米軍のベネズエラ攻撃「沈黙のレーダー」で意識される「中国本土」の脆弱性

IN-DEPTH【ニュースの深層】

執筆者:能勢伸之 2026年1月29日
エリア: アジア 北米 中南米
ベネズエラの防空網を無力化した詳細な手段は公表されていない[火の手が上がっている場所がマドゥロ大統領がいたフォート・ティウナ=2026年1月3日、ベネズエラ・カラカス](C)AFP=時事
米軍のベネズエラ攻撃では「F-22も探知可能」なはずの中国製対ステルスレーダー、JY-27Aが沈黙したことが注目される。JY-27レーダーはステルス機対策の要として、チベットやウイグル自治区など中国本土の外縁部にも優先的に配置されているとの報告がある。

ロシア製対空ミサイル・システムで固められた防空体制

 アメリカのピート・ヘグセス国防長官/戦争長官は、2026年1月5日、ベネズエラのニコラス・マドゥロ大統領夫妻(当時)を拘束したアメリカ軍の作戦について「ロシアの防空システムは、あまり効果を発揮しなかったようだ」(BREAKING DEFENSE 2026/1/6付)と総括した。そのマドゥロ大統領自身は2025年10月に、「重要な防空陣地」にロシア製の対空ミサイル5000発を配備している(同上)と同国の防空体制を強調していた。

 作戦実行前、「米戦争省は、マドゥロ大統領がカラカス南端の要塞地帯であるフォート・ティウナでかなりの時間を過ごしていると報告していた」が、「マドゥロ大統領の隠れ家までの間に最大75カ所の防空基地があった」(TWZ 2026/1/14付)という。これらの防空網を突破しなければ、マドゥロ大統領に近づけないということになる。どんな防空体制だったのか。

 ベネズエラは、大量のイグラ-S歩兵携帯式ミサイル(MANPAD)の他、S-300VM長距離地対空ミサイル・システム(最大射程250km)を12個中隊分、S-400長距離地対空ミサイル・システム、S-125対空ミサイル・システムを44個中隊分、そして「不明な数」のBuk-M2E中距離地対空ミサイル・システム(最大射程45㎞)も運用していることが知られていた(BREAKING DEFENSE 2026/1/6付およびミリタリーバランス2025年版)。これらはいずれも、ロシアが開発した兵器である。

 2026年1月3日現地午前2時に始まり、約3時間でマドゥロ大統領を逮捕して終了したとされる「Operation Absolute Resolve(断固たる決意作戦)」には、様々な機種の米軍機が150機も参加していたが、ベネズエラの重厚な防空体制にもかかわらず、1機も撃墜されなかった。

 前述のロシア製防空システムのひとつ、Buk-M2Eに至っては、米軍機を撃墜するどころか、「作戦後に撮影された画像から、アメリカ軍機が発射したAGM-88対レーダー・ミサイルやAGM-154C精密誘導グライダー爆弾」(TWZ 2026/1/14付)で破壊されていた、というのである。

陸海空軍と海兵隊が150機を投入

 アメリカ軍は、ベネズエラから約800km離れたプエルトリコのルーズベルト・ローズ基地に、様々な戦闘機や特殊作戦機を遅くとも去年(2025年)9月半ばから集め始めた。この基地は20年以上も使用されていなかったが、基地の外の高台からどんな航空機がいるか撮影できる場所だった。あるいは、アメリカ政府は意図的に見せつけていたのだろうか。

 その中には、F-22Aステルス戦闘機が少なくとも10機は含まれていた。

カテゴリ: 軍事・防衛
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執筆者プロフィール
能勢伸之(のせのぶゆき) 軍事ジャーナリスト。1958年京都市生まれ。早稲田大学第一文学部卒。報道局勤務、防衛問題担当が長く、1999年のコソボ紛争をベオグラードとNATO本部の双方で取材。著書は『ミサイル防衛』(新潮新書)、『東アジアの軍事情勢はこれからどうなるのか』(PHP新書)、『検証 日本着弾』(共著)、『防衛省』(新潮新書)、『極超音速ミサイル入門』(イカロス出版)など。
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