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バルト海と台湾周辺で海底ケーブルが意図的に切断されたと見られる事案が増えている。しかし、その意図は必ずしもはっきりせず、明確に処罰することも難しい。いわゆるグレーゾーン事態である。
多くの海底ケーブル切断事案は排他的経済水域(EEZ)で起こっている。沿岸国の領海内で起こればそれぞれの国の沿岸警備隊が切断した船を拿捕し、船長などを訴追することができる。しかし、国際法においては、公海やEEZで海底ケーブルの切断が起こった場合、それを処罰できるのはその船が登録されている国の政府である。
意図的と見られる海底ケーブル切断にこれまで関わって来た貨物船やタンカーの多くは、いわゆる便宜置籍船で、パナマ、キューバ、クック諸島などで登録されている。船の本当のオーナーは別の国におり、責任を果たそうとしない場合が多い。国際法の抜け穴を使って海底ケーブルを切断させていると見られる。
3台が積み込まれていた自動船舶識別装置
しかし、例外的に船長が逮捕され、3年の懲役刑が下された事案が台湾の台南で起きた。台湾にはいくつか離島があるが、澎湖諸島と本島側の台南を結ぶ海底ケーブルが、2025年2月25日に切断された。台湾の海上保安庁に当たる海巡(海洋委員会海巡署)が現場に行くと、不審な行動をしていた船が見つかった。船舶の自動船舶識別装置(AIS)の信号は宏泰(HONG TAI)58号を示していた。しかし、船は無線通信に対し自分たちは宏泰168号だと答えた。
船がケーブルを切ったのは真夜中だった。海巡の警備艇が船を止め、押し問答の末、ようやく船に乗り込めたのは6時間後で、その時にはすでに夜が明けていた。海巡は船でAISの装置を三つも見つけたという。場合に応じて発信する信号を切り替えていたようだ。
共同研究者と筆者は、この宏泰58号が台南の安平港に係留されているとの情報をつかみ、同港を訪問した。事前に調べたところ、Google Mapsでは上空からの船体の写真が見えていた。係留されているエリアは一般人が陸上から立ち入ることができなかったが、どうにか海上から近づくことができた。同船を間近で見ると、もともとHONG TAI 58と書かれていたが、58の部分が手書きで書き換えられ、168となっているのが確認できた。船はさび付いており、長く放置されていることがうかがえた。
ところが、日本のテレビ局が宏泰58号を現地取材した映像がニュース番組で放映された。それを見て筆者と共同研究者は違和感を持った。筆者たちが撮影した写真とニュース番組の映像、そして拿捕された時に撮影された写真を見比べたところ、筆者たちが間近で見たのは宏泰58号ではないことがわかった。二つの船は形状がよく似ているが、
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