欧州航空産業編[下]:エアバスとボーイング「内製化」回帰の厄介な背景

執筆者:安西巧 2026年1月22日
タグ: マネジメント
エリア: 北米 ヨーロッパ
エアバスの主要サプライヤーを国別に分ければ米国企業が最多になる(C)Dominika Zarzycka/NurPhoto via Reuters Connect
生産部門のアウトソーシングを進めた世界2大航空機メーカーが、揃って「内製」への方向転換を見せている。背景にあるのはサプライヤーの品質管理問題だ。ボーイングはかつて分社したTier1サプライヤーを再買収、エアバスも子会社の主要工場を本体直轄下に再編した。いずれも監督強化が狙いだが、調達先が世界に広がるのは機体の市場開拓と表裏一体、一筋縄ではいかない構図がある。

 欧州の航空産業は2026年も難題山積で乱気流さながらの状況からなかなか抜け出せそうにない。軍用機分野では、昨秋表面化したフランス・ドイツ・スペイン3カ国による将来戦闘航空システム「FCAS」の共同開発を巡る仏ダッソー・アビエーションと独エアバス・ディフェンス&スペース(エアバスD&S)の対立は打開の兆しがなく、世界の注目を集めている次世代主力戦闘機開発は暗礁に乗り上げている。

 一方、民間航空機分野でも、欧州エアバスではベストセラー機種「A320」系航空機を巡る緊急のソフトウェア修正や機体用金属パネルの欠陥といったトラブルが2025年末に続発。金属パネル問題について、エアバスは主要サプライヤー(部品・部材供給メーカー)であるドイツ子会社に対する工程管理を強化するなど、アウトソーシング化を進めてきた創業以来の姿勢から「内製回帰」へ軌道修正を余儀なくされている。

「サプライヤーの品質問題」で株価急落

 欧州エアバスで相次いだトラブルとは、まず2025年11月28日に公表した「運航者向け警告伝達(AOT)」。太陽フレア(強力な電磁波や高エネルギー粒子を放出する現象)の影響から、同社製小型機「A320neo」などA320系航空機の機体の一部で飛行制御に必要なデータが破損する可能性があるとして、世界の航空会社が保有する約6000機を対象に飛行制御コンピューターのソフトウェア更新(バージョンを1段階戻す操作)を緊急で実施するよう求めた。

  日本国内でも、保有37機中34機が該当した全日本空輸(ANA)で11月29〜30日に国内線101便が欠航する影響が出たが、12月1日にエアバスは全対象機約6000機の大半の対応が完了し、未改修機は残り100機を切ったと報告。混乱は短期間で収まった。

 この「ソフトウェア更新完了にメド」と通知したのと同じ12月1日に表面化したのが金属パネル問題だ。エアバスはこの日「A320」の一部の機体に使用している胴体パネルについて「サプライヤーの品質問題」が生じていると公表した。

カテゴリ: 経済・ビジネス
フォーサイト最新記事のお知らせを受け取れます。
執筆者プロフィール
安西巧(あんざいたくみ) ジャーナリスト 1959年福岡県北九州市生まれ。1983年早稲田大学政治経済学部政治学科卒、日本経済新聞社入社。主に企業取材の第一線で記者活動。広島支局長、編集委員などを歴任し、2024年フリーに。フォーサイトでは「杜耕次」のペンネームでも執筆。著書に『経団連 落日の財界総本山』『広島はすごい』『マツダとカープ 松田ファミリーの100年史』(以上、新潮社)、『さらば国策産業 電力改革450日の迷走』『ソニー&松下 失われたDNA』『西武争奪 資産2兆円をめぐる攻防』『歴史に学ぶ プロ野球16球団拡大構想』(以上、日本経済新聞出版)など。
  • 24時間
  • 1週間
  • f
back to top