「憲法改正」で歴史に名を残したい高市総理、パートナー役の「吉村大阪府知事」は来春以降に国政復帰か

執筆者:永田象山 2026年4月28日
自民幹部の電話に出ないことがあるという高市も、吉村とのホットラインは大切にしているようだ[自民党大会で歓談する総理と吉村代表=2026年4月12日](YouTube『吉村洋文チャンネル』より)
「改正の発議だけでも歴史に名が残る」と言われることもあり、高市総理は本気で憲法改正を目指している。そのためには2027年秋の自民党総裁選で再選を果たし、2028年夏の参院選で3分の2以上の改憲勢力を確保する必要がある。必ずしも党内に味方が多くない総理は、連立相手の維新を改憲のパートナーとして重視している。

 

高支持率でも地方選に目立つ「取りこぼし」

 高市早苗が内閣総理大臣に就任して半年が過ぎた。依然、内閣支持率は好調だ。今月(4月)の各報道機関の世論調査を比較しても、朝日新聞64%(不支持率24%)、読売新聞66%(不支持率24%)、NHK61%(不支持率22%)と軒並み6割を超えている。発足から半年たってもこれだけの支持率を維持するのは驚異的だ。

 総理官邸の幹部の1人は「イラン問題に端を発した原油価格高騰に対してもしっかりスピード感を以て対応したことの評価だろう」と、政府のガソリン価格維持などの政策への信頼と自画自賛する。一方、自民党のある大臣経験者は「理由が全く判明しない」と首をかしげ、具体的な成果というよりも、高市本人の所作やキャラクター、女性初の総理などという要素が支持につながっているとの見立てを示す。

 しかし、高い支持率とは裏腹に、自民党は衆院選挙で大勝して以降、地方選挙での取りこぼしが目立つ。 3月8日投開票の石川県知事選挙では高市本人が応援に駆けつけたにもかかわらず、現職知事の馳浩が前金沢市長に敗れた。また、東京の清瀬市の市長選挙(3月29日投開票)では、自民党と公明党が推薦した現職の候補が共産党と社民党が推薦した新人候補に敗れた。

 さらに与党の関係者が頭を抱えたのは4月12日投開票の練馬区長選挙だ。自民党が推薦したのは小池百合子都知事の元秘書という経歴を持つ尾島紘平前都議だ。自民と日本維新の会、都民ファーストの会、国民民主党の推薦を得て、小池知事も本人が応援に入る力の入れようだったことから“尾島優位”というのが大方の見方だった。しかし、結果は無所属の新人・吉田健一に3万票以上の差をつけられ大敗を喫した。

 吉田は「完全無所属」を前面に押し出して今回の選挙戦を展開したが、4年前の練馬区長選挙では立憲民主党などの野党系の推薦を得ていた。こうしたことから高市に近い与党幹部は「練馬は立憲に負けたようなもの」とこぼす有様だ。

「憲法改正実現議連」の本気度は?

 練馬区長選挙の当日、自民党は党大会を開いていた。

高市「今年いくつの公約を実現できたのか、来年いくつの公約を実現できるのか。それが党勢の拡大、そして本年控える各級選挙をはじめ、来年の統一地方選挙、再来年の参院選挙での自民党への信頼につながります」(4月12日自民党大会のあいさつ)

 全国から集まった党員を前に、高市は今後の選挙を勝ち抜くことを訴えた。高市は何を目指しているのか。その一端が垣間見える発言を口にした。

高市「立党から70年、時は来ました。憲法改正に向け、党員・党友の皆様の総力を挙げ全国各地で国民の皆様への憲法に関する説明を行うとともに、国会においては、結論のための議論を進めてまいりましょう。改正の発議についてなんとか目途が立ったと言える状態で、皆様と来年の党大会を迎えたい」

 憲法改正の発議に向けて意欲を見せる高市。高市周辺も「総理は憲法改正に並々ならぬ意欲を持っている」と漏らす。国会の動きも急を告げ始めている。衆議院の憲法審査会では4月23日に、大規模災害が発生するなどの緊急事態を想定して通常とは異なる権力行使を可能にする、いわゆる「緊急事態条項」について集中討論を行った。

「緊急事態条項」の必要性には自民、維新の与党だけでなく、国民民主、チームみらいなどの野党も理解を示している。同条項をきっかけに本格的な改憲論議の口火を切りたいという与党側の意向も窺える。また「少数与党」に苦しむ参院では、高市の応援団長的な存在である中曽根弘文元外務大臣が中心となって「憲法改正実現議員連盟」を立ち上げた。初会合には参議院自民党に所属する議員ら80人以上が参集した。

 参議院の自民党は石井準一参院幹事長が事実上取り仕切っている。石井は今年度予算の年度内成立にこだわる高市の意向をよそに、「参院の独立」を盾に野党の会派との調整を優先させた。結果、予算成立は年度内に間に合わず、11年振りの暫定予算を組むことになった。

 中曽根らの議連結成は、高市が「最後までこだわった」(与党幹部)という年度内成立を阻んだ石井への当てつけという見方もある。だが、筆者は高市や中曽根、衆院憲法審査会の会長を務める古屋圭司らの憲法改正に対する意欲は本物だと見ている。

「公明党が抜けてくれて良かった」

 関係者によれば、高市は自民党の西村康稔選挙対策委員長ら幹部に対して「地方選挙は全て勝つつもりで行け」と指示を出しているという。

 衆議院だけでなく参議院でも3分の2以上の改憲勢力を確保しなければ、憲法改正のための発議ができない。そして、その先には国民投票が待ち構えている。憲法改正の発議をした日から60日から180日の間に18歳以上の有権者による国民投票を行い、過半数の賛成を獲得できれば憲法改正は実現する。

カテゴリ: 政治
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執筆者プロフィール
永田象山(ながたしょうざん) 政治ジャーナリスト
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