ポイント・アルファ
ポイント・アルファ (25)

肥満症の救世主「GLP-1受容体作動薬」——「効果」「保険適用の条件」「施設要件」とは|小野啓・千葉大学予防医学センター教授(1)

執筆者:関瑶子 2025年9月4日
タグ: 日本 健康
食事制限と運動療法が中心だった肥満症治療は近年、GLP-1受容体作動薬の登場により、その常識が大きく変わりつつある。セマグルチド(商品名:ウゴービ)、チルゼパチド(商品名:ゼップバウンド)は、それぞれ約15%、約20%の減量率を臨床治験で示す。また保険適用にはBMIや合併症などいくつかの条件があり、施設要件には高いハードルが課される。(聞き手:関瑶子)

 長野光と関瑶子のビデオクリエイター・ユニットが、現代のキーワードを掘り下げるYouTubeチャンネル「Point Alpha」。今回は、従来の肥満症治療の課題とGLP-1受容体作動薬の効果や副作用、対象患者、施設要件などについて、千葉大学予防医学センター教授の小野啓氏に話を聞いた。 ※主な発言を抜粋・編集してあります。

従来治療の課題は「副作用」や「低い減量率」

——従来の肥満症治療の課題について教えてください。

「セマグルチドやチルゼパチドが登場する以前は、マジンドール(商品名:サノレックス)が日本で唯一使用可能な肥満症治療薬でした。食欲抑制薬ではありますが、覚醒剤と類似した作用がある可能性が当初懸念された経緯から、処方に強い規制がかけられています」

「また、薬の成分に対して耐性がついてしまうため、服用初期の頃はよく効くものの、徐々に効果が弱くなるという課題がありました。これらの理由から、マジンドールは現時点では広く普及しているとは言い難い現状です」

「薬物治療以外の一般的な治療法として、食事療法、運動療法、行動療法があります。これらの治療による減量率は平均7%と決して高いものではありません1

「ほかに、胃を小さく形成する肥満外科手術もありますが、他の外科手術と同様、術後に合併症が発生するリスクがあります」

カテゴリ: 医療・サイエンス
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執筆者プロフィール
関瑶子(せきようこ) ライター・ビデオクリエイター 早稲田大学大学院創造理工学研究科修士課程修了。素材メーカーの研究開発部門・営業企画部門、市場調査会社、外資系コンサルティング会社を経て独立。You Tubeチャンネル「著者が語る」の運営に参画中。
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