「麻薬国家」と呼ばれる国

執筆者:白戸圭一2012年6月15日

  西アフリカのギニア湾岸に位置する小国ギニアビサウの政治の行方が静かな注目を浴びている。残念ながら悪い意味での注目である。この小国は今、世界の捜査機関の間で「麻薬国家」と呼ばれているのだ。

 ギニアビサウの国土面積3万6125平方㌔は九州にほぼ等しく、人口154万7000人(2011年推計)は京都市よりやや多い。2010年の国内総生産(GDP)総額8億8000万㌦(約700億円)は、日本の小さな自治体の規模に過ぎない。国民の10人に7人は1日2ドル以下で生活している世界最貧国の一つだ。

元々はポルトガルの植民地であり、解放闘争の末に1973年独立を宣言した。独立後の歴史は複雑だが、ひと言で言えばクーデターの繰り返しである。この国では1994年に初の複数政党制による大統領選が実施されて以降、任期満了した大統領がいない。

 現状を理解するために過去3年間の政治の動きを簡単に記すと、2009年3月2日、ビエイラ大統領が国軍兵士らに射殺されるクーデターが発生した。暫定大統領による統治を経て大統領選が行われ、同年9月にサンハ元暫定大統領が大統領に就任した。

 だが、サンハ大統領は病気がちで、今年1月9日、入院先のフランス・パリの病院で病死した。ペレイラ国会議長が暫定大統領に就任し、3月の大統領選ではゴメス元首相が49%を獲得したが、わずかに過半数に届かなかったため、規定により上位2人による決選投票が4月29日に実施されることになった。

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