「麻薬国家」と呼ばれる国

執筆者:白戸圭一 2012年6月15日
エリア: 中南米 アフリカ

  西アフリカのギニア湾岸に位置する小国ギニアビサウの政治の行方が静かな注目を浴びている。残念ながら悪い意味での注目である。この小国は今、世界の捜査機関の間で「麻薬国家」と呼ばれているのだ。

 ギニアビサウの国土面積3万6125平方㌔は九州にほぼ等しく、人口154万7000人(2011年推計)は京都市よりやや多い。2010年の国内総生産(GDP)総額8億8000万㌦(約700億円)は、日本の小さな自治体の規模に過ぎない。国民の10人に7人は1日2ドル以下で生活している世界最貧国の一つだ。

元々はポルトガルの植民地であり、解放闘争の末に1973年独立を宣言した。独立後の歴史は複雑だが、ひと言で言えばクーデターの繰り返しである。この国では1994年に初の複数政党制による大統領選が実施されて以降、任期満了した大統領がいない。

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執筆者プロフィール
白戸圭一(しらとけいいち) 立命館大学国際関係学部教授。1970年生れ。立命館大学大学院国際関係研究科修士課程修了。毎日新聞社の外信部、政治部、ヨハネスブルク支局、北米総局(ワシントン)などで勤務した後、三井物産戦略研究所を経て2018年4月より現職。著書に『ルポ 資源大陸アフリカ』(東洋経済新報社、日本ジャーナリスト会議賞受賞)、『日本人のためのアフリカ入門』(ちくま新書)、『ボコ・ハラム イスラーム国を超えた「史上最悪」のテロ組織』(新潮社)など。京都大学アフリカ地域研究資料センター特任教授、三井物産戦略研究所客員研究員を兼任。
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