池内恵の中東通信
池内恵(いけうちさとし 東京大学教授)が、中東情勢とイスラーム教やその思想について日々少しずつ解説します。
トランプ大統領が、5月10日に、訪米したロシアのラブロフ外相との会談の際に、最高機密の情報を伝えたとワシントン・ポストが報じて、またも大騒ぎになっている。報道によると、伝えた最高機密情報は、「イスラーム国」勢力によるラップトップ爆弾に関するものだったという。…
以前から、この「たびレジ」は登録しておくと忘れていた頃に意外に役に立つ、ということをこの欄で書こうと思って忘れていたのだが、気づいたら「ゴルゴ」に先を越されていた。外務省が、お役所なりの渾身のPR作戦、なのだろうか、ゴルゴ13(さいとうたかを作)を起用して「海…
「パリでテロ」「ニースでテロ」「ベルリンでテロ」「イスタンブルでテロ」といった事件が起こった時、情報・報道が錯綜する。「いつ、どこで、何が起こったか」についての最低限必要な情報を知りたいが、これがかなりの労力と知識を要する。こんな時に、該当国・地域について…
【ジブチ紀行】遠回りしているが、やっと今回の渡航の一つの主要目的、アフリカ大陸初の電化鉄道とされるジブチ−アジスアベバ鉄道の話である。ジブチ市とエチオピア・アジスアベバを12時間(諸説あるが)でつなぐというこの鉄道は、中国の借款と中国企業の進出で大々的に建設…
中国のジブチ進出、特にアジスアベバとの間をつなぐ、アフリカ大陸初の電化鉄道を「開通させた」ことを、途中まで記してきたが、100年前にフランスがジブチ−アジスアベバ間に鉄道(Ethio-Djibouti Railways)を引いたという話をきっかけに、少し脱線してみたくなった。フラン…
昨日に続いて、中国のジブチと東アフリカへの進出について。中国のジブチの開発への進出として目立つのは、港湾施設と並び、鉄道である。ジブチの港湾施設が、まず第一にエチオピアの需要を満たすものであるのと同様に、鉄道もまたアジスアベバにつながるものが、真っ先に建設…
ここのところ、先月ジブチに行ってきて、いろいろ考えたことを、この欄で「つぶやく」ようにメモする試みを行っている。一昨日までに、ジブチとの往復の航空路線を題材にして、トルコが「アフリカの角」から東アフリカ地域に関与する広域の地域大国として、現地の大国エチオピ…
先ほどのトルコとシリアの壁の話の流れで、もう一つ、建築雑誌のウェブサイトをなんとなく逍遙していたところ、目に留まった記事がある。"Humanitarian experts propose turning refugee camps into enterprise zones called "refugee cities,"" Dezeen, 9 December 2016. 難…
ここのところ続けてジブチを視座にして、トルコのこの地域への関与の動向も視野に入れながら、紅海の南部から「アフリカの角」や東アフリカについて記してきたが、ここで一休みして、ちょっと目先を変え、イギリスの建築雑誌に載っていた、トルコとシリアの国境の壁についての…
昨日はジブチの往復便でエチオピアやトルコを経由したが、非常事態宣言下であっても恐れることはない、といった話を記した。そう記した翌日にさっそく正反対のことを書くのも如何なものかと思うが、安心と不安が内心に交錯して去来するのが中東・アフリカ生活である。実は、帰…
さて、連休である。筆者はこの連休でいくつも本を仕上げねばならず、外界との連絡をなるべく絶って仕事をするべく算段を重ねてきたのだが、フォーサイトの読者の皆さんには、連休中も毎日、少しずつ文章が届くように、「中東通信」で予約設定してある。それ以外にも、合間を見…
不定期連載つぶやき、ジブチで考えたこと。まだ始まったばかりである。前回までに、ジブチに行くならトルコ航空が便利で、東アフリカの隅々まで、かなり危ないソマリアにまで路線がある、という話をしたが、今回の私の旅程表はというと、スターアライアンスのマイレージを利用…
トルコのロシア製対空ミサイル・システムのS-400をトルコが導入決定寸前との報が流れるが、サウジのS-400導入も噂されている。ロシア側の宣伝と、米国の態度に不安を持つ米同盟国側の、対米牽制という両面があって、盛んに情報が流れるのかもしれないが、現実化すれば中東の国…
トルコのエルドアン大統領が5月3日にロシアのソチでプーチン大統領と会談する予定である。会談の重要な話題となることが噂されているのが、ロシア製の対空ミサイル・システムであるS-400の購入である。トルコ側からも、ロシア側からも、肯定的な発言が相次ぐ。トルコはNATO諸…
エチオピア航空とトルコ航空がジブチへの主要な路線となっていることを昨日記したが、隣国でジブチの港を不可欠とするエチオピアは当然として、近隣国でもなく、ジブチとは違ってアラブ連盟の加盟国でもないトルコがなぜジブチに、と思う人は多いだろう。これはトルコの中東の…
ジブチに行ってきた。日本の自衛隊の唯一の海外拠点があるジブチだが、観光でも仕事でも、行く機会がある人はあまりいないのではないか。先日は『中東協力センターニュース』に、各種の地図も交えて、ジブチの地政学的重要性を記した紀行文を寄稿したことを紹介したが、もっと…
先月末から今月の頭にかけて(お役所の会計上は禁断の「年度またぎ」のため、マイレージを利用してチケットを入手し)、東アフリカの地政学的要衝としてかねてから注目しているジブチに行ってきました。ジブチというのは「世界最高気温」を記録したとも言われる場所で、暑く、…
4月25日未明、トルコがイラク北西部のシリアとの国境に近いシンジャールを空爆した。シンジャールに勢力を広げたシリアのクルド系組織YPGを対象にしたもののようだが(トルコはYPGをトルコの反体制武装組織PKKの一部とみなす)、トルコに協力するイラクのクルド自治政府(KRG…
やはり、という感がある。4月23日、サウジアラビアが、公務員や大臣などへの賞与・給付を積み増すことを発表した。これは昨年9月26日に発表された、大臣の給与や公務員への賞与・給付などを削減する財政削減政策を、半年あまりでかなりの部分撤回することを意味する。原油価格…
4月23日、エジプトのスィースィー大統領がサウジアラビアのリヤードを訪問した。空港でサルマーン国王による出迎えを受け、会談を行って、昨年の後半に疎遠になった両国関係の改善を演出した。3月29日のアラブ連盟首脳会談(アンマン)の会議の脇で行われたサルマーン・スィー…
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