池内恵の中東通信
池内恵(いけうちさとし 東京大学教授)が、中東情勢とイスラーム教やその思想について日々少しずつ解説します。
カタールに行く時に留意せざるを得ないのは、サウジアラビアやUAEなどの隣国との関係である。2017年6月に、サウジ・UAEが、サウジの属国的立場にあるバーレーンや、サウジ・UAEの資金注入に国家経営を依存するエジプトを従わせて、カタールとの外交・通商貿易関係を切断した。…
国際会議のためにカタールのドーハに来ている。先週はモスクワ出張で、帰国した直後に今度はドーハに向かった。カタール政府(首長府)は「ドーハ・フォーラム」をはじめとした国際会議をスポンサーして、各国から関係者を集めて毎年いくつもの国際会議を開く。そういった招待…
ロシア出張の途中で、各地を転々としながら書いているのだが、昨夜の「国際政治ch」の感想をもう1つ。「国際政治」をテーマにしたチャンネルを立ち上げるというのは、制作会社の方にとって容易なことではなかったはずである。みたところまったくのテレビ業界人で、芸能やバラ…
昨夜はウェブ放送の「国際政治ch」に出演していた。対談のお相手は、北朝鮮の政治外交を研究している宮本悟さん(聖学院大学教授)。「国際政治ch」は国際政治学者の細谷雄一さん、同じく国際政治学者の篠田英朗さん(フォーサイトでも欄を持っていらっしゃる)などと立ち上げ…
きわめて短い出張のためにロシアに向かっている。もちろん私はロシアは全くの専門外で、土地勘も、気候条件もないので、とりあえず寒いと聞いて(すでに氷点下らしい)、むやみにかさばる防寒着をトランクに詰め込んで、弾丸出張とは思えない山ほどの量の荷物を抱えて移動して…
10月9日のトルコのシリア北東部への侵攻・越境作戦そのものの現状と背景については、10月6日のトランプの決定が米国の政治問題として騒がれているが故に、注目されていないきらいがあるが、これについては『フォーサイト』に「トルコ「シリア侵攻」エルドアン大統領の「トラウ…
10月6日夜の、シリア北東部から米軍を撤退させるとのホワイトハウスの発表と、それに続く9日のトルコのシリア北東部への侵攻は、米政界と欧米を拠点とする国際メディアに大騒動を巻き起こした。その多くはトランプの「衝動的で、軽率な」撤退の判断を非難する、しばしば嘲笑す…
10月21日夜、イスラエルでベンヤミン・ネタニヤフ首相が、9月17日投票のやり直し総選挙結果に基づく連立内閣の組閣を断念したことをリューベン・リブリン大統領に告げた模様だ。4月9日投票の総選挙でネタニヤフの与党リクード党は、ネタニヤフ政権からの離反者を多く含む野党…
9月14日に行われた、サウジアラビア東部州アブーカイク(Abqaiq)とフライス(Khurais)の石油施設へのドローンと巡航ミサイルによる攻撃は、トランプ大統領の反応や、イスラエルのネタニヤフ首相の退任の見通しと合わせると、ペルシア湾岸地域・中東地域の国際政治に大きな影…
ネタニヤフ首相率いる右派リクードが第1党の座を失い(31議席)、旧ネタニヤフ陣営を多く含む「青と白」連合がガンツ元参謀総長を党首として第1党に躍進(33議席)したイスラエル内政は、イスラエル議会(クネセット)全120議席の過半数61議席を、誰を首相とし、どの政党を組…
9月17日投票のイスラエル選挙結果を受けた連立交渉では、大統領が各党の党首に聴取し、最も連立政権樹立の可能性が高い首相候補を選んで、通常4週間から6週間程度の締め切りを設け、期限内に連立の合意を議会に届け出るよう依頼する。初動で首相候補の指名が遅れれば交渉の開…
9月17日のイスラエル総選挙の投票が行われ、ネタニヤフ首相の敗北が決定的となった。10年に及んだネタニヤフ時代がついに終焉を迎えようとしている。この欄では、中東情勢の決定的要因は9月17日のイスラエルの総選挙投票であり、外見上様々な派手な動きがあるにしても、実際は…
中東情勢は「緊張高まる」「混迷深まる」といった常套的な形容句を付して報じられ、論じられがちである。しかし実際には、しばしば緊張は緩み、混迷が若干和らぐ「凪」の状態の時期がある。現在はそういう時期だろう。この関係で、現在の中東情勢を見るためのもう1つの日付は…
現在の中東政治を見る際に、2つの日付を頭の隅に(あるいは真ん中に)置いておくといいだろう。1つは「2019年6月20日」である。この日に、イランが米国の無人偵察機(ドローン)を撃墜したのに対して、トランプ大統領が一旦イラン攻撃を支持しながらそれを寸前で取りやめた、…
米・イランの緊張が続くペルシア湾で、米国主導の海洋監視の「有志連合」に、イスラエルが参加を表明し、いわば「炎上」のための「燃料投下」のような効果をもたらしている。8月6日に、イスラエルのイスラエル・カッツ外相(運輸相・情報相を歴任し、今年2月から情報相と外相…
ペルシア湾情勢におけるUAEの急展開の重要性について、補足するために、奇妙な状況を顕著に示す文献を紹介しておこう。今年1月に米の保守系『ナショナル・インタレスト』誌に掲載された次の論考である。"The UAE Will Triumph Over Iran in the Next Middle Eastern War," The…
1ヶ月前に、この欄で、UAE(その外交・軍事を指導するのはアブダビ)の興味深い動きについて記しておいた(「対イラン戦争の寸前で身を翻したUAEアブダビ」2019年6月30日)。中東の動きは実に早い。たったひと月の間に、UAEの外交は大きく舵を切り、なりふり構わず、これまで…
「中東の部屋」に、「トルコは4年間の「選挙空白」期間へ:2023年の建国100周年を制するのは誰か」を寄稿し、長期的な視野からトルコ政治の現在を位置づけ、将来を見通してみた。筆者は公刊する文章で、同じことを二度書くことはない。そのため、今現在生じている事象につい…
ここのところ筆者が力を入れているのは、中東圏への情報発信である。特に、ドバイのアラビア語紙『アッ=ルウヤ』に毎週、国際安全保障や中東問題に関するコラムを寄稿するようになって、かなり多くの時間と労力を割くようになった。また、アラビア語版だけでなく、英語版も作…
5月初頭から急激に高まった米国とイランがペルシア湾で睨み合う緊張の高まりは、5月12日に何者かによりUAEフジャイラ沖でのタンカーなど4隻への攻撃が発生したところで一触即発の雰囲気に包まれ、6月12−14日の安倍首相イラン訪問中の6月13日にホルムズ海峡の出口付近のオマー…
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