ロシア・ウクライナ戦争4年が示す「新たな限定戦争」の輪郭

Foresight World Watcher's 6 Tips

執筆者:フォーサイト編集部 2026年2月22日
エリア: ヨーロッパ

国連の最新データによれば、ウクライナ国土の約2割がロシアの占領下にあり、国内外で900万人を超える人々が避難を余儀なくされている[2026年2月21日、ウクライナ・リビウの墓地](C)EPA=時事

 米ロ間に残った最後の核軍縮条約である新START(新戦略兵器削減条約)が2月5日に失効しました。1972年にSALTⅠ(第1次戦略核兵器制限条約)とABM条約(弾道弾迎撃ミサイル制限条約)が締結されて以降、国際社会は初めて米ロ間に戦略核を制限する条約が存在しない状態を迎えています。

 これについて、核軍縮を放棄した米ロの責任を問うのも、もちろん重要な論点です。NPT(核拡散防止条約)体制は核兵器国が核軍縮に向けて誠実に交渉を行うことがひとつの柱。その“誠実さ”に対する信認は、非核保有国が「核を持たない合理性」の基盤そのものであるからです。

 ただ、一方で新STARTは、特にロシアによるウクライナへの全面侵攻以降、実質的にはその機能を失いました。2023年2月、ロシアは条約の履行停止を表明。米国による査察受け入れと情報共有も停止され、これはアメリカにとって、ロシアの一方的な核軍備増強を許しかねないことを意味したからです。

 このロシアの問題だけでなく、そもそも二国間で核軍備管理を行うことも現実的ではなくなりました。第三の核大国として台頭した中国は、米国防総省の推計では2030年に1000発を超える核弾頭を保有すると見られます。ドナルド・トランプ米大統領は、この中国を取り込んだ体制構築を目指しています。

 ロシア・ウクライナ戦争は、明後日2月24日でロシアの全面侵攻から丸4年が経過します。この戦争は、「ソ連崩壊後初めて、2つの主要核保有国が(たとえ間接的であっても)重大な敵対行為の対立陣営に立つことになった」と、米「フォーリン・アフェアーズ(FA)」誌掲載の論考は指摘します(詳細は下記にて)。ロシアによる度重なる核の威嚇も行われたこの4年で、核戦略にも少なからぬ新たな論点が浮上してきているようです。

 今回はロシア・ウクライナ戦争と核問題に焦点を当て、6本の記事・論考をピックアップしました。フォーサイト編集部が熟読したい海外メディア記事、皆様もよろしければご一緒に。

Ukraine and the New Way of War【Rebecca Lissner, John Kawika Warden/Foreign Affairs/雑誌版3・4月号、オンライン公開2月17日付】

「ロシアによるウクライナへの無差別な全面侵攻からほぼ4年が経過したが、この戦争は繰り返し予想を覆してきた。[略]第二次世界大戦後、欧州で最大の陸戦が激化するなか、将来の和平や停戦さえ不透明な状況下で、さらなる驚きが待ち受けていることは間違いない」
「すでに世界各国の軍はウクライナの戦場に注目し、最先端技術と戦術に未来の戦争に向けた新たな教訓を見出している。しかし、あまり注目されていないのは、この戦争がソ連崩壊後初めて、2つの主要核保有国が(たとえ間接的であっても)重大な敵対行為の対立陣営に立つことになったという戦略的教訓だ。米国は交戦国ではないものの、ワシントンとモスクワが紛争の行方を形作ることに深く関与しており、ひいては21世紀におけるエスカレーション、抑止、そして戦争遂行の進化する性質にも影響を及ぼしている」

 このように始まる「ウクライナと新たな戦争のあり方」が、FA誌の雑誌版最新3・4月号(オンライン公開2月17日付)に掲載され、注目を集めている。

 筆者は米外交問題評議会(CFR)上級研究員のレベッカ・リスナーと同ローレンス・リバモア国立研究所国際安全保障研究センター上級抑止アナリストのジョン・カウィカ・ワーデンで、彼らは「ワシントンは戦争の決着を待たずに包括的な評価を行うべきだ」として、ロシア・ウクライナ戦争について、すでに把握できている「4つの重要な教訓」を挙げる。

カテゴリ: 軍事・防衛
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