“弱体化したイラン”という脅威
Foresight World Watcher's 5 Tips
米・イスラエルのイラン攻撃から2週間余りが経過した現在、紛争は長期化する可能性が高まっています。イランは湾岸諸国への攻撃やホルムズ海峡封鎖で「世界を巻き込む」戦略と見られますが、「イランの軍事ドクトリンはそもそも長期消耗戦を得意としている」と中東情勢に詳しい滋野井公季氏は指摘します。それはつまり、ミサイルによる攻撃が限界に来ても、革命防衛隊やその国民動員組織であるバシージなどによる局地戦、あるいはテロなどの形で戦闘が継続されることを意味するでしょう。
当面の焦点は、米・イスラエルの迎撃能力と、ミサイルやドローンを使ったイランの攻撃能力のどちらが先に物量的限界を迎えるかです。そして米・イスラエルが上陸作戦に踏み切れば、上記の局地戦化シナリオが浮上します。また、この場合は戦場がイランに留まらないことも念頭に置く必要がありそうです。米海軍大学院准教授のアフション・オストーバル氏は、米「フォーリン・アフェアーズ(FA)」誌サイトへの寄稿で「政権は第三国に居住するアメリカ人、イスラエル人、カナダ人、あるいは欧州諸国人に対して、一連の報復攻撃を仕掛ける可能性がある」と警告しました。
この低強度の攻撃を長期に継続する“弱体化したイラン”は、目下、戦争初動の成果で国民からの支持を高めるイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相に、再び大きな懸念をもたらすでしょう。他方、イスラエルは今年後半に総選挙を控えます。そして米トランプ政権は、11月に中間選挙を控えます。米・イスラエルは国内政治の要因からも、早く“結果”を確定させなければなりません。イラン最高指導者の衝撃的な殺害から始まったこの戦争は、体制転換をめぐる争いからいわば「時間軸をめぐる争い」へと、その様相を変えつつあります。
今週はこの混乱長期化シナリオを念頭に、注目記事5本をピックアップしました。イラン、イスラエル、米国だけでなく、世界経済への影響やロシアにとってこの戦争が意味するもの、いまや非対称戦の主役となったドローン生産で台湾に起きている変化も取り上げます。
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Israel After the Iran War【Shira Efron/Foreign Affairs/3月6日付】
「1月当時、彼[イスラエルのネタニヤフ首相]は、2023年10月7日のハマスによる攻撃に先立つ政府の安全保障上の失態に対する責任追及の声の高まり、汚職裁判、そして今年後半に予定されている総選挙で連立政権が議席を失う可能性が高いことを示唆する世論調査といった課題に直面していた。イランに対する軍事作戦は、差し迫った脅威からイスラエルを救うだけでなく、ネタニヤフの権力基盤を立て直すことにもつながるかもしれない」
「火曜[3月3日]、ネタニヤフ内閣の閣僚、ギラ・ガムリエルは、首相がイスラエルの総選挙を6月か7月に前倒しする方針である可能性を示唆した。また、『ハアレツ』は、匿名の[与党]リクード党関係者の話として、首相の目標は、戦争の初期の成功を政治的に利用することにあると報じた。ネタニヤフはすでに選挙モードに突入しており、同じ日、国内の他の地域がロックダウン下にあったにもかかわらず、エルサレムの有名な公の場、イェシーバ[神学校]で祈りを捧げた」
FA誌サイトに登場した「イラン戦争後のイスラエル」(3月6日付)は、タイトルどおり刺激的な論考だ。筆者である同ランド研究所のイスラエル政策担当特別チェア兼上級研究員、シーラ・エフロンはまず、今回のイラン戦争がネタニヤフにとって、「決定的な局面における『天の恵み』となっている」と指摘した後、次のように続ける。
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