トランプ大統領の発言とアクション(1月22日~30日):ドル安ショックとFRB議長人事で改めて明白になった「アキレス腱」
レートチェックで意識される「プラザ2.0」
大統領執務室に飾られる絵は、政権交代の象徴だ。ドナルド・トランプ氏は第7代大統領アンドリュー・ジャクソンの肖像画を外し、ひときわ大きな第40代大統領ロナルド・レーガンの肖像画に掛け替えた。これは、トランプ政権がレーガン流継承する姿勢を示すと解釈された。
米財務省は1月23日、ニューヨーク連銀を代理人としてレートチェックを実施した。これによる対円でのドル急落局面で、トランプ氏は「(ドル安は)すばらしい」と発言、ドル安容認と受け止められた。レーガン政権は1985年の「プラザ合意」によるドル高是正で歴史的転換点を作っている。市場関係者の間では、通貨政策もその範に倣うということで「プラザ合意2.0」を予想する向きも少なくない。
外交問題評議会(CFR)のシニア・フェロー、レベッカ・パターソン氏は「『マールアラーゴ合意』が現実のものとなりつつある」と指摘する。第2次トランプ政権でCEA(大統領経済諮問委員会)委員長に就き、現在はFRB(米連邦準備制度理事会)理事として大統領の意を体した大胆な利下げを唱えるスティーブン・ミラン氏は、政権発足前に「世界貿易システム再構築のためのユーザーズ・ガイド」と題する政策提言を発表している。ここに示された構想が「マールアラーゴ合意」と称されるが、このうち関税を世界経済秩序の再編に活用し、欧州にGDP(国内総生産)比5%への国防費引き上げを受け入れさせ、供給拡大によるエネルギー価格抑制を図る部分は実行された。次に着手されるのは、①ドル安誘導のための為替介入、②利回り上昇抑制のための財務省とFRBの緊密な連携、③対米投資への課税――とパターソン氏は予想する。
筆者は、①と③については懐疑的だ。スコット・ベッセント財務長官は1月28日、CNBCとのインタビューでドル売り・円買い介入を実施しているかとの質問に対し、「断じてない(absolutely not)」と明言。ただし、「介入を計画しているか」との問いには「強いドル政策を堅持している」と答えるのみで、コメントを避けた。現在進行形の介入は否定したが、未来の介入については含みを持たせたと言える。
ただし、これは円安是正を狙う高市早苗政権への配慮と考えられ、実際に協調介入を行うかは別の話だ。過去の例を踏まえれば米国が協調介入【チャート1】に踏み切る可能性は極めて低く、中間選挙を控え政治的合理性も乏しい。
ドル安進行で悲鳴を上げた欧州
対円でのドル安が進んだ結果、対ドルで相対的に上昇したのがユーロやスイスフラン(CHF)など欧州通貨である。ユーロドルは対円でのドル急落にトランプ発言が追い打ちとなり、1月27日に一時1.2083ドルと2021年6月以来のユーロ高・ドル安水準を記録。ドル・スイスフラン(CHF)は一時0.7604CHFと2011年8月以来のドル安・CHF高水準をつけた。
ユーロ高の加速に耐えかね、オーストリア中銀のマーティン・コッハー総裁は利下げの可能性に言及。ルイス・デギンドスECB副総裁は2025年7月、ユーロドルの1.20ドル超えは容認できない姿勢を打ち出していただけに、牽制球を放ったと言えよう。
ベッセント氏の介入否定発言は、トランプ氏のドル安容認発言の火消しを狙った、欧州への配慮とも受け止められる。
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