池内恵の中東通信
池内恵(いけうちさとし 東京大学教授)が、中東情勢とイスラーム教やその思想について日々少しずつ解説します。
ドイツの諜報機関である連邦情報局(BND)が、サウジの体制の先行きへの不安を表明する異例の声明を12月2日に公表した。"German spy agency warns of Saudi shift to 'impulsive' policies," Reuters, December 2, 2015.この報道によれば、BNDの声明では、サウジの対外政策が…
この記事は記録しておきたい。ペルシア湾岸産油国の情勢に気を配っている人であれば、このニュースは目にしただろう。そして、「さもありなん」「前から言われていたことではあるけれども」と思いつつ、「この時期に報じられたのはなぜだろう」と考えるだろう。"Emirates Secr…
「ワリード・ジュンブラート」と聞いて「ああ、レバノンの面白い人ね」と分かる人は中東に明るい人。"Politics and lolcats: Lebanon"s 'Stand-up' former warlord rulez Twitter," Al-Araby al-Jadeed, 27 November 2015.その彼が個人のツイッター・アカウントで珍妙なツイー…
パリの同時テロについて、しばしば「組織性」が論じられる。しかし私はこれには慎重である。というのは、「イスラーム国」そのものへのリクルートにしても、「イスラーム国」に共鳴しその活動の一部であると主張されるテロを決行する集団へのリクルートにしても、通常の意味で…
米オバマ政権はトルコのロシア軍機撃墜の影響を極力小さく抑えたい姿勢が明確である。また、パリの同時多発テロ事件による対シリア軍事作戦への影響も避けたいようである。24日のオランド大統領との会談の後の1時間に及ぶ記者会見で、フランスとの連帯を謳い上げたものの、対…
24日に、チュニジアの首都チュニス中心部で、大統領護衛隊の隊員を輸送するバスに対して複数の自爆テロが行われ、かなりの死者が出ている。死者の数は当初6名という情報がチュニジア内務省から出ていたが、 大統領府からは死者11名という情報も流れている(アル=ジャジーラ…
シリア北部からの情報が錯綜している。シリア北部のトルクメン人勢力が撃墜機のロシア人パイロット2名を捉えて殺害したと語ったことが報じられていたが、トルコ政府筋はロイター通信にパイロット2名が生きているとする見解を示した。トルコの反政府勢力が米国から供与された…
ロシア機撃墜事件によって、その背後にあるトルクメン人問題が、欧米メディアでも無視できない問題となり(トルコはこの問題に以前から注目を促してきたが)、BBCも急遽「シリアのトルクメン人とは何か?」という解説をウェブサイトに掲載している。ただでさえ複雑なシリアの…
トルコによるロシア軍機の撃墜がシリアをめぐる国際政治に及ぼしうる影響をいくつか考えてみると次のようになる。(1)トルコが支援するトルクメン人の保護の問題が顕在化し、ロシア・アサド政権との間の紛糾が続くとともに、米国が同盟するクルド人勢力がトルクメン人と競合…
トルコによるシリア国境地帯でのロシア軍機撃墜に対して、プーチン大統領は領空侵犯の責任を認めず、「背中から刺された」「『イスラーム国』のテロの共犯」「深刻な結果をもたらす」と激しいレトリックで迎え撃った模様である。もっともこのような時に弱気の発言をできるはず…
シリア問題にまた別の角度の捻りが入り、急速に展開している。シリア北西部のトルコとの国境付近を飛行していたロシア軍の爆撃機をトルコが撃墜した。トルコ軍はロシア軍機が繰り返し領空侵犯をして警告を受けたと主張しており、レーダーの航跡を公開している(ロシアはとりあ…
サウジアラビアのリヤードで、来月の12月15日に、シリア反体制派の「穏健派」を招集するという案が浮上している。サウジ資本のアラビア語衛星放送アル・アラビーヤが報じたことにより、注目されている。"Meeting scheduled to unite Syria opposition in Saudi," al-Arabiya, …
「イスラーム国」を名乗る組織のテロに憤るアメリカ国民はいっそうの対策を求めるが、同時に地上軍の派遣には反対している。これがおおよその世論だろう。議論は極論に触れがちだが、オバマ大統領もこの世論動向を踏まえて政策を決めているのだろう。"Exclusive: After Paris,…
パリの同時多発テロはヨーロッパの社会や政策に深いところで影響を及ぼし、対外政策でも様々な影響が生じうるが、現実の中東に外部の主体が及ぼせる影響力は限られており、米国など超大国の意志にも限界があることから、急に大きな変化が生じるわけではないことも確認しておき…
フランスでイスラーム主義について研究してきた学者といえば、ジル・ケペルと並んでオリヴィエ・ロワである。アフガニスタンのジハード主義者たちの研究を基礎に、グローバルなイスラーム共同体観念の再強化など、現在の事象を読み解く背後の構造的変化を着実に早期に捉えてき…
11月13日夜に起こったパリの同時多発テロについて、犯行声明やフランス政府の認定などが出揃い、事件の大枠は見えてきた。もちろん実行犯の氏素性など全容の解明には程遠い。様々な情報が乱れ飛んでおり、精査していく作業は困難で労力がいる。たとえば、この記事をどう読めば…
パリで11月13日夜に発生した同時多発テロの全体像が明らかになりつつある。おそらく7箇所で銃撃や自爆テロが行われた。パリ北方郊外サン・ドニのスタジアム(Stade de France)付近のバーで二度の爆発があり、オランド大統領も観戦していたフランス・ドイツのサッカー親善試…
シリアの「イスラーム国」が公開した多くの人質殺害ビデオで処刑吏の役を演じてきた、クウェート生まれ(イラク系と言われる)でロンドン西部に育った英国人「ジハーディー・ジョン」ことムハンマド・エムワーズィーが、11月12日にシリアのラッカで行われた米軍のドローン(無…
レバノンの首都ベイルート南郊のブルジュ・エル・バラージュネ地区で連続自爆テロが行われ、少なくとも37名が死亡、180名が負傷した(後の報道では43名死亡・200名以上が負傷とも伝えられる)。「イスラーム国」が犯行声明を出している。【Reuters】【BBC】【The Guardian】3…
11月9日にヨルダンの首都アンマンにある国際警察官訓練センターで、ヨルダン人の警察将校が銃を発砲し、アメリカ人2名、南アフリカ人1名、ヨルダン人2名を殺害した。米国と緊密に同盟したヨルダンはイラク・パレスチナなど周辺諸国への国際的な治安支援の拠点であり、銃撃…
「フォーサイト」は、月額800円のコンテンツ配信サイトです。簡単なお手続きで、サイト内のすべての記事を読むことができます。
フォーサイト会員の方はここからログイン
- 24時間
- 1週間
- f
-
1
ワーナー買収戦「トランプ家、エリソン家、中東マネー」の胡乱な煌めき
-
2
駐北朝鮮ロシア大使の急逝で金正恩が異例の弔問(2025年12月7日~12月13日)
- 3 2026年を占うキーワードは株式市場のリバランス、米中関係、そして中間選挙|ジャーナリストの滝田洋一さんに聞く
-
4
欧州航空産業編[中]:防衛「脱・米国依存」の象徴「FCAS」に崩壊危機
-
5
はたして少年A=酒鬼薔薇聖斗は、更生しているのか
-
6
トランプ政権「西半球覇権主義」に覗くルビオ国務長官の「ネオコン性」――ベネズエラ攻撃なら、その次はキューバ?
-
7
【再掲】トランプ「米国本位」関税が狙う「スミソニアン2.0」の大調整
-
8
「山崎製パン」創業家の闇――「ワンマン社長」次男の「副社長」はなぜ非業の死を遂げたか
-
9
イヌの姿が多様化したのは、少なくとも1万1000年前頃だった
- 10 「殺すぞ」「金持ってこい」――不祥事続く東大医学部に必要なのは、ごもっともな「ガバナンス論」などではない
-
廃墟のヨーロッパ
¥2,860(税込) -
北方領土を知るための63章
¥2,640(税込) -
ウクライナ企業の死闘 (産経セレクト S 039)
¥1,210(税込) -
地政学理論で読む多極化する世界:トランプとBRICSの挑戦
¥1,870(税込) -
誰が日本を降伏させたか 原爆投下、ソ連参戦、そして聖断 (PHP新書)
¥1,100(税込) -
農業ビジネス
¥1,848(税込) -
古典に学ぶ現代世界 (日経プレミアシリーズ)
¥1,210(税込) -
ルペンと極右ポピュリズムの時代:〈ヤヌス〉の二つの顔
¥2,750(税込) -
ウンコノミクス (インターナショナル新書)
¥1,045(税込)