低価格小型車ブランドとして「ダットサン」を復活させたゴーン氏(c)AFP=時事
低価格小型車ブランドとして「ダットサン」を復活させたゴーン氏(c)AFP=時事

 2012年3月期決算は日産自動車にとって歴史的な出来事になった。営業利益、最終利益でトヨタを抜き、国内自動車メーカーのトップに立ったからだ。1970年代以降トヨタに負け続けてきた歴史、経営破綻に直面し、格下にみていたフランスのルノーの支援を受けざるを得なかった屈辱の出来事を「完全に払拭した」(日産関係者)。だが、ルノー・日産グループのトップ、カルロス・ゴーン氏にとってここは通過点に過ぎないだろう。トヨタを販売台数で抜き去り、さらに米ゼネラル・モーターズ(GM)、ドイツのフォルクスワーゲングループを上回ることが次の目標になっているからだ。ルノー・日産はグローバル・ナンバーワンを目指し始めた。

日本メーカー同士の戦いには興味なし

 最初に12年3月期の日産の連結決算をみてみよう。日産の売り上げは9兆4090億円と前年度比7.2%増、これに対しトヨタは2.2%減の18兆5836億円、ホンダは11.1%減の7兆9480億円となった。東日本大震災やタイ大洪水など厳しい環境のなかで絶好調だった日産、対照的に沈んだトヨタ、ホンダの明暗が歴然とした。最終利益で日産が7.0%増の3414億円だったのに対し、トヨタは30.5%減の2835億円、ホンダは60.4%減の2114億円となった。トヨタ、ホンダは災害の影響が相対的に大きかったという事情はある。だが、最終利益で売り上げがほぼ2倍のトヨタを上回り、インドネシアやベトナムなど新興国、途上国で二輪車が好調なホンダにも大差をつけた日産の実力は本物だろう。
 ただ、日産は日本メーカー同士の戦いにはもはや重きを置いていない。グローバル市場ではGMとフォルクスワーゲンが強敵として控え、韓国の現代・起亜自動車グループの追い上げも激しいからだ。ルノー・日産グループのポジションは上位2社と現代・起亜に挟まれる難しいものだ。

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