池内恵の中東通信
池内恵(いけうちさとし 東京大学教授)が、中東情勢とイスラーム教やその思想について日々少しずつ解説します。
7月18日、エジプトのシナイ半島北部シャイフ・ズワイドの南方で、「イスラーム国シナイ州」を名乗る集団(旧アンサール・バイトル・マクディス「聖地エルサレムの護持者たち」)がエジプト軍のチェックポイント(Abu Refae security checkpoint south of Sheikh Zuweid)襲撃…
イエメンで戦果を挙げたと主張するサウジだが、首都リヤードでは7月16日、政治犯刑務所付近の警察チエックポイントで自爆テロ。犯人が死亡、警官二人が負傷とのこと。犯人は10代で、「大佐」である叔父を殺害してから車を運転して自爆を行ったとされる。Suicide bomber i…
とにかく動きが早い、中東情勢。イエメン内戦も一瞬目を離しているとすぐ分からなくなる。先日この通信で、ラマダーンを口実にした人道休戦が7月10日から発効した、と書きましたが、10日に即座に破られていました。休戦が破られたと書く間もなく、7月17日のラマダーン…
イエメンでは1月のフーシー派による大統領府占拠とハーディー大統領の追放、3月のサウジによる対フーシー派、ハーディー大統領支援の軍事介入といった動きで、全面的内戦と中央政府の崩壊が進んでいますが、サウジは空爆だけでなく、地上の連合勢力を糾合し「民衆抵抗」なる…
ロシア・プーチン政権はウクライナ問題で欧米から孤立すると中国やBRICSに接近し、トルコに秋波を送ったりするが、アサド政権は数少ないロシアに頼り切った国として、捨てるわけにいかない対象。クリミアを経由してLPGを送ると漏らすというのは、クリミア問題でも中東問題でも…
この記事は時間と紙幅を費やして論じるに値しますね。ハマースのミシュアル政治局長がサウジアラビアのリヤードを訪問し、サルマーン国王などと会談。サウジがハマースと関係の深いエジプトのムスリム同胞団への弾圧姿勢を和らげた可能性があると共に、それによってムスリム同…
シナイ半島の武装勢力によるエジプト政府との衝突は次第に大規模化し、頻度が高まっている。これが人口過疎地のシナイ半島を越えて、スエズ運河を越えて、エジプトの本土に及ぶようになると、エジプトまでもが国家の崩壊に近ずくことになる。そのような事態は考え難い、エジプ…
「イスラーム国」に忠誠を誓う、エジプトのシナイ半島に拠点を置いて「イスラーム国シナイ州」を名乗る集団(昨年までは「聖地エルサレムの護持者たち」を名乗っていた)が、シナイ半島北部の最西端でパレスチナのガザ地区との国境の街ラファハ沖のエジプト海軍の巡視艇にミサ…
ホワイトハウスのプレゼン資料。今回の合意でイランの核兵器開発をどのようにブロックできるか。政治的コミュニケーションのあり方としても参考になります。
イラン核開発問題で今回のウィーンでの合意は Joint Comprehensive Plan of Actionと題されている。そういえば今回の合意への道筋を開いた2013年11月の暫定合意は Joint Plan of Action だった。英語圏の主要紙各紙はこういう文書はダウンロードできるように公開のクラウドに…
イランと6カ国(国連安保理事国5カ国+独あるいはEU3+3つまり英仏独のEU3カ国と米露中)の間での核開発を巡る合意。全文は下記リンクから読めます。Joint Comprehensive Plan of Action, Vienna, 14 July 2015.159頁もあります。
イランは10年間核開発プログラムに制限を与えられ監視を加えられ、その後制限が段階的に解除されて15年後からは自由に開発できる。ただしもちろんNPTの締結国としての制約を受けるので核兵器開発はできないはず。Some restrictions limiting Iran’s program begin to pha…
これから、米・イランそれぞれが国民・政治勢力に説明できるような玉虫色文言が明らかになるのでしょうが、例えばこんなところが漏れ伝わってくる。イランの核開発施設を、「破壊するか国外に撤去するのではなく、解体してイラン内に貯蔵する」というところが一つの外交的妥協…
イラン核開発交渉で合意。Iran, big powers clinch landmark nuclear deal, July 14, 2015.
トルコで反政府武装闘争を繰り広げてきたクルド独立派PKKは、関係の深いシリアのYPG(クルド人民防衛隊)が軍事的に台頭したのに触発されたのか、あるいは危機感を高めたエルドアン大統領の動きを牽制しているのか、対トルコ政府で対決姿勢を強めている。7月11日の声明で、ト…
何度も出た話ですが、ウィーンで延長に延長を重ねた交渉が、7月12日(日)中にも妥結かとの噂が、特にイラン側から出ている。米や欧の外交官は12日中には物理的に詰めができないと冷静。ただ、13日にも合意に達するという観測が出ている。ウォッチャーたちも疲れ果て「今日は…
昨日のカイロのイタリア領事館前の爆破について、エジプトでの「イスラーム国」傘下の組織を名乗るツイッター・アカウントで犯行声明が出された。真偽は判定しようがない。Egypt's ISIL affiliate claims attack on Cairo consulate, al-Jazeera English, 11 July 2015.Islami…
今朝のカイロの爆破、イタリア領事館を狙ったというよりは、カイロの都市交通の麻痺を狙ったのか?ガラー大通りが7月26日大通りと交差する場所にイタリア領事館がある。言葉で説明するのが難しいが、どちらも大通りの上に高架通りが走っている。カイロ中心部でナイル川を渡…
ガラー大通りあるいはその上の10月6日橋は誰もが通らなければならない幹線道路である。要人の車の通過を狙った爆破の狙いが外れたのかもしれない。しかし爆発は土曜日の朝6時20分から30分ごろというので、もしかすると誤爆かもしれない。そうであれば、本当はどこの誰…
カイロ中心部で7月11日の早朝、イタリア領事館が爆破され、少なくとも1名が死亡。早朝であったため死者は少ないかもしれないが、ツイッターで伝わってくる被害の規模は甚大。大規模な爆発物が用いられたとみられる。カイロにはイタリア大使館(ガーデン・シティ)とイタリ…

「フォーサイト」は、月額800円のコンテンツ配信サイトです。簡単なお手続きで、サイト内のすべての記事を読むことができます。
フォーサイト会員の方はここからログイン
- 24時間
- 1週間
- f
-
1
イスラエル・イラン戦争の初期の10日間:評価と見通し
-
2
イスラエル・イラン戦争、アラブ世界に交錯する「イラン嫌悪」と「イスラエル嫌悪」
-
3
日本の研究チーム、海水で数時間で分解するプラスチックを開発
-
4
朝鮮戦争勃発75年、忘れ去られた日本の「参戦」と犠牲
-
5
野党も対イラン攻撃を支持、「ハマスとは別問題」と考えるイスラエル世論の論理
-
6
金正恩・ショイグ会談、露クルスク州の復興に「北朝鮮工兵6000人派遣」で合意(2025年6月15日~6月21日)
-
7
ブレイクスルーを待つ「ペロブスカイト太陽電池」――工場の屋根で発電、目指すは電力の「地産地消」|村上拓郎・産総研ペロブスカイト太陽電池研究チーム長(4)
-
8
固代表・プレゼンテーションクリエイター/前田鎌利さん、スライドデザイナー/堀口友恵さん:社内決裁を勝ち取る「プレゼン資料ロジカル作成術」
-
9
はたして少年A=酒鬼薔薇聖斗は、更生しているのか
-
10
タイ-カンボジア国境の軍事衝突、何が問題になっているのか
-
ルペンと極右ポピュリズムの時代:〈ヤヌス〉の二つの顔
¥2,750(税込) -
ウンコノミクス (インターナショナル新書)
¥1,045(税込) -
世界の力関係がわかる本 ――帝国・大戦・核抑止 (ちくまプリマー新書 492)
¥990(税込) -
世界を変えたスパイたち ソ連崩壊とプーチン報復の真相 (朝日新書)
¥1,067(税込) -
ピークアウトする中国 「殺到する経済」と「合理的バブル」の限界 (文春新書 1481)
¥1,210(税込) -
小泉悠が護憲派と語り合う安全保障
¥1,540(税込) -
2030年の戦争 (日経プレミアシリーズ)
¥990(税込) -
ゴジラvs.自衛隊 アニメの「戦争論」 (文春新書 1480)
¥1,243(税込) -
情報分析力 (単行本)
¥1,760(税込)