対ウクライナ関係:「親ウクライナ」ではないティサ
オルバーン政権は、2014年以降のウクライナによる言語政策に反対するなど、同国との対立を深めてきた。2022年にロシア・ウクライナ戦争が勃発して以降、オルバーン政権は国内における権力維持の手段としてウクライナを事実上の「敵対国家」と位置づけてきた。当初は反EUの議論に組み込む形で、ウクライナを腐敗国家あるいは破綻国家として描き出し10、今回の選挙戦においては、『Autocracy, Inc.』の著者であるアン・アプルボームが指摘するように、「ハンガリーをウクライナの植民地にはさせない」といった、実在しない「敵」への恐怖を煽る手法を積極的に採用した11。こうしたオルバーン政権の言動に対し、ヴォロディミル・ゼレンスキー大統領が「(オルバーン首相の)所在地を軍に伝える」と脅迫とも受け取られかねない発言を行ったことは、日本でも大きく報じられた。
マジャル新政権の発足によって、どのような変化が見込まれるのだろうか。
選挙戦において、オルバーン政権はティサを「親ウクライナで戦争へと導く危険な政党」というように位置づけてきた。しかし、こうしたフレーミングとは異なり、ティサは必ずしも親ウクライナ一辺倒の立場をとっているわけではない。党の綱領においても、ウクライナへのハンガリー軍の派遣やウクライナのEUへの早期加盟には反対する旨を明記している。
ハンガリーの独立系シンクタンクであるPolicy Solutionsの調査によれば、ウクライナに対して否定的なイメージを持つ国民の割合は71%に上り、ロシアに対して否定的なイメージを持つ割合(68%)を上回っている12。ウクライナ支援の態度を曖昧にすることでオルバーン政権による政治争点化をなるべく避けるという目的のほかに、マジャル党首はこうした国民感情も踏まえて
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