池内恵の中東通信
池内恵(いけうちさとし 東京大学教授)が、中東情勢とイスラーム教やその思想について日々少しずつ解説します。
昨年12月1日に調印されて専門家の注目を集めた、スーダンの紅海岸の主要都市ポート・スーダン付近にロシア海軍の基地を建設する計画が停止されたとの報道がある。4月28日に中東メディアで報じられている。米国やエジプトやサウジのみならず、トルコやUAEなどが紅海・アフリカ…
ザリーフ外相が革命防衛隊、特にクドゥス部隊のガーセム・ソレイマーニー司令官の外交への介入を批判したインタビューがリークされた問題について、補足とアップデートをしておこう。続報によれば、ザリーフ外相のインタビューは、大統領府の戦略研究センター(Center for Str…
4月25日には「薄れゆく『イラン対サウジの覇権競争』」と題して、「中東 危機の震源を読む」欄への久々の寄稿として、遅ればせながらのサウジの対イラン接近の表面化について記しておいた。ここでは対イラン圧力政策、イエメン内戦介入政策、イスラエルへの接近政策のいずれ…
イランのザリーフ外相が、イスラーム革命防衛隊による支配を批判するインタビューの録音がリークされ、話題になっている。"Iran’s Foreign Minister, in Leaked Tape, Says Revolutionary Guards Set Policies," The New York Times, April 25, 2021.ザリーフのインタビュー…
「中東通信」欄は元来は、ごく短い文章でその時々の中東情勢の断面・断片を切り取るアフォリズム(警句)のような、最近でいえばTwitterの呟きのようなものと考えて設立してもらった欄なのだが、書くとなるとつい力を入れて本格的になってしまう。暫くはなるべく簡略に。メモ…
例年4月24日は、世界各地のアルメニア人が、第一次世界大戦中の1915年以降に生じた「アルメニア人虐殺」を思い起こし世界に呼びかける記念日である。バイデン大統領は、今年のアルメニア人虐殺の記念日に寄せた声明で、米大統領として初めて公式にこれを「虐殺(genocide)」…
ありがたいことに、岩瀬昇さんが、私が企画し、今週を通して開催している「イスラエル・ウィーク@東大駒場リサーチキャンパス」のウェビナーを覗きにきてくださっており、しばしば専門的で本質的な質問も書き込んでくださる。大勢の登壇者たちがせめぎ合う壇上で、このような…
ROLESの設立という近況報告の後で早速だが、3月1日−5日に「イスラエル・ウィーク」と題して、イスラエルの最有力の研究者・実務家とオンラインで話し合う連続ウェビナーを開催します。今まさに東大先端研で、お隣の生産研も巻き込んで、鋭意準備中です。情報はこちらに集結さ…
この欄への寄稿がなかなかできないてきた。中東情勢はいよいよ興味深い展開を示しており、皆様に解説したい事象は目白押しである。しかしいい加減なことはかけない。『フォーサイト』への寄稿であればこそ、単にニュースを拾って直近の意味を解説するだけでなく、事象の背景・…
考えてみると、2020年12月17日は「アラブの春」からちょうど丸10年の、節目の日である。限界まで引き伸ばして待ってもらった締切りを2本、日本語と英語で放り込んで、一息ついてニュースを整理していて気づいた。「アラブの春」は、チュニジアとエジプトで相次いで政権が崩壊…
本日、この後7時30分から、WEB化10周年オンラインセミナー『2020年「石油価格戦争」その後とこれから』で、小泉悠さんと一緒に、岩瀬昇さんのお話を伺う(オンラインで)。その「予習」として、少なくとも私がこれまで岩瀬さんと公開の場で議論してきた記事については振り返っ…
トランプ大統領がノーベル賞候補に挙がっている、という報道がある。ホワイトハウスもそれを認めている。トランプ大統領がノーベル賞を受賞するか? という設問には「分からない」と答えるしかない。ノーベル賞の選考過程を知らないのであるから当然である。選挙と人事に加え…
8月13日にトランプ大統領によって発表され、9月15日にホワイトハウスで調印式が行われる予定の、イスラエル・UAE国交正常化合意だが、そもそもこの合意によって外交的には何が合意されるのだろうか。「中東和平」という単語は、しばしば「パレスチナ問題」とほぼ同一であるか…
イスラエルの外交・安全保障政策の最重要の課題は、イランであるということに、表向きはなっている。イスラエルの外交官も、専門家も、口を揃えて、イランの脅威について同じようなことを言う。しかし、イスラエルの専門家、特に国家の長期的な戦略を考える立場の人たちの発言…
イデオロギーや政治的・外交的党派の違いを超えて、認めなければならないのは、「2020年はイスラエル外交の年」と言えるということである。イスラエルの積み重ねて来た数多くの施策が、ここで一気に噛み合いつつある。それはイスラエルが深く食い込んだトランプ政権が再選の選…
2020年は「イスラエル外交の最高の時」となりそうだ。先月のUAEに続き、9月11日に、バーレーン(バハレーン)が、イスラエルとの国交正常化(normalization)に踏み切った。米トランプ大統領が、バーレーンのハマド・ビン・イーサー・アール=ハリーファ首長及びイスラエルの…
【編集部注:本稿は『WEB版フォーサイト』10周年記念特集『フォーサイトで辿る変遷10年(2)中東の激変とそれでも変わらない現実』のつづきです】月刊誌『フォーサイト』は休刊の際にその先20年間の世界情勢を展望していたが、現在はその半ばの「折り返し地点」に達したことに…
この欄の更新がまたも滞ってしまった。大型プロジェクトを請け負って、組織形成と立ち上げ初期イベントを公開・非公開で行い奔走していたのと、コロナ下で中東との往来も、中東の中での移動も大幅に制約され、中東情勢の展開が滞り、見えにくくなっていたことが大きな原因であ…
ここのところの目立ったスクープと言えば『ロイター』のこの記事だろう。“Special Report: Trump told Saudi: Cut oil supply or lose U.S. military support – sources,” Reuters, April 30, 2020.トランプ大統領は4月2日に、サウジのムハンマド皇太子(MBS)との電話会談…
しばらくこの欄での「つぶやき」に間が空いてしまった。4月は研究室で2つの大型予算を受け入れてプロジェクト組織を行政的に立ち上げる作業に専念していた。1つは石油会社との産学連携、もう一つは外務省の調査研究事業の受注であり、こういった産官学での組織的な取り組みの…
- 24時間
- 1週間
- f
- 1 水素社会へ突き進むドイツが直面する難題
-
2
はたして少年A=酒鬼薔薇聖斗は、更生しているのか
-
3
インドは世界経済の新たな牽引車になれるのか(上)――中国との歴史的交代を考える
- 4 生成AIは人間の「浅はかさ」を暴露する装置でもある――「バーベンハイマー」が浮き彫りにしたもの
- 5 データ可視化で読み解く「ソロ活」現象
-
6
2019年よりも厚遇された金正恩訪露(2023年9月17日~9月23日)
-
7
徹底した「官僚不信」の根底にあるもの――『安倍晋三 回顧録』の歴史的な意味(後編その3)
-
8
ウクライナへの「安全の保証」をめぐる攻防――日本はなぜ「安全のコミットメント」も避けるのか
-
9
「責任あるAI」と人間観・社会観の変貌
- 10 「信用スコア」導入で後押しするナイジェリアの農家の「マインドセット改革」