
韓国次期大統領の最有力候補となっている共に民主党(以下、民主党)の李在明前代表は、はたして「反日」なのか否か。本人と民主党は最近、過去の言動から持たれている「反日イメージ」を打ち消すことに一生懸命だ。ただ民主党所属の文在寅(ムン・ジェイン)政権期に「最悪」とまで評された日韓関係の記憶が残る日本側では、「文氏の再来になるのでは」という疑念が根強い。実際のところ、どうなのだろうか。
保守与党は四分五裂で選挙戦に突入
まずは選挙の展望について簡単に見ておこう。大統領選は6月3日に投開票される。通常なら、新大統領の就任まで2カ月ほどの準備期間がある。だが尹錫悦(ユン・ソンニョル)前大統領の罷免によって大統領不在となっている今回は、4日未明とみられる開票終了と同時に任期が始まる。同日午前に就任式が開かれて政権発足だ。
李氏にはさまざまな疑惑が持たれており、5件の刑事裁判で被告となっている。罰金100万ウォン(約10万円)以上の刑が確定すれば被選挙権を失う公選法違反事件では、無罪とした高裁判決を破棄差し戻しとする大法院(最高裁)の判決が5月1日に出てもいる。ただ、やり直し裁判が大統領選までに確定する可能性は当初からほぼゼロと見られていた。大法院長の弾劾訴追をちらつかせて司法を圧迫するかのような民主党の姿勢は批判されているものの、選挙結果を左右することにはならなそうだ。
昨春の総選挙で党内非主流派を強引にパージしたり、スキャンダルまみれだったりする李氏には嫌悪感を抱く人が少なくない。前回執筆した『韓国大統領選、保守派与党を悩ます「極右」からの抗い難い誘惑』(4月24日付)で指摘したように、極貧層出身であることも影響しているように思える。
だが与党・国民の力は、候補を金文洙(キム・ムンス)前雇用労働相に決める過程で四分五裂の様相を見せ、まともな選挙戦をできるか危ぶまれるような状況に陥っている。穏健派の同党議員に「いくらなんでもひどくないか」と問うと、「おっしゃる通り」という力ない言葉が帰ってきた。逆に、民主党の国会議員は筆者に「大統領選敗北を前提に党内の主導権争いをしているようだ。保守派政党の再起は当分の間、難しいだろう」と語り、敵失を前に余裕の表情を見せた。日本としては、李氏の当選を既定の事実として対応を考えるべきだろう。
民主党、日本向けに「安心して」とアピール
民主党は最近、日本へのアプローチに積極的だ。所属国会議員を東京に派遣して自民、立憲民主両党や日韓議員連盟の幹部に接触し、日本メディアの取材にも積極的に応じている。眼目は「李在明政権になっても対日政策の基調を変えるつもりはない。安心してほしい」ということだ。少なくとも日本側に疑念を持たれていると自覚し、そのままでは政権運営の負担になると考えていることがうかがえる。

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