池内恵の中東通信
池内恵(いけうちさとし 東京大学教授)が、中東情勢とイスラーム教やその思想について日々少しずつ解説します。
国連総会でのプーチン大統領の演説を聞いてみた。9月28日12時半ごろ、日本時間では29日午前1時30分に終わった。英訳を通じて聞いただけだが、抑えたトーンのものだったように感じられる。予想通り、アサド政権への明確な支持表明と、「イスラーム国」と他の反政府勢力をまと…
プーチン大統領の演説を聞きながら、主要紙の28日付の報道の見出しを見るだけでも、国連総会で焦点となっている議題と、場の雰囲気がわかる。“U.N. General Assembly Opens With Focus on Syria, ISIS and Refugees,” The New York Times, September 28, 2015.シリア・「イ…
国連総会で最も注目される、各国首脳による一般討論演説の初日が始まった。10月3日まで続く一般討論演説の順番は国連のウェブサイトに掲示されており、ライブで演説を視聴することもできる。オバマ大統領の演説を少し聞き、その後、中国、ヨルダンのフセイン国王と続いて、そ…
リビア内戦の主要二大勢力の間で、和平と挙国一致内閣の合意が近い、と仲介に当たる国連特使ベルナルディーノ・レオン(Bernardino Leon)氏が、9月13日に、楽観的な見解を示している。Rival Libyan groups agree to share power, Boston Globe (AP), SEptember 14, 2015.…
8月17日に起きた、タイ・バンコクで20人を殺害し120名あまりを負傷させたエラワン廟爆破事件について、タイの警察Somyot Poompanmoung氏が、事件と中国のウイグル人をトルコに密航させるネットワークとの関連を初めて公に指摘した。Thai police chief links Bangkok blast to…
ロシアの対シリア軍事支援の意図が憶測の的である。地対空ミサイルSA-22の配備が先月末から表面化しているが、「イスラーム国」も他の反体制勢力も空軍戦力がないため、ロシアの軍事支援は「イスラーム国」対策だ、とするロシアの説明は筋が通っていない。Russia to U.S.: tal…
イエメン内戦で、国外逃亡中のハーディー大統領の復権を求めるサウジ主導の介入が、どこまでの連合の広がりや現地での実効性を伴うかが注目される。今後の中東の安全保障体制の行方を方向づける、あるいは試金石となる事象である。サウジ主導のGCC諸国が、イエメン現地の武装…
ロシアのシリア・アサド政権軍事支援が直接軍事介入と化しているという情報が浮上するのに対して、態度を硬化させた米国は、ロシアの航空部隊のギリシア上空通過の拒否をギリシアに要請した。“U.S. asks Greece to deny Russian flights to Syria,” Reuters, September 7, 2…
西欧がシリア難民の到着で沸き、動揺するのを尻目に、シリア情勢そのもの、特に関与する超大国間の関係に動きが出ている。ロシアがシリアのアサド政権への軍事支援を強化していたことが判明し、ロシアと米国の間で緊張が高まっている。“Russian Moves in Syria Pose Concerns…
シリア難民のドイツへの大量到着で、ある種のカタルシスが西欧には湧いているが、やがて深刻な現実に直面せざるを得ない。「最底辺の10億人」のポール・コリアーが7月に書いていたことを改めて読んでみる。Paul Collier, “Beyond The Boat People: Europe’s Moral Duties T…
イエメン内戦にサウジ主導の連合軍が介入し、南部アデンをフーシー派から奪還して首都サヌアに向けて北上しているが、制圧後のアデン中心部に「アラビア半島のアル=カーイダ(AQAP)」の勢力範囲ができているという。Yemen officials say al-Qaida seizes key areas of Aden,…
こんな記事が出ていた。PKK urges US to mediate in its war with Turkey and admits to secret talks with Washington, The Telegraph, 17 August, 2015.トルコのクルド反政府組織PKKは、米国と仲介者(おそらくシリアのクルド組織・民主連合党=PYD)を通じて間接的に対話し…
気になる情報である。サウジでMERS(中東呼吸器症候群)の感染者が増えているという。リヤードのアブドルアズィーズ国王医療都市の病院で、感染者46名を出したため緊急病棟が一時閉鎖されたという。厚生省は8月9日から15日にかけて感染者21名と発表している。怖いのが、イスラ…
トルコでは6月7日の総選挙の結果を受けて進められてきた連立協議が不調で、11月の再選挙が濃厚との見通しを先日伝えた。その見通しは変わっておらず、8月23日の連立組閣期限を越えれば、エルドアン大統領は再選挙を宣言しそうだ。しかし再選挙をやるとむしろクルド系政党のHDP…
トルコはクルド反政府武装勢力PKKとの和平プロセスが崩壊し、紛争が激化し南東部各地や国境を越えたイラク側で、小規模の戦闘や空爆が続いている。それと直接の関係はまだ不明だが、8月19日、首都イスタンブールの、最人気の観光地の一つであるドルマバフチェ宮殿を2名の武…
サウジ・UAE主導の連合軍が、亡命したハーディー大統領と政権の復帰を目指して、イエメンの地元親サウジ・新ハーディー政権勢力を支援して、最北部を拠点とし一時は南部まで全土を支配下に置いたフーシー派とサーレハ前大統領派から、国土を奪還する作戦を進めている。7月か…
エジプトのシナイ半島を拠点に活動する「イスラーム国シナイ州」が、8月13日、カイロ郊外で誘拐していたクロアチア人人質を斬首したと音声メッセージで発表した。Islamic State says in broadcast that it killed Croatian hostage, Reuters, August 13, 2015.すでに前日12日…
トルコの内政の展開は、シリアをめぐる外交の変化との関連で重要性を持つ。シリア内戦の今後を方向づける諸要因の中で、トルコの姿勢は、決定的とまでは言えないが、最重要の要素の一つである。トルコは7月後半に、南部インジルリク空軍基地の対シリア「イスラーム国」空爆へ…
11月の再選挙の公算が高まってきたトルコだが、6月7日の総選挙で単独過半数を失った与党AKPの支持率が上昇していることもその背景にある。トルコの世論調査会社MAKが8月4−8日にかけて行った調査によれば、今再選挙を行えば単独過半数を取り戻しそうな勢いだという。先週の…
トルコで8月13日、与党公正発展党(AKP)と野党第1党共和人民党(CHP)の連立交渉が不調に終わり、やり直し再選挙が行われる公算が大になってきた。Coalition talks between AKP and CHP fail, elections 'highly likely', Hurriyet Daily News (Reuters), August 13, 2015.T…

「フォーサイト」は、月額800円のコンテンツ配信サイトです。簡単なお手続きで、サイト内のすべての記事を読むことができます。
フォーサイト会員の方はここからログイン
- 24時間
- 1週間
- f
-
1
ロス抗議デモはNY、シカゴなどにも拡大 現実味を増す「アメリカは内戦に向かうのか」
- 2 伝統と革新を「和える」京菓子の挑戦
-
3
マオイズム化するMAGA――トランプ対ハーバード大学の「階級闘争」
-
4
ブレイクスルーを待つ「ペロブスカイト太陽電池」――ライバル技術と残された課題は?|村上拓郎・産総研ペロブスカイト太陽電池研究チーム長(2)
-
5
現代版「トロイの木馬」か「真珠湾攻撃」か:戦争の形を変えるウクライナAIドローン作戦
-
6
はたして少年A=酒鬼薔薇聖斗は、更生しているのか
-
7
トランプ大統領の発言とアクション(6月5日~6月11日):米中閣僚協議で鮮明になった「MAA(相互確証型のいさかい)」戦略
- 8 人手不足の自衛隊「定年延長」が「かえってマイナス」とも言われる理由
-
9
Q.17 酒鬼薔薇聖斗は社会復帰しているか
- 10 佳子内親王はどこへ行く? 「アイドル化」と「バッシング」の間を揺れ動く報道から見えてくるもの
-
ルペンと極右ポピュリズムの時代:〈ヤヌス〉の二つの顔
¥2,750(税込) -
ウンコノミクス (インターナショナル新書)
¥1,045(税込) -
世界の力関係がわかる本 ――帝国・大戦・核抑止 (ちくまプリマー新書 492)
¥990(税込) -
世界を変えたスパイたち ソ連崩壊とプーチン報復の真相 (朝日新書)
¥1,067(税込) -
ピークアウトする中国 「殺到する経済」と「合理的バブル」の限界 (文春新書 1481)
¥1,210(税込) -
小泉悠が護憲派と語り合う安全保障
¥1,540(税込) -
2030年の戦争 (日経プレミアシリーズ)
¥990(税込) -
ゴジラvs.自衛隊 アニメの「戦争論」 (文春新書 1480)
¥1,243(税込) -
情報分析力 (単行本)
¥1,760(税込)