フランス・ドイツ・スペイン3カ国による将来戦闘航空システム(FCAS=Future Combat Air System)計画の行き詰まりは本連載でも度々取り上げてきたが、紛糾の主因である仏独の対立は収拾する気配もなく、ドイツ政府は業を煮やしたかのように、FCASに見切りをつけ、代わりのプロジェクトへの参加を視野に舵を切りつつある。
ドイツが照準を定める代替候補は日本がイギリス、イタリアと取り組んでいる次期戦闘機共同開発計画「グローバル戦闘航空プログラム(GCAP=Global Combat Air Programme)」のようだ。
独の“GCAP乗り換え”を歓迎する側の開発費問題
2026年2月5日、独有力日刊紙フランクフルター・アルゲマイネ・ツァイトゥング電子版は「フランスとの共同戦闘機プロジェクトが中止の危機に瀕しているため、ベルリン(ドイツ政府)は競合プロジェクトへの乗り替えを検討している」と報じた。文中の“競合プロジェクト(Konkurrenzprojekt)”とはGCAPを指しており、この記事の内容は翌6日以降に日本国内でも報じられたが、FCASの崩壊危機が昨年秋に表面化して以来、既に“ドイツの乗り替え”が欧州の政官界や防衛産業関係者の間で大いに関心を呼んでいた。
例えば、GCAP主導国の一角であるイタリア。昨年12月の国会答弁で国防相グイード・クロセット(1963年生まれ)は「フランスとドイツの戦闘機開発は失敗した」とした上で、GCAPについて「参画を望む国が道筋を把握できる条件を整えている」と新たなパートナーを迎える際のルール作りを進めていることを説明。参加国が拡大すれば「全体の投資額は増える一方、私たちの負担は軽くなる」とドイツの乗り替えを歓迎する意向を匂わせた(2月17日付共同記事)。
言うまでもなく、防衛装備品開発の「投資と負担」は政府と納税者にとって重大な関心事である。2026年の年明けにイタリア上院防衛委員会に送付された文書によると、GCAPの設計・開発におけるイタリアの負担額は2021年に示された60億ユーロ(約1.09兆円)から186億ユーロ(約3.38兆円)に増大した。
イタリア第2野党の五つ星運動は「これは軍史上最も高額なプログラムであり、90機の戦闘機に180億ユーロが費やされた『F-35』を上回る」と警鐘を鳴らしている(1月20日付米国防・安全保障専門誌ディフェンス・ニュース)。ちなみに、イタリアは2015年から米ロッキード・マーチン社が中心になって開発した戦闘機「F-35」の配備を開始。伊防衛大手レオナルド社が北部ノヴァーラ県カメリにある工場でノックダウン生産しており、2024年に調達数を当初計画の90機から115機に拡大した。
実は、GCAPの開発費総額(見積額)は公表されていない。ただ、共同開発3カ国の費用分担について「日4:英4:伊2」と報道(2023年3月16日付ロイターなど)され、それを先のイタリア上院へ送付された文書の数字(総額の2割である伊の負担額60億ユーロ→186億ユーロ)に当て嵌めると、開発費総額は当所見積もりの300億ユーロ(約5.46兆円)から直近では930億ユーロ(約16.93兆円)に膨らんでいると推計される。
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