胎動するゲームチェンジャー「南鳥島レアアース泥」――脱中国はなぜ進まないのか|中村謙太郎・東京大学エネルギー・資源フロンティアセンター長(2)
長野光と関瑶子のビデオクリエイター・ユニットが、現代のキーワードを掘り下げるYouTubeチャンネル「Point Alpha」。今回は、レアアースのサプライチェーンにおける中国の優位性と新たなサプライチェーン構築の難易度について、東京大学大学院工学系研究科附属エネルギー・資源フロンティアセンター長の中村謙太郎氏に話を聞いた。 ※主な発言を抜粋・編集してあります。
「中東に石油あり、中国にレアアースあり」と語った鄧小平
——世界のレアアース産業は、どのような国が強みを発揮しているのでしょうか。
「レアアース採掘という観点では、中国が世界シェアの約70%を握っています。さらに、精錬プロセスでは、シェアは90%以上にのぼります。長らく中国が支配的な地位にあると言えるでしょう」
——なぜ、レアアース産業は中国依存の状態に陥ったのですか。
「レアアース産業が中国に依存している背景には、まず、レアアース資源が豊富にあるという中国の地質学的な特徴があります。現在確認されているだけで、中国国内のレアアース埋蔵量は世界の約半分、国別埋蔵量で世界第一位です」
「加えて、中国はかなり早い段階からレアアースという資源の可能性に着目していました。1992年に、当時の最高実力者・鄧小平が『中東有石油、中国有稀土(中東に石油あり、中国にレアアースあり)』と、将来的にレアアースが石油に匹敵する戦略物資となることを予見し、積極的な開発を行う姿勢を打ち出しました。その後、中国はレアアースで世界の覇権を握ることに成功しました。国の戦略が功を奏したと言えるでしょう」
「また、レアアース鉱石は、レアアースとともにウランやトリウムなどの放射性元素を含みます。精錬してレアアースを取り出した後に残るウランやトリウムを含む残渣は不要ですので、放射性廃棄物の問題が生じます」
「本来、放射性廃棄物の処理には、厳格な環境基準のもとで長期的かつ高コストの対応が求められます。処理施設の整備や廃棄時および廃棄後の安全管理には多額の資金が必要です。これが、レアアースの生産コストを押し上げる要因となります」
「しかし、中国はこうした環境負荷に関する規制を、他国と比較して緩やかに運用し、放射性廃棄物処理にかかるコストを抑制してきました。その結果、低価格でのレアアース供給を可能にし、世界シェアで圧倒的な競争力を確立することに成功しました」
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