トランプ大統領「各種ディール」の成果と火種

Foresight World Watcher's 8 Tips

執筆者:フォーサイト編集部 2025年5月18日
エリア: アジア 中東 北米
トランプ政権の対シリア制裁解除をイスラエルは歓迎しない[シリアのシャラア暫定大統領(左)を歓迎するサウジのムハンマド皇太子(右)。奥はトランプ米大統領=2025年5月14日、サウジアラビア・リヤド](C)AFP=時事/ SAUDI ROYAL PALACE / BANDAR AL-JALOUD

 大方の予想に反する大胆な内容となった米中関税引き下げ合意のみならず、米トランプ政権のディール矢継ぎ早に繰り出されています。シリアに対する制裁解除はアメリカの中東政策の大きな転換点になり得ますし、関税協議の傍らで繰り出されたAI(人工知能)向け半導体輸出規制の強化(バイデン政権が打ち出した規制を根本的に転換させています)はファーウェイ、エヌビディアといったAIチップの有力企業の業績を大きく左右するでしょぅ。

 “取引上手”を自任するトランプ大統領の面目躍如というところですが、実際のところそのディールはどう評価されているのでしょうか。今回の本欄はこの問題に注目します。

 中間選挙を経てマルコス家とドゥテルテ家という二つの“王朝”が争う構図が一層鮮明化したフィリピン政治も加えて、フォーサイト編集部が熟読したい海外メディア記事8本。よろしければご一緒に。

Is Donald Trump a good dealmaker?【Economist/5月14日付】

「5月6日、彼はフーシ派と協定を結んだ。5月10日にはインドとパキスタンの停戦での手柄を主張した。その翌日、彼の特使はイラン高官と会談し、核取引の可能性について話し合った。12日、アメリカと中国は貿易休戦を宣言した。トランプ氏は現在[5月14日時点]、湾岸諸国を訪問中で、シリアへの制裁を解除すると述べ、同国の指導者であるアフメド・アル・シャラアと会談し、25年ぶりに関係を回復させた。ガザも議題だ。彼はロシアとウクライナが今週イスタンブールで会談するよう働きかけた」
「ボスポラス海峡からブラマプトラ川まで、トランプ氏の衝動は、凝り固まった正統派と見されるものを揺さぶることに向けられている。彼は武力を行使し、1000人のフーシ派のいる標的を空爆した。イランを攻撃し、ウクライナを売り渡し、NATO[北大西洋条約機構]をさらに弱体化させるかもしれないとほのめかす。アメリカが仲介していた紛争を放置し、エスカレートさせることもある。彼はイスラエルに再びガザを破壊させ、インドとパキスタンの争いを5月10日にパキスタンが核兵器の使用をほのめかすまで放置した。中国に対する145%の関税は、貿易ショック、株価の下落、ドルの短期暴落を引き起こした」

 中国との“関税戦争”の一時休戦や中東歴訪、印パの仲介やウクライナとロシアの停戦交渉への関与など、矢継ぎ早かつ全方位で外交を繰り広げ続けているトランプ政権。英「エコノミスト」誌は「ドナルド・トランプは取引上手か?」(5月14日付」で、トランプ外交に次のような評価を下した。

カテゴリ: 政治 経済・ビジネス
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