9月3日は「グミの日」 いまや国民的お菓子のマーケティングは「当事者意識」「共感ストーリー」「勝手連」で衰え知らず

執筆者:白鳥和生 2024年8月30日
「当事者意識」の醸成が、マーケティングのカギになる (C)Ho Su A Bi/shutterstock.com
グミの人気が続いている。2023年の市場規模は972億円と、5年前の1.6倍に拡大した(インテージ調べ)。コロナ禍真っただ中の2021年にガムの市場規模を抜き、今やグミは国民的なお菓子に位置付けられる。その成長は従来のマーケティングの成功とは中身が違う。キーワードは、自分にフィットする商品・ブランドを応援したいというファンの「当事者意識」「共感ストーリー」「勝手連」だ。

「フェットチーネのシャリシャリ感が好き」「毎日食べてます。きょうはバッグにコロロが入っています」――筆者は2024年4月に『グミがわかればヒットの法則がわかる』(プレジデント社)を上梓した。取材・執筆時期に会った人にグミの話をすると、グミが嫌いだと言った人は皆無。老若男女問わずにグミを食べた経験があり、好きなブランド名を挙げてきたことには驚きだった。

団塊ジュニアからその子どもへ、子どもから祖父母へと支持が連鎖

 グミはドイツ生まれ。1922年に菓子職人のハンス・リーゲルがクマの形をした「ハリボー」を発売した。それが世界的に広がり、日本のメーカーでは1980年に明治(当時の明治製菓)が「コーラアップ」を初めて商品化。

 その後、「果汁グミ」(明治)、「シゲキックス」(UHA味覚糖)といったロングセラーに育っている商品が1990年前後に登場し、グミ市場が確立されていった。

 もちろん当初グミは子供のものだった。だが、ターゲットだった団塊ジュニア(団塊世代の子供、1971年~1974年生まれの世代)が年齢を重ねても食べ続けた。

 子育て期に入ると、団塊ジュニアはチョコレートやガムを横に置いて、子どもに与えやすい菓子としてグミを選んだ。果汁感やコラーゲンをイメージする健康感、リビングを汚さない、といったグミが持つ特性が支持された。

 孫が好きで食べているお菓子に祖父母も注目して買い与える。時に「おじいちゃん、おばあちゃんにもちょうだい」といって口にすると、予想以上においしい。そんな理由が、子どもから大人まで世代がつながる菓子になった。少子高齢化に伴う人口減少社会にあって消費市場は縮小気味だが、グミは逆に市場を拡大してきた。

 供給側にも目を向けると、グミ市場は明治、カンロ、UHA味覚糖、ブルボン、春日井製菓、カバヤ食品などメーカーが多い。コンビニエンスストアなど小売りの店頭でグミの売り場を拡大する中、各社が競い合って新商品が毎週のように発売される。

 一方でガム市場はロッテがガリバーで成熟化が激しい。これに比べると、グミ市場は常に新しい話題が提供され、消費者にとって次はどんな商品が出るのかと期待感が大きい。だからSNSに投稿する格好のネタになる。

この記事だけをYahoo!ニュースで読む>>
カテゴリ: 経済・ビジネス
フォーサイト最新記事のお知らせを受け取れます。
執筆者プロフィール
白鳥和生(しろとりかずお) 1967年、長野県生まれ。明治学院大学国際学部を卒業後、日本経済新聞社に入社。小売、卸、外食、食品業界などを長く担当する。2024年より流通科学大学商学部経営学科教授。著書に、『即! ビジネスで使える新聞記者式伝わる文章術』(CCCメディアハウス)、『不況に強いビジネスは北海道の「小売」に学べ』、『グミがわかればヒットの法則がわかる』(ともにプレジデント社)など多数。
  • 24時間
  • 1週間
  • f
back to top