「10月7日」の中東地域への影響について寄稿
2024年6月11日 13:15ガザ紛争についての分析を、私よりも若い世代の、中堅の中東研究者が中心になって編んだ論集が近く刊行される。
◎鈴木啓之編『ガザ紛争』(東京大学出版会、U.P. Plus、2024年6月25日)

U.P. Plusは、大学出版会の通常の刊行物とは異なり、廉価なペーパーバックで、最新の知見を早期に市場に出すことを目的としており、シリーズ創刊時から私も何度か参加して本を作っている。
今回は、私は「番外編」的な序章「一〇・七が中東地域に及ぼす影響」を寄稿している。中東の各国に焦点を当てた研究者は、どうにか主要国をカバーする程度には育って来ているものの、各国を横断する「地域」の政治・外交についての研究者は少ない。そのため、この部分で、イスラエル・湾岸関係を中心に調査研究を進めていた私が、補論のように補った形である。
「10月7日」以来、研究会やシンポジウムなど、多くが非公開あるいは記録が公刊されていない口頭の発言・報告や、SNSでの無数の議論、非公開の報告書などを、切れ目なく書き続けて来たが、それらを文章にまとめて刊行する時間が取れていなかった。
この本では、無理やりに時間をとって、ここ8カ月の、口頭の報告やSNSでの議論で断片的に示して来たものをまとめてみた。若手・中堅主体による他の章と共に、ぜひ読んでいただきたい。
2023年の「10・7」の直後からのイスラエルのガザ攻撃の戦争目的が何であるかは、議論になってきた。表向きの「人質の奪還、ハマースの殲滅」といった短期的目標がイスラエルの軍事的及び政治的な目標の全貌を表していないことは明らかである。 3月にイスラエル紙『ハアレツ』…
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