
「しかし昨年9月、パキスタンとサウジアラビアは、両国の思惑の変化を示唆する相互防衛協定に署名した。この協定は、安全保障上の保証に加え、軍事協力、情報共有、戦略的協議を正式なものとしている」
「しかし、サウジアラビアへのコミットメントを再確認する一方で、パキスタンはこの広範な紛争において不可欠な仲介役としての立場を確立すべく、迅速に動き出した。パキスタンの仲介役としての役割と防衛協定は、相反する方向へと向かっているように見える。イランに対して『誠実な仲介者』を務めるには、目に見える形の中立性が求められるが、サウジアラビアとの協定は両国の連携を示唆しているからだ。しかし、パキスタンが仲介役として台頭できたのは、むしろこの防衛協定があったからこそなのかもしれない」
米「フォーリン・ポリシー(FP)」誌サイトに「イランをめぐって綱渡りに乗り出したパキスタン」(4月10日付)を寄せたのは、イスラマバードを拠点とするジャーナリスト、サルマン・マスード。パキスタンがイランと米国の調停役をなぜ、そしてどのように務めているかを、サウジアラビアという補助線を用いて、わかりやすく示してくれる。
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