「アメリカのためのゴールデン・ドーム」(GDA)構想は、第2次トランプ政権によって、国防上の最優先事項の一つとして進められている。GDAは弾道ミサイル、極超音速滑空体(HGV)、巡航ミサイル、部分軌道爆撃システム(FOBS)といった拡大・高度化する経空脅威から米国本土を防衛することを第一の目的としている。
同時に、GDAは世界各地に展開する米軍部隊や同盟国の防衛も念頭に置いた取り組みであり、今後、日本を含む同盟国との協力が進むと考えられる。日本は現行の戦略三文書(国家安全保障戦略、国家防衛戦略、防衛力整備計画)に基づき統合防空ミサイル防衛(IAMD)能力の強化を進めてきたが、日米協力のゆくえは本年末の戦略三文書の改定にも影響を与える。
以下では、まず、GDAはどのような構想なのか、これまでにどういった取り組みが行われ、また今後見込まれるのかを概観する。その上で、日米間でどのような協力が想定されるのか、戦略三文書の見直しにはどのように反映され得るのかを検討したい。
「アメリカのためのゴールデン・ドーム」構想とは何か?
GDAの始まりは、政権発足から間もない2025年1月27日発出の大統領令「アメリカのためのアイアン・ドーム」である。アイアン・ドームはイスラエルの防空システムの名称であり、ハマスから撃ち込まれるロケット弾などの迎撃に用いられてきた。大統領令は、こうしたイスラエルの取り組みも念頭に、経空脅威に対する米国の対処能力を抜本的に強化することを指示したものである。ただし、大統領令発出の翌月には、構想の名称がGDAに変更され現在に至っている。
大統領令の中身は野心的である。現在の米本土ミサイル防衛システムは、北朝鮮といった「ならず者国家」の脅威や、偶発的または無許可の発射に対処することを目的としている。ロシアや中国の大規模かつ高度な弾道ミサイルの脅威に対処する能力はなく、こうした脅威への対応は核兵器を中核とする戦略抑止に依存する方針を米国はとってきた。しかし、大統領令では「ならず者国家」のみならず、中国やロシアといった同等・準同等な敵対者からの経空攻撃にも対処するミサイル防衛シールドの構築が掲げられた。また、現状の米本土ミサイル防衛システムはミッドコース段階とターミナル段階での迎撃に手段が限られているが、GDAでは宇宙に迎撃手段を配備することでミサイル発射直後のブースト段階での対処も目指している。
GDAは発射後対処のみならず発射前対処を含む取り組みである。大統領令には、地上・海上の移動目標を探知・追尾する宇宙配備センサーや、発射前のミサイルを無力化する能力の開発・配備が列挙されている。
このようにGDAは包括的な構想である。まずミサイルが発射される前に対処し、発射されてしまった場合はブースト段階、ミッドコース段階、ターミナル段階という順に多層的に対応する能力を構築することとしている。
取り組みの現状と見通しは?
ドナルド・トランプ大統領は2025年5月にホワイトハウスでGDAについて演説した。この中で大統領は戦略防衛構想を念頭にロナルド・レーガン大統領がなし得なかったことを実現すると述べ、任期終了までにGDAの完全運用を始めること、GDAの全体費用は1750億ドルとなることを明らかにした。
同年7月に成立した予算調整法(One Big Beautiful Bill Act)では初期費用としてGDAに244億ドルが割り当てられた。同じく7月にマイケル・グートライン(Michael Guetlein)宇宙軍大将が国防副長官直属の責任者として上院で承認された。
これ以降、グートライン大将を長とするGDA室が構想の具体化を進めているが、現在に至るまでアーキテクチャの全容は公表されていない。2026年1月にグートライン大将はアーキテクチャの詳細は機密扱いのままであり、産業界とは個別にやり取りしていると述べた。その理由について同氏は、自身の就任後に防衛産業基盤への外国からのサイバー攻撃が始まったことを挙げている。
とはいえ、グートライン大将は取り組みの大まかな見通しを示している。
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