仏「男女同数」内閣に隠されたオランドの狙い
オランド新政権の下で、閣僚を男女同数の17人ずつとしたエロー社会党内閣が誕生した。一見、これは左派にありがちな「男女平等への意欲を示すパフォーマンス」のように見える。しかし、真の狙いはもっと周到で、戦略的だ。政界と政治のあり方を大きく変革しようとする野心が秘められていると考えるべきだろう。
「世代交代」「移民登用」「男女平等」
5月16日に発足したエロー社会党内閣は、サルコジ政権時代のフィヨン右派内閣との違いを、その布陣で鮮明に打ち出した。
1つは、閣僚経験者が極めて少ないことだ。経験者は、首相に次ぐ席次2位の外相となったファビウス元首相ら5人だけ。その他は、エロー首相を含めて今回が初入閣である。オブリ党首(第1書記)ら大物の担ぎ出しに失敗したからでもあるが、次世代を起用することで、権力闘争にかまけてきた世代を排することにもつながった。
移民や海外県出身者も大胆に登用し、開明ぶりをアピールした。海外県仏領ギアナ出身で席次4位のトビラ法相をはじめ、3人が黒人だ。アラブ系も3人を数える。ペルラン中小企業担当相は韓国系で、仏人家庭に養子として引き取られた経歴を持つ。サルコジ前政権が登用した移民系や黒人の閣僚はお飾りの色彩が強かったが、今回は実務派が中心で、幅広く人材を捜した形跡がうかがえる。
しかし、何より市民を驚かせたのが、34人の閣僚を男女同数としたことだった。
女性権利相を創設し、最年少34歳のヴァロー=ベルカセム氏を任命、内閣の顔である政府報道官を兼ねさせた。ヴァロー=ベルカセム氏はリヨン副市長としてコロン市長の片腕となり、その能力が注目されてきたモロッコ生まれの移民女性である。席次の上位にはこのほか、先のトビラ法相や、トゥーレーヌ社会保健相、緑の党出身のデュフロ地域間格差是正住宅相らの女性が並んだ。
この試みは、一般的に好意的に受け止められた。野党の右派「大衆運動連合」のアコワイエ国民議会議長でさえ「男女同数をあえて実現したことには敬意を表する」と評価した。
ただ、これを女性問題だけからとらえると、問題を見誤る。そこには、もっとしたたかで意欲的な意図がある。
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