2026年始動、経産省が進める「商品情報プラットフォーム」が拓く可能性

執筆者:白鳥和生 2025年5月19日
流通の長年の課題である「商品情報バラバラ問題」の解決に動き出した経済産業省 (C)時事
メーカー・卸・小売の間で長年の課題であった「商品情報のバラバラ問題」を解決するために、経済産業省主導で大規模なデータ標準化プロジェクトが動き出した。情報の標準化はヒューマンエラーの減少や発注精度の向上などメリットがある一方で、メーカーの直販が進み、情報による差別化戦略をとり生き残ってきた卸や小売企業に淘汰圧がかかる可能性がある。

「バーコードが読み取れませんね」――スーパーマーケットのレジで店員からそう言われ、手入力で対応された経験を持つ人はいないだろうか。ネット通販でも「検索しても商品が出てこない」「情報が足りなくて購入をためらう」といった場面は日常的に起きている。これら一見些細な出来事の裏には、日本の流通業界が長年抱えてきた構造的な課題がある。それが「商品情報のバラバラ問題」だ。

メーカー、卸、小売ごとにバラバラの商品情報

 食品や日用品など、流通の最前線を支える商品情報。その登録・管理方法が、いまだにメーカー、卸、小売ごとにバラバラである。JANコード(バーコードに含まれる商品識別番号)や商品名、原材料、容量、サイズ、賞味期限、アレルゲン情報など、多岐にわたる情報を各社が独自のフォーマットで扱っており、情報の受け渡しのたびに変換・修正が発生している。

 たとえばメーカーが新商品を出すとき、JANコードを取得し、商品情報を卸や小売に提供する。しかしそのデータは、多くの小売システムにそのままでは登録できない。卸は内容を再編集・再フォーマット化し、小売ごとに個別対応する。こうした煩雑なプロセスが、発注ミスや登録漏れ、物流の混乱を生んでいる。

 ある大手卸の担当者は言う。

「商品情報の大半は、人手で修正しています。メーカーから届く情報が不十分か、表記が合わず、小売ごとにシステム上で情報を変換しなければならないのです」

 この「バラバラな商品情報」がもたらす非効率こそ、日本の流通業の足を引っ張る大きな要因となっている。

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カテゴリ: 経済・ビジネス
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執筆者プロフィール
白鳥和生(しろとりかずお) 1967年、長野県生まれ。明治学院大学国際学部を卒業後、日本経済新聞社に入社。小売、卸、外食、食品業界などを長く担当する。2024年より流通科学大学商学部経営学科教授。著書に、『即! ビジネスで使える新聞記者式伝わる文章術』(CCCメディアハウス)、『不況に強いビジネスは北海道の「小売」に学べ』、『グミがわかればヒットの法則がわかる』(ともにプレジデント社)など多数。
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