ブレイクスルーを待つ「ペロブスカイト太陽電池」――工場の屋根で発電、目指すは電力の「地産地消」|村上拓郎・産総研ペロブスカイト太陽電池研究チーム長(4)
長野光と関瑶子のビデオクリエイター・ユニットが、現代のキーワードを掘り下げるYouTubeチャンネル「Point Alpha」。今回は、ペロブスカイト太陽電池の応用や社会実装のイメージについて、産業技術総合研究所(以下、産総研)ペロブスカイト太陽電池研究チーム長の村上拓郎氏に話を聞いた。 ※主な発言を抜粋・編集してあります。
実用化へ最大のニーズは「軽さ」にあり
——期待される実装例にはどのようなものがありますか。
「ペロブスカイト太陽電池は曲げに強くフレキシブルであるわけですが、実用化にあたってはこの点以上に、軽さに対するニーズの方が多いと感じています」
「例えば今後、EVが普及し、専用のカーポートが増えていくことが予測されます。結晶シリコン太陽電池を屋根に載せたカーポートは既に実用化されていますが、結晶シリコン太陽電池の重さに耐えられるよう、筐体を頑丈にしています。そのため、普通のカーポートと比較して高い値段で売られています」
「ペロブスカイト太陽電池が実用化すれば、安価なソーラーカーポートが普及すると期待しています」
「また、ペロブスカイト太陽電池は、体育館や公民館の屋根への設置も可能です。体育館や公民館は、災害時の避難所になります。停電時でも発電できれば、災害レジリエンス(復元力)の強化に繋がります」
「このように、ペロブスカイト太陽電池は、軽量でなければ入れない市場を開拓し、存在感を示していくと考えられます。そこから量産効果でコストを下げていき、一部結晶シリコン太陽電池のマーケットに入り込む可能性もあります」
「加えて、海外市場にも期待ができます。日本は地震が多いため、建物が頑丈につくられていますが、海外では耐荷重が低く結晶シリコン太陽電池を設置することが困難な建物がたくさんあります」
「発展途上国では系統電力が十分に普及していないエリアも多くあります。そのようなところに、しっかりと入り込んでいくことが重要です」

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