人は「地上の太陽」を手にするか 核融合発電の現在地――「3つの技術的課題」と「安全性」|江尻晶・東京大学大学院新領域創成科学研究科教授(2)
長野光と関瑶子のビデオクリエイター・ユニットが、現代のキーワードを掘り下げるYouTubeチャンネル「Point Alpha」。今回は、核融合発電が直面する課題や安全性の評価について、東京大学大学院新領域創成科学研究科教授の江尻晶氏に話を聞いた。 ※主な発言を抜粋・編集してあります。
3つのハードル超えにアカデミア、メーカー、スタートアップが取り組む
——核融合発電の技術的なハードルはどこにあるのでしょうか。
「まず、中性子に対して高い耐久性を有する素材の開発です。核融合反応では、超高速の中性子が発生します。中性子は電荷を持たないため、プラズマのように磁場で制御することはできません。そのため、四方八方に飛び散り、装置の壁に衝突して壁材を劣化させます」
「壁材の定期的な交換が必須ですが、交換頻度が高すぎればコストがかかります。どの程度耐久性を持たせ、どのタイミングで交換するのが最適か。コストと耐久性のバランスを踏まえた材料設計が求められています」
「次に、プラズマの不安定さです。プラズマは、電気を帯びた気体で、特に高温プラズマでは、様々な乱れが発生します。予期しない乱れが生じると、熱が一気に逃げて冷えてしまったり、装置の壁に接触して装置そのものを損傷させかねません。そうなれば、核融合反応は即座に停止します」
「現在、磁場閉じ込め方式の核融合実験において、1000秒を超える放電時間(※)が実験的に達成されています。今後は、それ以上の時間にわたり、いかにして同じようにプラズマを安定状態で維持するのかが課題となります」
(※)プラズマに電流を流し、核融合反応が起こりうる状態を保っている連続時間
「最後は、核融合発電が本当に『発電所』として成立するのか、という問題です。24時間連続で安定した運転ができるのか、定期点検や設備更新を含めた運用が可能なのか、投資したコストを回収できるのか。これらを総合的に評価してはじめて、発電所として商用化のステージに持っていくことができます」
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