ポイント・アルファ
ポイント・アルファ (31)

人は「地上の太陽」を手にするか 核融合発電の現在地――「あと20年」で実現可能?|江尻晶・東京大学大学院新領域創成科学研究科教授(1)

執筆者:関瑶子 2026年3月4日
タグ: 日本 脱炭素
しばしば原子力発電と混同されるが、核融合発電は太陽で起きている反応を応用する全く別の技術である。1950年代から夢のエネルギーとして多くの期待を集めつつ、これまで幾多の技術的困難に直面した。だが、AI普及による電力需要急拡大を見越して各国ベンチャーも実験炉建設に乗りだすなど、研究は新たなフェーズを迎えている。政府の日本成長戦略会議も官民連携投資を具体化する議論を開始した。「地上の太陽」はいま、人の手にどこまで近づいているのだろうか。(聞き手:関瑶子)

 長野光と関瑶子のビデオクリエイター・ユニットが、現代のキーワードを掘り下げるYouTubeチャンネル「Point Alpha」。今回は、核融合発電のメカニズム、実用化に近い技術、実用化までの期間などについて、東京大学大学院新領域創成科学研究科教授の江尻晶氏に話を聞いた。 ※主な発言を抜粋・編集してあります。

国際情勢の影響を受けにくいエネルギー

——次世代の発電方式として「核融合発電」が実現した場合、日本のエネルギー事情にどのようなインパクトがあるのでしょうか。

「現在、国際政治や地政学的な緊張に、日本の燃料価格は大きく左右される構造になっています。そのため電気代がどの程度で推移するのか、先を見通すのが非常に難しいという問題を抱えています」

「核融合発電の実現は、純国産のエネルギーを安定的に生み出す可能性を秘めています。エネルギー安全保障の観点から、国際情勢の影響を受けにくい『自前のエネルギー』の安定的な確保に直結するのです」

「国産エネルギーという点では、風力発電や太陽光発電といった再生可能エネルギーも重要です。ただ、日本は地形や気候条件の制約が大きく、それだけで電力需要を賄うのは簡単ではありません」

「そのような意味で、核融合発電は国産エネルギーを補完・強化する選択肢の一つとなり得ると考えています」

「さらに、核融合反応により、医療用RI(ラジオアイソトープ:放射性同位体)の製造も可能になります。現在、日本は医療用RIの大半を輸入に依存しています。核融合反応は、エネルギーだけでなく医療の面でも日本社会に大きな恩恵を与えると期待しています」

原子力発電との共通点と相違点

——核融合発電と原子力発電の違いは?

カテゴリ: 環境・エネルギー
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執筆者プロフィール
関瑶子(せきようこ) ライター・ビデオクリエイター 早稲田大学大学院創造理工学研究科修士課程修了。素材メーカーの研究開発部門・営業企画部門、市場調査会社、外資系コンサルティング会社を経て独立。You Tubeチャンネル「著者が語る」の運営に参画中。
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