池内恵の中東通信
池内恵(いけうちさとし 東京大学教授)が、中東情勢とイスラーム教やその思想について日々少しずつ解説します。
サウジアラビアのアーディル・ジュベイル外交担当国務相(元外相)が、1月23日にダボス会議でイランに「普通の国」になれ、と告げたことが少々話題になっている。サウジ系のメディアでは、当然のことだが「言ってやった」と囃し立てる。"Jubeir Says Restoring Ties with Iran…
年末年始の、カルロス・ゴーン逃亡事件と、ソレイマーニー司令官暗殺によって急加速した米・イラン対立の緊迫化の合間に、このような論考を走り書きしていた。池内恵「トルコのリビア内戦介入と東地中海地域のエネルギー国際政治」『中東協力センターニュース』2020年1月号、1…
昨年から注目してきた、サウジアラビアやイスラエルが絡んだ国際政治における、スマホ・ハッキング問題であるが、「Amazon.com」の創設者であり、『ワシントン・ポスト』のオーナーでもあるジェフ・ベゾス氏のスマートフォンを、サウジのムハンマド・ビン・サルマーン皇太子と…
この欄では、元来は「有料・会員限定ツイッター」のようなものにしたかったのだが、毎度、本格的な論考に近いものを載せることになってしまい、いきおい更新頻度が下がる。今度こそつぶやきに戻していきたい。先月・昨年末からつぶやきたかったのは「サウジ・アラムコ株は『日…
カーブース前国王の死去が1月10日に発表されたが、11日に召集された王室会議で、前国王の従弟で、遺産文化相を務めていたハイサム・ビン・ターリク・ビン・タイムール(Asa'ad bin Tariq bin Taimur Al Sa'id)が、新国王に選出されたとの発表があった模様だ。アラブ部族の権…
大晦日と正月に、ゴーン逃亡事件という日本が直接に関係した茶番劇と、ソレイマーニー司令官暗殺で急激に高まった米・イラン直接戦争の危機が持ち上がり、この欄で書くべきことがすでに山積みになっているが、さらに長期的に重要な出来事が矢継ぎ早に起きているので、まとめら…
今回のロウハーニー大統領の来日は、イランの大統領としては2000年のハータミー大統領以来19年ぶりの来日であり、ロウハーニー大統領にとっては初の来日である、ということが、日本での報道・論評では決まって取り上げられていた。ただし、大統領になる以前にはロウハーニーは…
ロウハーニー大統領が12月20−21日に来日し、安倍晋三首相との首脳会談、拡大会合、夕食会等の盛りだくさんな日程による接遇を受けた。これについて、筆者は英語でコメントを出しているが、基本的な印象は、あくまでも日・イランの「二国間関係」に(少なくとも表向きは)限定…
今回の現地調査では、カタール・ドーハでの用事を終えた後、トルコのイスタンブールとアンカラを巡った。カタールで目立つのはトルコの影響力の増大である。ドーハ・フォーラムでも、総合司会がトルコの国営放送TRTワールドのキャスターであるのに始まり、エルドアン大統領の…
カタール訪問の件は、ここフォーサイトが日本語で、しかも会員制だからこそ書けるという面もある。カタールに頻繁に出かけているということを、アラブ世界向けに英語やアラビア語で公にする文章では、書きにくい。サウジ側やUAE側の人たちから「カタール側の人間ではないか」…
先月に続き、カタールのドーハを訪問した。毎月のようにカタールに行くというのは多い気もするが、カタールが国際政治・安全保障上の戦略として力を入れる、「国際会議」「国際スポーツ大会」は、ドーハだけでなくロンドンやイスタンブールなどにも投資して支援し拠点形成とネ…
先ほど書いた、サッカーのアラブ・湾岸地域の国際大会への参加を通じて、サウジ・UAEがカタールへの歩み寄りを図っている噂が事実であったことが、公式報道で確認された。カタール系メディアが一足先に報じ、サウジ、およびUAEのメディアが続いて一斉に報じたところでは、サウ…
サウジ・UAE主導のカタール制裁は2年以上続くが結局カタールを屈服させることはできず、カタールの背後にいるとサウジが危惧したイランやトルコとの関係でも、むしろサウジ側が不利になる中で、なし崩しに制裁解除を行うタイミングを双方が図っているようである。"Qatar Takin…
カタールに行く時に留意せざるを得ないのは、サウジアラビアやUAEなどの隣国との関係である。2017年6月に、サウジ・UAEが、サウジの属国的立場にあるバーレーンや、サウジ・UAEの資金注入に国家経営を依存するエジプトを従わせて、カタールとの外交・通商貿易関係を切断した。…
国際会議のためにカタールのドーハに来ている。先週はモスクワ出張で、帰国した直後に今度はドーハに向かった。カタール政府(首長府)は「ドーハ・フォーラム」をはじめとした国際会議をスポンサーして、各国から関係者を集めて毎年いくつもの国際会議を開く。そういった招待…
ロシア出張の途中で、各地を転々としながら書いているのだが、昨夜の「国際政治ch」の感想をもう1つ。「国際政治」をテーマにしたチャンネルを立ち上げるというのは、制作会社の方にとって容易なことではなかったはずである。みたところまったくのテレビ業界人で、芸能やバラ…
昨夜はウェブ放送の「国際政治ch」に出演していた。対談のお相手は、北朝鮮の政治外交を研究している宮本悟さん(聖学院大学教授)。「国際政治ch」は国際政治学者の細谷雄一さん、同じく国際政治学者の篠田英朗さん(フォーサイトでも欄を持っていらっしゃる)などと立ち上げ…
きわめて短い出張のためにロシアに向かっている。もちろん私はロシアは全くの専門外で、土地勘も、気候条件もないので、とりあえず寒いと聞いて(すでに氷点下らしい)、むやみにかさばる防寒着をトランクに詰め込んで、弾丸出張とは思えない山ほどの量の荷物を抱えて移動して…
10月9日のトルコのシリア北東部への侵攻・越境作戦そのものの現状と背景については、10月6日のトランプの決定が米国の政治問題として騒がれているが故に、注目されていないきらいがあるが、これについては『フォーサイト』に「トルコ「シリア侵攻」エルドアン大統領の「トラウ…
10月6日夜の、シリア北東部から米軍を撤退させるとのホワイトハウスの発表と、それに続く9日のトルコのシリア北東部への侵攻は、米政界と欧米を拠点とする国際メディアに大騒動を巻き起こした。その多くはトランプの「衝動的で、軽率な」撤退の判断を非難する、しばしば嘲笑す…
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