ベナン:与党が議席を独占、奴隷貿易を観光資源化
前編で概説した西アフリカの全体情勢を念頭に、今回私が訪問した3カ国を、事例として取り上げてみよう。それら3カ国の中で、対テロ戦争の余波が一番具体的に及んできているのは、ベナンだ。
ベナンは比較的安定した政権を維持できているが、事実上の首都コトヌーを中心とする沿岸部に政治経済の主な活動が集積しており、北部との格差が見られる。そこに北部で国境を接するブルキナファソ、ニジェール、ナイジェリアの騒乱の影響が及んできている。マリからはJNIMが、ニジェールからはISGS(「イスラム国サヘル州」)が、国境を越えてベナン領内に侵入してきている。密輸ネットワークの構築が主な目的とされ、ベナン人のほうでもテロ組織の呼びかけに呼応し、一定の連携関係を持つ動きがあるとされる。
ベナン軍がテロリスト掃討軍事作戦を行っているが、広域ネットワークを持つテロ組織を撲滅するのは、難しい。国境を管理することだけでも、簡単ではない。兵士に負担がかかっているが、待遇面での不満が高まっているようだ。昨年12月に発生したクーデター未遂事件は、そうした不満を持つ兵士が首謀したものだった。
クーデターを試みた兵士は、テレビ局を占拠して声明を出したが、パトリス・タロン大統領の殺害あるいは拘束には失敗した。タロン大統領の身辺警護は、精強なルワンダ軍兵士があたっている。隣国のナイジェリアは、クーデター派の拠点とされる軍宿営地に限定的ながら空爆を行った。そしてベナン軍によってクーデター派は駆逐された。
タロン大統領は、約10年間の在任中に、独裁的な手法を強めてきた。3選を見合わせる代わりに議員任命制の上院を設立し、元大統領として自らも上院議員になって、影響力の維持を図ると見られている。
「フォーサイト」は、月額800円のコンテンツ配信サイトです。簡単なお手続きで、サイト内のすべての記事を読むことができます。