語られ出した「誰がイラン攻撃の責任を負うべきか」

Foresight World Watcher's 5 Tips

執筆者:フォーサイト編集部 2026年3月29日
エリア: 中東 北米
上陸作戦は米軍を長期戦に引き込む可能性がある[中東派遣を控え強襲揚陸艦トリポリ艦上で訓練する米海兵隊第31遠征部隊=2026年3月28日](C)U.S. Marine Corps photo by Lance Cpl. Gerardo Mendez

 米・イスラエルによるイランへの攻撃開始から1カ月が経過しました。米国はイランに対して15項目からなる停戦条件を提示し、イランはこれを拒否したうえで、反対に5項目の条件を出したとされます。どちらの条件も合意に漕ぎつける可能性は低く、戦争の出口は依然として見えません。

 ただ、この戦争において米国は国内向けにも「戦果」を示す必要がある一方、イランは「負けなければ勝ち」という立場にあります。米国経済には原油高を通じたインフレ圧力が懸念され、まもなく中間選挙の予備選が本格化するトランプ政権は、時間軸を明確に意識せざるを得ない局面に入ります。イランは、米国の国内政治を人質にとっています。

 しかしながら、ペルシャ湾の島に対する米軍の上陸作戦は準備が進められており、これは仮に短期間での制圧に成功しても、そこへの駐留・占領はむしろ米軍を長期戦に引き込む可能性があります。最高指導層を次々に殺害されているイラン現体制が、さらに強硬姿勢を強めることも想定されるべきでしょう。

 この泥沼化リスクが、米政権内部にも波紋を広げるのは確実です。テネシー州メンフィスで26日に行われた政治イベントの席上、ドナルド・トランプ大統領がピート・ヘグセス国防長官に開戦の責任を転嫁するかのような発言をしたことがメディアの話題を集めましたが、それ以上に注目すべきは親イスラエル派で知られるマルコ・ルビオ国務長官の立場でしょう。

 英エコノミスト誌は、ルビオ氏は「もし(中東情勢の)事態が悪化すれば、より大きな批判にさらされることになる」と伝えています(詳細、後出)。ただ、MAGAの中核支持層の間ではむしろ評価を高めているようで、28日にCPAC(保守政治活動会議)が行った「2028年大統領選の非公式世論調査」では昨年よりも大幅に支持を伸ばし、J・D・バンス副大統領に次で2位に躍進しました。今は「トランプ後継」の座をバンス氏に譲り、大統領選でバンス氏が敗北した後、2032年の大統領選で勝利する目もあるとエコノミスト誌は見立てています。

 米国の対外関与の正統性が大きく揺らいで行く中で、誰がこの責任を負うべきなのかとの問いが提起されるのは、ある意味では当然と言うべきなのかもしれません。「イスラエル・ロビーが米政権を誤った方向に導いたのか?」という問いを立てたのは米フォーリン・ポリシー(FP)誌のスティーブン・M・ウォルト。米国の正統性が失われた先に現れる世界を、いまこそ具体的に想定せよとの切迫感が漂う論考が、増えているように思います。

 米国が唱えてきたアジア太平洋地域への軸足移動(ピボット)は、結局は幻のまま終わるのではないか。「トランプのアメリカ」が去った後の世界は、米国自身が略奪的な国家となり、国際秩序は無政府状態に突き落とされるのではないか―ー。日本にとっては徹底的に苛酷なビジョンになりますが、目をそらすことはできない議論をピックアップしました。

 フォーサイト編集部が熟読したい海外メディア記事5本。皆様もぜひご一緒に。

Marco Rubio, the chameleon in the war room【Economist/3月23日付】

「[米ドナルド・]トランプ政権の世界で頭角を現し、成功を収めるために、[国務長官マルコ・]ルビオ氏は冷酷であると同時にカメレオンのような適応力も求められてきた。上院議員時代、彼は超党派の移民制度改革(一部の不法移民を合法化するもの)や、ロシアに対する自衛のためウクライナへの武器供与を主導した。しかし今、彼が仕える主人は、大規模な強制送還を好む一方で、ウラジーミル・プーチンに対して好意を抱いている人物だ。彼の誠意を疑う声もある」
「彼を擁護する人々は、彼がトランプ氏の行き過ぎた言動を抑制していると主張する。欧州各国政府は、彼を政権内で数少ない「対応可能な」高官の一人と見なしている。[略]/昨年のミュンヘン安全保障会議で、[米副大統領J・D・]バンス氏は、[略]彼ら[欧州諸国の指導者たち]を震撼させた。今年、同会議でルビオ氏は、実質的に同じメッセージを伝えたが、それを第二次世界大戦で分かち合った犠牲や西洋文明への愛という表現で包み込んだ。演説はスタンディングオベーションを浴び――トランプ氏の注目も集めた」

 英「エコノミスト」誌の「マルコ・ルビオ――作戦司令室のカメレオン」(ワシントンDC発3月23日付)は、イスラエルと協調してイラク攻撃を進める米国の国務長官の姿を描くリポートとして出色だ。

カテゴリ: 軍事・防衛 政治
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