「欧州の自立」が世界を乱す日
Foresight World Watcher's 5 Tips
衆院選は本稿執筆現在で自民党の300議席超が確実とのこと。自民党にとっては小泉純一郎政権期や第二次安倍晋三政権期以上の歴史的大勝になりました。2月5日に自身のSNSで高市早苗首相と連立政権の支持を表明したドナルド・トランプ米大統領にとっては、青写真通りの展開です。
おそらく続投するであろう高市首相は、3月19日にホワイトハウスで日米首脳会談に臨みます。ここでは台湾問題を含むインド太平洋の安全保障環境、ウクライナ情勢や中東情勢など、さまざまな国際課題についての共通認識と協調が確認されることでしょう。
ただ、トランプ政権自身が国際秩序を揺さぶる現在、日米同盟は今までにない危うさを孕みつつあります。グリーンランドの「領有」問題は、同盟というものが突然の危機に晒されることをあらわにしました。米国はデンマークというNATO(北大西洋条約機構)加盟国の領土を手に入れるために軍事力行使も辞さないといい、欧州諸国もグリーンランドに軍事要員を派遣しました。北極圏の安全保障強化が名目ですが、米国に対して軍事力で阻止する構えで牽制したと解釈できます。
この欧州の行動によって、米国がグリーンランドを「領有」する政治的コストは一気に跳ね上がりました。その後のマーク・ルッテNATO事務総長との会談を境にトランプ大統領のグリーンランド熱は退潮しますが、そこに働いたのは「コストに見合わない」との判断のはずです。NATOという同盟の危機はひとまず去りましたが、同盟が維持されることの「メリット」ではなく同盟崩壊の「コスト」が同盟管理のテコとして使われたことで、米国と同盟諸国の関係は別次元の不安定な局面に入ったと言えるように思います。
それは欧州にとっては、いままで米国との協調を前提としたうえでの「欧州の自立」が、米国抜きの自立に置き換わることを意味するでしょう。欧州の「プランB」は、今後の国際秩序にどのような変化を与えうるのか。今回はこの問題を考えるうえで様々な示唆を与えてくれる論考を中心にピックアップしました。ロシアと欧州の接近やドイツの脅威化など、いずれも陰鬱なシナリオではありますが、日本の「プランB」を考えるうえでも貴重な示唆になっているように思われます。
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The Limits of Russian Power【Michael Kimmage, Hanna Notte/Foreign Affairs/2月5日付】
「2022年、ウクライナ侵攻を目前に控えたロシアは、世界的に見ればまずまずの立場にあった。中国とは強固なパートナーシップを築き、欧州とは広範な経済的結びつきを持ち、米国とは(緊張はあれど)機能する関係を維持し[略]ていた。[略]真の敵も少なく、近隣地域を超えて影響力を行使できた。ロシアは、台頭する勢力でも衰退する勢力でもなく、変幻自在な勢力だった」
「その後、ロシアはウクライナに侵攻した。これに対し、欧米諸国は即座にモスクワの敵対勢力となった。欧州における外交的影響力を大きく失ったクレムリンは、中国への依存度を大幅に高めた。一方、ロシアの注意力と軍事力のほぼ全ては戦争に吸い取られ、モスクワが遠方の情勢を操ることは難しくなった」
「結果として、シリアのバッシャール・アル=アサドやベネズエラのニコラス・マドゥロを含む同盟国の政権が次々と倒れるなか、クレムリンはほとんど手を打てなかった。戦争自体も特に順調とは言えない。4年に及ぶ戦闘の後も、ウクライナは国土の約80%を依然として支配下に置いている」
このように始まるのは、米「フォーリン・アフェアーズ(FA)」誌サイトに登場した「ロシアの力の限界」(2月5日付)。筆者は米ケナン研究所の所長、マイケル・キンメイジと同戦略国際問題研究所(CSIS)ジェームズ・マーチン・センターのユーラシア不拡散プログラム長、ハンナ・ノッテだ。
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