クラスの4人に1人が家庭では外国語を話す――「就学前の共通語習得」を促進するドイツの学校事情
ドイツは外国からの働き手なしに経済を回すのが難しくなっており、近年ではEU(欧州連合)諸国だけでなく、中東やウクライナからそれぞれ100万人以上の難民を受け入れ、移民は増えつづけている。
ドイツ連邦統計局によると、ドイツ国籍を持たない在住者は、2023年末時点で全体の15.2 %に及ぶ。ドイツ国籍を持つ移民1世・2世を含めると、移民的背景のある人は全体の約30%になる。その割合は低年齢になるほど高くなり、2024年のマイクロセンサス(小規模国勢調査)によると一般及び職業学校に通う児童・生徒では42.2%にもなった。都市部ではさらに高く、たとえば首都ベルリンでは55%の児童やティーンネイジャーが移民的背景を持ち、特に移民が多いノイケルン地区では70%以上にもなるという。
ドイツの子どもは、6歳から18歳くらいまで学校に通うことが義務となっており、親は子どもを学校に通わせる責任がある。滞在許可申請中でも3カ月以上滞在する場合は学校に通う必要があり、2024年時点で全国の子どもの25%、移民的背景のある子どもの70%が家庭でドイツ語以外の言語を話している。
ドイツが移民を受け入れ始めた1950年代当初、移民の統合政策はほとんどなく、1980年代くらいから、ドイツ社会と交わることのない、移民だけのコミュニティの存在が目立つようになった。しかし、そのような並行社会の人が定職につけなかったり、学業をうまく修められなかったりする割合が高く、社会不安の原因にもなりかねないため、統合政策はその後、積極化した。ドイツ語を母語としない子どもへの支援がなされてきたが、ドイツにやってくる子どもたちが過去に例のないレベルで急増したため、課題も増えている。
15歳の学力が過去最低に
学校の授業はドイツ語で展開されるため、ドイツ語の習熟が不十分な児童・生徒は授業についていくのが難しくなる。一般的に、子どもは大人よりもずっと早く言語を習得できるが、日常会話ができるからといって、その言語で複雑な思考をできるとは限らず、学習に必要なレベルはより高い。そのため、ドイツ語力が不十分な子どもは成績も低迷しがちで、そういう子が多ければクラス全体のレベルも下げざるを得ず、他の子どもたちの学力低下にも繋がる。
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