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池内恵の中東通信

池内恵(いけうちさとし 東京大学教授)が、中東情勢とイスラーム教やその思想について日々少しずつ解説します。

執筆者プロフィール
池内恵
池内恵 東京大学先端科学技術研究センター グローバルセキュリティ・宗教分野教授。1973年生まれ。東京大学大学院総合文化研究科地域文化研究専攻博士課程単位取得退学。日本貿易振興機構アジア経済研究所研究員、国際日本文化研究センター准教授を経て、2008年10月より東京大学先端科学技術研究センター准教授、2018年10月より現職。著書に『現代アラブの社会思想』(講談社現代新書、2002年大佛次郎論壇賞)、『イスラーム世界の論じ方』(中央公論新社、2009年サントリー学芸賞)、『イスラーム国の衝撃』(文春新書)、『【中東大混迷を解く】 サイクス=ピコ協定 百年の呪縛』 (新潮選書)、 本誌連載をまとめた『中東 危機の震源を読む』(同)などがある。個人ブログ「中東・イスラーム学の風姿花伝」(http://ikeuchisatoshi.com/)。

ドイツ議会によるトルコのアルメニア人「虐殺」認定

6月2日、ドイツ連邦議会はオスマン帝国による第一次世界大戦中のアルメニア人への迫害を「虐殺」と認定する決議を行った。直接的に政府の行動を縛るものではないが、ドイツとトルコの外交関係に支障をきたす影響を及ぼすことは確かだ。第一次世界大戦中の1915年にオスマン帝国…
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ブラジルのテメル大統領代行はレバノン系

ブラジルでルセフ大統領が上下両院で弾劾決議を受け、180日間の職務停止となっている。そのためミシェル・テメル副大統領が大統領代行を務めている。中南米の政治家で、どこかアラビア語風の名前があると、おそらくレバノン系あるいはシリア系であると予想がつく。調べてみる…
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チュニジアのナハダ党が政教分離を掲げる

チュニジアのナハダ党が5月20日から23日にかけて党大会を開いたが、そこで政教分離を方針として明確にし、イスラーム主義政党ではなくムスリム民主主義政党として党の理念を再定義したことが注目されている。CNNのクリスチャン・アマンプールによるナハダ党の指導者ガンヌーシ…
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シリア内戦で反体制派がヌスラ戦線に結集か

シリア内戦では、名目だけの和平協議がジュネーブで行われてきたが、アサド政権は任意の敵対勢力を「テロリスト」と認定すれば攻撃を続けられるという根本的な欠陥のある仕組みであるため、成果は望めない。和平協議の結果として進めることになっている和平プロセス、つまり(…
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パリやベルギーのテロをめぐってフランスのイスラーム研究両巨頭が激突

昨年から今年にかけて、パリとブリュッセルで「イスラーム国」やアル=カーイダに共鳴したテロが続いた。なぜ西欧の若者の一部が過激化するのか。その原因をめぐってフランスで論争が起きている。 論争の当事者は、フランスの現代イスラーム研究の両巨頭と言えるジル・ケペル…
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5月16日はサイクス=ピコ協定から100年の記念日

百年前の1916年の5月16日に、サイクス=ピコ協定が結ばれた。シリアやイラクやイスラエル・パレスチナなど、中東の現在の諸国家を形作る基礎となった、当時の列強の英・仏による合意である。これにはロシアやイタリアなども同意しており、それぞれに当時の中東を支配していた…
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アル=カーイダのザワーヒリーがシリアのヌスラ戦線を引き留める

アル=カーイダの最高指導者アイマン・ザワーヒリーの音声メッセージがインターネット上で5月8日に確認された。今回のメッセージはシリア内戦に関するもので、現地のイスラーム主義系の諸勢力に団結を呼びかけている。"Al Qaeda chief tells jihadist fighters in Syria: Unit…
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チラン海峡二島のエジプトからサウジへの「返還」が示すもの

4月10日の未明、日付が変わってすぐに、「『チラン海峡』に架ける橋:サウジ・エジプト・イスラエルの地政学」を「中東の部屋」欄にアップして安心して眠りについたのだが、中東情勢は油断ならない。特に時差が曲者である。日本とエジプトの間の時差は7時間あるのだが、現地の…
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「サイクス=ピコ協定」から百年――中東問題の困難さを掘り下げる

「中東通信」の更新がひと月ほど滞ってしまった。実は何度か中東通信向けに記事を書いたのだが、そのたびに、短信で海外メディアのニュースを転送・解説するという趣旨に合わないほどの分量を書いてしまって、「中東の部屋」に移すことになってしまった(「『チラン海峡』に架…
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リファーイー・アハマド・ターハーがシリア・イドリブで死亡

エジプトのイスラーム主義過激派・ジハード主義の古参・大物が、シリア内戦で米国の空爆で死亡していたようである。エジプトの「イスラーム集団」をかつて率いた時期がある、ジハード主義の有力活動家リファーイー・アハマド・ターハーが、4月5日にシリアのイドリブで、米国…
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逃亡中の実行犯にはパリの事件の犯人・拠点とのつながりが

ブリュッセルの空港でのテロの実行犯の3名のうちの一人と見られる逃亡中の犯人の名前が、ナジュム・ラアシュラーウィー(Najim Laachraoui; アラビア語綴り・アラビア語読みではおそらくNajm al-Ashrawi ナジュム・アル・アシュラーウィーだろう)であるとベルギーの新聞で…
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ブリュッセルでの自爆犯2名は兄弟か

今回もまた「兄弟」が犯行グループに含まれているようだ。3月22日のブリュッセルの連続テロで、空港と地下鉄駅で自爆した実行犯のうち2名は兄弟であるとベルギーの捜査当局が明かしている。二人はハーリド・エル・バクラーウィーとブラヒム(イブラーヒーム)・エル・バクラ…
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ブリュッセルのテロで「イスラーム国」が公式の犯行声明

ブリュッセルの空港と地下鉄駅での連続テロでは、「イスラーム国」系のアウマーク通信が犯行声明を出したのに続いて、「イスラーム国」のロゴの入った通常の形式での犯行声明が、アラビア語・フランス語・英語でソーシャル・メディア上に流され、アラビア語の声明を読み上げる…
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ブリュッセルのテロで「イスラーム国」系アウマーク通信が声明

ブリュッセルで3月22日朝に起こった、空港と地下鉄駅での連続自爆テロについて、「イスラーム国」の宣伝部隊とみられるアウマーク通信が、そのウェブサイトで犯行声明を出した。声明はまず英語版が発表され、次いでアラビア語版が発表された。内容はほとんど同一であり、二段…
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シリアのクルド人勢力の自治への動きに関する報道

シリア北部のクルド自治区宣言への動きについての主要な報道をまとめておこう。まず、イラク北部のクルド人自治区のメディア『ルダウ』が、シリア北部のクルド人勢力が掌握し「西クルディスターン(Rojava)」と主張する地域を連邦・自治区化するための会議が近くハサケ県ルメ…
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シリアのクルド勢力がシリア北部の自治を宣言へ

ついに来たか、という感じである。"Syrian Kurds set to announce federal system in northern Syria," Reuters, March 16, 2016.シリア北部で勢力範囲を広げるクルド人勢力が、シリアの連邦化を主張し、その中でクルド人が主導する北部の三つの領域を合わせて自治領域とする…
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トルコのクルド系武装組織YPSはシリアYPGの対「イスラーム国」の戦闘から学ぶ

トルコ南東部ディヤルバクルを拠点とする記者によるレポートが不吉である。Mahmut Bozarslan, "With spread of IS-like tactics, urban warfare in Turkey grows bloodier," Al-Monitor, March 7, 2016.これはトルコのクルド版の「帰還兵問題」と言える。「イスラーム国」に周…
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トルコの不法移民収容所はテキルダーにあり

トルコから夜陰に乗じて小舟に乗ってギリシアの島に渡りEU域内に到達しようとする難民・移民の波がEU−トルコ交渉の最大の課題となっている。トルコから見ると、EUは一方で「難民を流出させないでくれ」と頼んでくるのだが、他方でしばしばトルコの難民の扱いについては人権上…
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シリア停戦の違反通報ホットライン窓口はアラビア語をしゃべれない

シリア内戦をめぐっては、米国オバマ政権の「やる気のなさ」が、ロシア・プーチン政権の本気度や戦術的卓越性と対比して際立つ。そんなエピソードがまた一つ報じられた。2月22日の米露合意に基づき、2月27日から2週間を目標とした停戦(cessation of hostilities)が発効して…
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攻勢に出たアサド政権の背後を脅かす反政府勢力にウイグル人部隊が?

シリア内戦の混沌は極まっている。1月に開始されるとされていたジュネーブの和平会議は1月末・2月初頭に開催がずれ込んだ挙句、アサド政権が全力で攻撃と包囲を続ける中で対話が成り立つはずもなく、政権側と反政府側の直接対話に至らずに終わり、ミュンヘン安全保障会議で…
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