「今週のトランプ」ラウンドアップ
「今週のトランプ」ラウンドアップ (45)

トランプ大統領の発言とアクション(1月29日~2月6日):エプスタイン文書でクリントン夫妻を引きずり出した「共和党の賭け」

執筆者:安田佐和子 2026年2月7日
エリア: 北米
決定的事実が示されなければ、中間選挙で共和党に打撃となりかねない。そして、将来のトランプ大統領にとって厄介な“前例”にも[2024年5月23日、ホワイトハウスで開かれたケニア大統領との公式晩餐会に出席したクリントン夫妻](C)AFP=時事
トランプ大統領と政権キーパーソンから飛び出した発言を、ストリート・インサイツ代表取締役・安田佐和子氏がマーケットへの影響を中心に詳細解説。▼スターマー英首相も「マンデルソン問題」で窮地に▼トランプ氏がクリントン氏を“擁護”してみせる理由とは?▼総選挙前に“異例”の高市首相支援

 

スターマー英首相も「マンデルソン問題」で窮地に

 2月5日、ポンドドルは一時1.3518ドルと、前日比で1%近く下落した。背景には、英労働党の重鎮ピーター・マンデルソン前駐米英国大使と、性犯罪で起訴され勾留中に死亡した米富豪ジェフリー・エプスタイン元被告との関係がある。米司法省が1月30日に追加で公開したエプスタイン関連資料で、マンデルソン氏が政府の機密情報をエプスタイン氏に提供していた可能性が浮かび上がり、キア・スターマー英首相の任命責任が問われているのだ。

 スターマー氏は2月5日、「マンデルソンの嘘を信じて任命したことを申し訳なく思う」と謝罪した。しかしXには厳しい批判があふれ、スターマー氏の進退問題に発展しかねい勢いだ。「エプスタイン疑惑の嵐は、世界的指導者を失脚させる可能性があるが、それはトランプではない」――CNNが2月5日に配信したニュースのヘッドラインである。

 米国では、ドナルド・トランプ大統領が2月3日、記者団に「いい加減に決別すべき時だ」と述べ、スキャンダルの幕引きを試みた。エプスタイン関連資料にはトランプ氏の名前も含まれるが、この資料には、エプスタイン氏以外が違法行為に関わったことを示す証拠は含まれていない。ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)紙は、自身の所有するマールアラーゴ内のスパ施設従業員に対するエプスタイン氏の不適切なふるまいを知ったトランプ氏が、2003年に同氏を“出禁”にしたと伝えている。

 トランプ氏は自身の潔白が証明されたとの主張を繰り返し、「陰謀」が企てられたと強調することも忘れない。実際、関連資料にはメラニア・トランプ夫人や実業家のイーロン・マスク氏、ハワード・ラトニック商務長官、トランプ政権1期目で首席戦略官を務めたスティーブ・バノン氏などトランプ政権に縁の深い人々の名前が並んでおり、政治的なインパクトは大きいと言える。ただし、ビル・クリントン氏、バラク・オバマ政権の法務顧問など民主党の著名人も数多く確認できる。政治献金の傾向などで民主党色が強い、マイクロソフトのビル・ゲイツ氏の名前も記されている。

トランプ氏がクリントン氏を“擁護”してみせる理由とは?

 このエプスタイン問題は、昨年末に転機を迎えた。関連資料の大規模な公開に消極的な姿勢を示してきたトランプ氏が、11月19日に資料の全面公開を義務付ける法案に署名。これを受けて司法省は12月19日から公開を始めた。

 トランプ氏の姿勢が一変した理由は3つ考えられる。

カテゴリ: 政治
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執筆者プロフィール
安田佐和子(やすださわこ) ストリート・インサイツ代表取締役、経済アナリスト 世界各国の中銀政策およびマクロ経済担当の為替ライターの経験を経て、2005年からニューヨークに拠点を移し、金融・経済の最前線、ウォール街で取材活動に従事するかたわら、自身のブログ「My Big Apple NY」で現地ならではの情報も配信。2015年に帰国、三井物産戦略研究所にて北米経済担当の研究員、双日総合研究所で米国政治経済や経済安全保障などの上級主任/研究員を経て、株式会社ストリート・インサイツを設立。その他、トレーダムにて為替アンバサダー、計量サステナビリティ学機構にて第三者委員会委員、日本貴金属マーケット協会のフェローを務める。
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