国際情報サイト

 

池内恵の中東通信

池内恵(いけうちさとし 東京大学教授)が、中東情勢とイスラーム教やその思想について日々少しずつ解説します。

執筆者プロフィール
池内恵
池内恵 東京大学先端科学技術研究センター グローバルセキュリティ・宗教分野教授。1973年生まれ。東京大学大学院総合文化研究科地域文化研究専攻博士課程単位取得退学。日本貿易振興機構アジア経済研究所研究員、国際日本文化研究センター准教授を経て、2008年10月より東京大学先端科学技術研究センター准教授、2018年10月より現職。著書に『現代アラブの社会思想』(講談社現代新書、2002年大佛次郎論壇賞)、『イスラーム世界の論じ方』(中央公論新社、2009年サントリー学芸賞)、『イスラーム国の衝撃』(文春新書)、『【中東大混迷を解く】 サイクス=ピコ協定 百年の呪縛』 (新潮選書)、 本誌連載をまとめた『中東 危機の震源を読む』(同)などがある。個人ブログ「中東・イスラーム学の風姿花伝」(http://ikeuchisatoshi.com/)。

エルドアンの「反省文」:露土首脳会談の構図

8月9日のトルコのエルドアンのロシア・サンクトペテルブルク訪問では、予想通り、エルドアンがプーチン大統領にあたかも臣下の礼を取るかのような構図が出現した。会談直後から、ロシアの宣伝メディアである「スプートニク」は怒涛のように記事を配信したが、そのうち一つのカ…
続きを読む>>

エルドアンのロシア訪問で何が話し合われるのか

現在の中東情勢で最も関心を集めるのが、トルコの内政・外交の行方だろう。エルドアン政権は内政では8月7日に、7・15クーデタの阻止を祝うイスタンブルでの集会で数百万人を集めて大衆動員の力を誇示したが、外交では8月9日のエルドアン大統領のロシア・サンクトペテルブルク…
続きを読む>>

シリア反体制派がアレッポの包囲を解く

シリアの戦況がひと月の間に目まぐるしく移り変わっている。アレッポの戦況は政権と反体制勢力の間の交渉や、米露交渉、ロシアとトルコやサウジアラビアなどの交渉にも関わる最重要の戦線である。8月6日までに、アレッポ東部の反体制派支配地域へのアサド政権による包囲を、反…
続きを読む>>

ヌスラ戦線がアル=カーイダから分離

シリアの反体制武装勢力ヌスラ戦線が、アル=カーイダからの決別を宣言した模様だ。7月28日にアラビア語衛星放送局アル=ジャジーラが放送した映像によれば、ヌスラ戦線はアル=カーイダから分離し、「シャーム征服戦線」(Jabha al-Fath al-Sham)と改称したものとされる(ア…
続きを読む>>

トルコに関する過去の記事の紹介

クーデタ未遂で揺れるトルコについては、フォーサイトの過去の記事に加え、私の個人ブログで一時集中的に取り上げていたことがあるので、ブログのこのエントリと、その先のリンクをたどって読んでいくと、全体状況がある程度見えてくると思う。このブログを書いた当時はシリア…
続きを読む>>

トルコのクーデタ未遂をめぐる8つの考察ポイント

7月15日夜(現地時間)に決行されたトルコのクーデタの企ては、アンカラで軍総司令部、議会、大統領官邸などでの戦闘を経て鎮圧された模様だ。(タイムライン:BBC, Reuters)アンカラやイスタンブルではクーデタ支持部隊とデモの群衆の衝突が生じた。TRTやCNN Turkなど主要テ…
続きを読む>>

ケリー国務長官が訪露して対シリア・ヌスラ戦線で協調策を提案

7月14日(米国時間)に米ケリー国務長官が訪露し、当日と翌日にかけて、プーチン大統領やラブロフ外相と会談して、シリア問題で妥協案を提示して米露協調を図る模様だ。ワシントン・ポスト紙の一連の報道によれば、会談では、世界各地でテロを扇動する「イスラーム国」だけで…
続きを読む>>

ダッカのテロの組織と犯人像(初期の報道)

ダッカのカフェ襲撃テロで、背後の組織と、7名の犯人(そのうち6人は銃撃戦で死亡)について少しずつ情報が出てきている。バングラデシュのアサドゥザマーン・ハーン(Asaduzzaman Khan)内相はAFPに対して、犯行はバングラデシュ・ムジャーヒディーン団(Jamaeytul Mujahde…
続きを読む>>

ダッカのテロはインドで「イスラーム国」への呼応テロを刺激するか

7月1・2日のダッカのカフェへのテロで、インド亜大陸への「イスラーム国」あるいはグローバル・ジハード理念の拡散が顕著になったが、これがインドに波及することが危惧される。「イスラーム国」の英語宣伝誌の『ダービク』は、4月刊行の号で、「ベンガルのアミール(カリフか…
続きを読む>>

イスタンブル・アタチュルク空港のテロ実行犯はロシア・北コーカサスと中央アジア諸国の出身か

6月28日夜にトルコのイスタンブル・アタチュルク空港で起きた銃撃・自爆テロ事件は「イスラーム国」の犯行と見られるが、ジハードの共通理念に共鳴して各地の多種多様な勢力が集まる「イスラーム国」については、「どのような」主体が今回の事件を行ったかがより重要である。…
続きを読む>>

リビア東部では自称リビア国民軍のハフタル将軍とイスラーム主義勢力が衝突

リビアの西部ガラブリでの抗争と、国際社会の関心事スィルトでの戦闘についてこの前のエントリで記したが、今度は東部を見てみよう。東部の中心都市はベンガジで、ここでは各種の民兵集団が競っている。東部を拠点とする2014の選挙を根拠とする代議員議会(House of Represent…
続きを読む>>

リビア西部ガラブリで民兵集団と住民が抗争

リビアの内戦の終結への道のりは険しい。昨年12月17日には、東西分裂政府の交渉担当者たちによって国民合意政権(Government of National Accord: GNA)の設立で合意された。紆余曲折あって欧米諸国と安保理の支持も得て結成されたGNAが3月30日に首都トリポリに上陸し、統治体…
続きを読む>>

ヨルダンとシリアの緩衝地帯ルクバーンで自動車爆弾によるテロ

6月21日朝、ヨルダンの北東部の辺境、シリアとの国境の町ルクバーンで、ヨルダン軍の部隊に対するテロで6人の兵士が死亡し、14人が負傷した。"Jordan soldiers killed in Syria border bomb attack," al-Jazeera, 21 June 2016."Jordanian troops killed in bomb attack at S…
続きを読む>>

シリア内戦で米の支援する部隊が北部の要衝マンビジュの制圧を目指す

シリア北部のトルコ国境地帯の「イスラーム国」の押さえる要衝マンビジュを、米国が支援するシリア民主部隊(SDF)が制圧しようと中心部に攻勢をかけている。SDFはクルド人民兵組織YPGの傘下にあると見られるため、YPGをテロ組織として敵視するトルコは警戒しているが、今のと…
続きを読む>>

米シェール企業の勝ち残り組は筋肉質に

今後の原油価格はどうなるのか。サウジアラビアやイランやイラクなどのOPEC諸国、ロシアなどの非OPEC諸国の動きとともに、米国のシェール・オイルを算出する企業の動向が気になるが、ここのところの報道によれば、有力な企業はかなりしぶといようだ。原油価格が高い時は1バレ…
続きを読む>>

米国務省員51名がオバマ政権のシリア政策に不満を表明

6月16日のニューヨーク・タイムズ紙が、米露合意で義務づけられた停戦を守っていないアサド政権に対して、米国は標的を絞り込んだ空爆などを行うべきだ、とする国務省内の「メモ」の存在を報じた。"51 U.S. Diplomats Urge Strikes Against Assad in Syria," The New York Ti…
続きを読む>>

グローバル・ジハードの「触発」と「指示」の相違

6月12日のフロリダ州オーランドのナイトクラブへの銃撃テロについて、翌朝のブリーフィングでオバマが「触発された(inspired)」と「指示された(directed)」を使い分け、inspireされたものだという現時点での見通しを示していたことを前項で示した。この使い分けは、国際…
続きを読む>>

フロリダ州オーランドのゲイ・ナイトクラブへのテロに対するオバマの言葉

6月12日の米国フロリダ州オーランドで起きた、ゲイのナイトクラブPulseで49名を殺害し犯人も死亡した事件に対して、翌日のオバマ大統領の二つの会見での言葉の用い方から、事件の性質をどう認識しているか、この問題の政治的な波及を最小限にするためのどのようなメッセージ発…
続きを読む>>

フロリダとパリのテロはグローバル・ジハードの拡散の典型

6月12日と13日に、米国とフランスでグローバル・ジハードの事例と見られる殺人事件が相次いだ。これらの事件は、相互につながりが乏しいか、あるいは全くない、個人や組織がグローバル・ジハードの思想に感化され、自発的に呼応して行ったものと考えられる。2000年代半ばから…
続きを読む>>

サウジのファーリハ新石油相の発言を読む

6月2日にウィーンで行われたOPEC総会で、予想通り、生産調整(増産凍結、生産枠の変更、生産据え置き、生産目標の再設定、等々日本語では様々な表現が用いられるが)に関する合意はなされなかった。予想されたことであるため、石油市場もそれほど大きく反応しなかった。サウジ…
続きを読む>>
  • 24時間
  • 1週間
  • f
back to top