フーシー派はどこまで「代理勢力」か――「イラン以外」との関係強化がイランのレジリエンスに寄与する構図

執筆者:吉田智聡 2026年4月16日
タグ: イラン
エリア: 中東
フーシー派はイランのエスカレーション・ラダーに組み込まれている[イランとレバノンへの連帯を示す集会で武器を掲げるフーシー派支持者=2026年4月10日、イエメン・サナア](C)AFP=時事
イエメン内戦におけるフーシー派の軍事的優位はイランの支援によるところが大きい。ただし一方、フーシー派はイラン依存のリスクも認識し、中国にフロント企業を置くなど組織ネットワークの多角化を進めてきた。この独自のサプライチェーンは今回の戦争で、イランの抵抗力にプラスの要素として作用すると考えられる。フーシー派には米国、サウディアラビアとの決定的関係悪化を回避したい動機があるものの、紅海方面の圧力やGCC諸国に対する抑止として、イランの戦略を支える可能性が高いだろう。フーシー派がとりうる軍事オプションを検証する。

 2026年2月28日に米国とイスラエルがイランに対する攻撃を開始すると、イラクの諸武装組織から成る「イラク・イスラーム抵抗」は同日に、レバノンの「ヒズブッラー(ヒズボラ)」は3月2日にイラン側で参戦した。これらのいわゆる「親イラン勢力」が在イラク米軍やイスラエルに対して攻撃を行う中、イエメンの「フーシー派(フーシ派)」は1カ月にわたり参戦せず、事実上の沈黙を貫いていた。しかし3月28日に参戦を宣言すると、同派は4月6日までに計6回の軍事作戦を実施し、ミサイルやUAV(無人航空機)を用いてイスラエル領への攻撃を開始した。

 フーシー派が注目を集めている理由は、イスラエル領への攻撃ではなく、紅海封鎖を行い得る能力を保有しているためである。イランがホルムズ海峡を事実上封鎖する中、サウディアラビアは東西パイプラインを用いた同国西部ヤンブーからの原油輸出代替路に切り替えている。仮に紅海が封鎖された場合、その経済的影響は甚大なものとなることが予想される。そうしたリスクを考えるうえで、フーシー派はイランとどういった関係にある組織なのか、同派はどのような軍事的オプションを保有しているのかといった点を理解する必要があり、本稿は以下でそれらの問いに答えていきたい。

フーシー派とイランの関係:深化する相互依存

 フーシー派とイランの関係は、現代イエメン研究の1つのテーマであり、これまで様々な見解が示されてきた。大別すると、①ヒズブッラーなどと比較して同派が自律的なアクターであり、それゆえに独自の戦略に基づいて行動する傾向にあるとみなすものと、②イランと同派の結びつきの深まりに注目し、イランの戦略の中で役割を果たす傾向が強まっているとみなすものに分かれる。

 筆者はイエメン内戦やガザ紛争による相互依存の深化とフーシー派内部の変化から、後者の見解を支持している。2015年から11年続くイエメン内戦において、同派は軍事的優位性を確保しているが、これはイランの支援によるところが大きい。換言すると、同派の勢力維持や生存にはイランからの支援が不可欠であり、同派の行動はイランとの関係に一定程度の制約を受ける。また、ガザ紛争を経てハマースやヒズブッラーに大きな損害を与えることに成功し、シリアでアサド政権が崩壊した結果、イスラエルはイランを直接攻撃するようになった。この変化は、イランの目線では「抵抗の枢軸」におけるフーシー派の重要性が増し、同派の目線では支援元のイランを自ら支援する必要性が高まったことを意味する。同派は極超音速とみられるミサイルにクラスター弾を搭載してイスラエルを攻撃するようになったが、これはガザ紛争が始まってからであり、イランが積極的に同派に最新の高性能装備を移転している様子が窺われる。

 フーシー派内部の変化も見逃せない。

カテゴリ: 軍事・防衛
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執筆者プロフィール
吉田智聡(よしだともあき) 防衛省防衛研究所研究員、笹川平和財団和平調停センターフェロー 1996年奈良県生。専門は湾岸諸国およびイエメンの安全保障、現代イエメン政治、フーシー派の政治・軍事戦略。京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科博士課程(5年一貫制)修士号取得退学。株式会社大和総研経済調査部研究員を経て、2021年より現職。
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