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池内恵の中東通信

池内恵(いけうちさとし 東京大学教授)が、中東情勢とイスラーム教やその思想について日々少しずつ解説します。

執筆者プロフィール
池内恵
池内恵 東京大学先端科学技術研究センター グローバルセキュリティ・宗教分野教授。1973年生まれ。東京大学大学院総合文化研究科地域文化研究専攻博士課程単位取得退学。日本貿易振興機構アジア経済研究所研究員、国際日本文化研究センター准教授を経て、2008年10月より東京大学先端科学技術研究センター准教授、2018年10月より現職。著書に『現代アラブの社会思想』(講談社現代新書、2002年大佛次郎論壇賞)、『イスラーム世界の論じ方』(中央公論新社、2009年サントリー学芸賞)、『イスラーム国の衝撃』(文春新書)、『【中東大混迷を解く】 サイクス=ピコ協定 百年の呪縛』 (新潮選書)、 本誌連載をまとめた『中東 危機の震源を読む』(同)などがある。個人ブログ「中東・イスラーム学の風姿花伝」(http://ikeuchisatoshi.com/)。

UAEアブダビは急転回でイランとの対話に邁進

1ヶ月前に、この欄で、UAE(その外交・軍事を指導するのはアブダビ)の興味深い動きについて記しておいた(「対イラン戦争の寸前で身を翻したUAEアブダビ」2019年6月30日)。中東の動きは実に早い。たったひと月の間に、UAEの外交は大きく舵を切り、なりふり構わず、これまで…
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トルコ・エルドアン政権の軌跡は『フォーサイト』の検索で

「中東の部屋」に、「トルコは4年間の「選挙空白」期間へ:2023年の建国100周年を制するのは誰か」を寄稿し、長期的な視野からトルコ政治の現在を位置づけ、将来を見通してみた。筆者は公刊する文章で、同じことを二度書くことはない。そのため、今現在生じている事象につい…
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ドバイとアブダビを拠点にした対中東への情報発信

ここのところ筆者が力を入れているのは、中東圏への情報発信である。特に、ドバイのアラビア語紙『アッ=ルウヤ』に毎週、国際安全保障や中東問題に関するコラムを寄稿するようになって、かなり多くの時間と労力を割くようになった。また、アラビア語版だけでなく、英語版も作…
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対イラン戦争の寸前で身を翻したUAEアブダビ

5月初頭から急激に高まった米国とイランがペルシア湾で睨み合う緊張の高まりは、5月12日に何者かによりUAEフジャイラ沖でのタンカーなど4隻への攻撃が発生したところで一触即発の雰囲気に包まれ、6月12−14日の安倍首相イラン訪問中の6月13日にホルムズ海峡の出口付近のオマー…
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緊張高まるペルシア湾情勢10:中国が備蓄タンクを利用してイラン産重油を取引?

5月8日に岩瀬昇さんが、中国の石油備蓄タンクにイランが所有する石油を「寄託」する形で米国の制裁を逃れて取引を行うのではないかという観測を書いておられた(岩瀬昇『米「原油禁輸制裁」対抗でイラン・中国「秘密取引」の可能性』2019年5月8日)。この記事はなかなか考えさ…
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緊張高まるペルシア湾岸情勢9:スマホ・ハッキング問題でイスラエル・サウジ・イランをつなぐ「点と線」

先日、WhatsAppの脆弱性をついたハッキングの問題をメモしておいたが(「イスラエルNSO社のスマホ・ハッキング技術の有力顧客は湾岸産油国」2019年5月15日 03:35)、同じ頃、この問題を対イラン強硬派の諸国の動きと結びつけて考えてみる観測記事を、『BBC』のウェブサイトが…
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緊張高まるペルシア湾岸情勢8:トランプ政権の「対イラン戦争計画」報道

ここのところの米国とイランの間の緊張の高まりの中で注目を集めた記事はこれだろう。"White House Reviews Military Plans Against Iran, in Echoes of Iraq War," The New York Times, May 13, 2019.5月9日のトランプ大統領を囲む安全保障をめぐる閣僚・顧問の会議で、対イ…
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緊張高まるペルシア湾岸情勢7:サウジ国内の送油施設へのイエメン・フーシー派によるドローン攻撃

米・イラン間の緊張が高まるペルシア湾岸情勢で、エスカレーションを進めかねないのが、米トランプ政権と一致して対イラン圧力を強めるサウジへの、イランの代理勢力とサウジが認識する勢力からの攻撃である。5月14日にサウジ国営通信社が伝えた、ハーリド・アル・ファーレハ…
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緊張高まるペルシア湾岸情勢6:イラン革命防衛隊の「テロ」はトランプ政権に開戦事由となるのか?

ジョン・ボルトン米大統領安全保障問題担当補佐官と、マイク・ポンペオ国務長官が牽引するとされるトランプ政権内の対イラン強硬派が、イランとの緊張を意図的に高め、いわば「意図的に偶発的な衝突を生じさせる」ことを狙っているのではないかという疑念が、フジャイラ沖の「…
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緊張高まるペルシア湾岸情勢5:イラン・ザリーフ外相の最近の動き

5月15日に急遽訪日したイランのザリーフ外相の最近の動き。5月15日から遡る「過去数日以内」に、カタールのムハンマド・ビン・アブドッラフマーン外相がイランを訪問しテヘランでザリーフ外相と会談した模様である。ウデイド空軍基地に米軍を受け入れつつ、米同盟国のサウジや…
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緊張高まるペルシア湾岸情勢4:イランのザリーフ外相が急遽日本訪問

イランのザリーフ外相が、5月15日、急遽来日した。外務省によれば、滞在は17日までの予定という。NHKの報道では、16日に河野外相との会談、安倍首相への表敬訪問が行われる模様である。NHKのウェブサイトは短期間で削除されてしまうことが多いため(これによってNHKは国際的に…
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緊張高まるペルシア湾岸情勢3:イラン・パキスタン辺境にまたがるバルーチスターンで相次ぐテロ

ペルシア湾の出口ホルムズ海峡の外に位置するUAEフジャイラでの事件と関連があるかどうか分からないが、気になるのは、5月11日にパキスタン南西部バルーチスターン州の港市グワダルで起こった、高級ホテル(Zaver Pearl-Continental Hotel)の襲撃事件である。初期の報道では…
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緊張高まるペルシア湾岸情勢2:グローバルリスク分析を手掛かりに

フジャイラ沖船舶への「破壊工作」の実態が一向に明らかにならないまま緊張が高まるペルシア湾岸情勢は「霧の中」にある。水面下での工作が絡む場合、大国の諜報機関ですらそう即座に明らかにできないものであるから、目先の情報に踊らされることは時間と労力の無駄である。公…
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緊張高まるペルシア湾岸情勢1:フジャイラ沖の「破壊工作」の謎

米国トランプ政権が、イランへの圧力を強めていく中で、5月12日にUAE(アラブ首長国連邦)のフジャイラ港沖で発生したとされる、サウジ2隻、UAEシャルジャ1隻及びノルウェーの4隻の船舶を対象とした「破壊工作」を境に、偶発的な衝突の危険性への警戒が高まっている。5月14…
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イスラエルNSO社のスマホ・ハッキング技術の有力顧客は湾岸産油国

今年の10連休は、休みなく2回の中東出張で費やした。トルコとイスラエルにそれぞれの用事で出向いて忙しく過ごしたのだが、特に現地での(現地との)やりとりに欠かせないのが無料で通話やテキストメッセージのやりとりをする対話アプリのワッツアップ(WhatsApp)である。現…
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エジプトがサウジ主導の「アラブ版NATO」計画から離脱

今週の中東からのニュースで、地域国際政治の長期的・構造的な変化に大きな意味を持つのはこのニュースだろう。"Exclusive: Egypt withdraws from U.S.-led anti-Iran security initiative - sources," Reuters, April 11, 2019.エジプトが「アラブ版NATO」とも呼ばれる、サウ…
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4月9日のイスラエル総選挙:ネタニヤフ退陣はあるか

最近の中東の関心事といえば、4月9日のイスラエル総選挙だろう。注目・関心は一点「ついにネタニヤフ首相が退陣するか」どうかにある。イスラエル検察は2月28日、ネタニヤフ首相を汚職疑惑で起訴する方針を発表した。選挙では、ネタニヤフのかつての側近たちを含む対抗勢力が…
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ドバイのアラビア語紙に連載を開始

日々に新しい動きが身の回りに起こるのだが、最近の特筆すべき出来事は、ドバイのアラビア語日刊紙『アッ=ルウヤ(意見)』のコラム二ストになって、毎日曜日にコラムを寄稿するようになったことだ。2月に始め、すでに6回のコラムを寄稿している。最近も昨日3月31日に掲載さ…
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グローバルセキュリティ・宗教分野とは

グローバルセキュリティ・宗教分野では、私の主要なフィールドである中東を中心に、ロシア・東欧・バルカン、あるいはアフリカや南アジアなども対象に含んでいる。そういうこともあって、特任助教に、『フォーサイト』への寄稿でもおなじみの小泉悠氏を採用した。日本の国立大…
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様々な新たな試み

しばらくお休みしていた「中東通信」欄だが、新学期の季節ということもあり、肩に力を入れず再開してみよう。ここのところの忙しさは何よりも、昨年10月1日に、所属先の東大・先端研に「グローバルセキュリティ・宗教分野」を設立したことによる。それまでは「イスラム政治思…
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